■旅日誌
[2013/11] 郷愁の青~リバイバル鳥海に乗る
(記:2014/2/16 改:2021/12/26)
(記:2014/2/16 改:2021/12/26)
かつて東北地方で活躍していた列車がリバイバル運転されることになり乗車してみることにしました。この列車に対し特に強い思い入れがあったというわけではありませんでしたが、残りわずかとなってしまったブルートレインに乗る機会ももうないかもしれない…という気持ちもはたらき、団体臨時列車として運転されるリバイバル鳥海号で秋田を目指します。
※下線部をクリックすると写真が表示されます
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1日目
寝台特急あけぼのが来年の3月に廃止されるという報道があった。時の流れ…と言ってしまえばそれまでだが、定期運行されるごく日常の夜行列車がまたひとつ姿を消す。そして上野駅を発着するブルーの客車は北斗星だけとなり、それも新幹線が青函トンネルを通るようになればどうなるか分からない。それどころか、別格扱いだったはずのトワイライトエクスプレスやカシオペアといった豪華列車もどうやら例外ではないらしい。なんともやるせない…。あけぼのについて言えば、とりあえず臨時列車として多客期には運行されるとのことだが、過去の事例からも1年くらいで全廃になることは間違えない。どうにか最後に1回くらい乗っておきたい気持ちはあったが、これから4月まで尋常じゃなく忙しくなるので、それもかないそうにない。
そんな折、秋田DCの一環として鳥海号が24系客車を使ってリバイバル運転されると分かり、こいつに乗れないか調べてみた。どうやらツアー用の臨時列車扱いで、何社かあるうちから秋田でリゾートしらかみに乗り継ぐコースに申し込んでみた。日程的にも金曜の夜に出発して土曜のうちに帰ってこれるので、これならどうにかなりそうだ。さらに運がいいことに、出発日の金曜は振替え休日になっている。こんなチャンス、絶対に逃してはいけない!!
昼間は少しフリーな時間をつくるつもりだったが、結局仕事であたふたしてしまった。上野到着はギリギリセーフ、13番線ホームに直行してみると、ちょうど列車が入ってくるところだった。まぁ、間に合っただけいいと思わなければ…。今回運転されるリバイバル鳥海号は、6両編成という短い編成のためホーム前寄りに停車している。カン無しのEF64が先頭に立ち、金帯の客車のサボは「団体」を表示、どこか派手さに欠けていたが、唯一テールの鳥海の絵幕だけは際立っていた。これから夕方のラッシュが始まる時間ということもあって、列車はすぐに出発することになる。
指定された号車で、点呼替わりにこの先の行程について説明があった。列車は青森まで運転されるのだが、途中、大館で降りて小坂鉄道レールパークを見学するコースや鷹ノ巣から秋田縦貫線をまわるコースなども設定されている。確かに面白そうだったが、どちらも何ヶ月か前に近くを通っていたので、今日はそちらは避けてみた。相対的に人気がなかったか、こちらのコースの参加者は10名ほど、1両貸切状態でどこを使ってもいいとのこと。ゴンロとシートの設定のためリネン類はないが、ワンボックス占有して久々の客車寝台の旅気分に浸る。電車とは違う緩やかな加減速、時折ガクンガクンと来る衝撃、ハイケンスのセレナーデのメロディー、遠く微かに聞こえる機関車のホイッスル、心地よいジョイント音、闇夜の中を通り過ぎて行く踏切音、足元からじわっとくる暖房、、、すっかり忘れてた夜汽車の雰囲気がいまここにある。そうそうこいつを忘れちゃいけない。買っておいた弁当をおもむろに開き、日々の煩わしさとは無縁の極上空間で、誰にも邪魔されずボーっと過ごす。うまく説明できないが、この上なく贅沢に思えた。
2日目
このまま寝てしまうのも惜しいかも…なんて考えてたのも束の間、しっかり寝込んでしまい、気がつけば外は白々としていた。ささっと身支度を済ませ秋田駅で列車を降りる。ここでしばらく停車するので写真を撮る時間を設けてもらい、向かいのホーム行ったりしながらあらためて列車の姿を眺める。途中で交代したカマには鳥海のHMが付いていた。どこか凛々しい佇まいもあとわずかで見られなくなってしまうなんて信じがたいが、貴重な機会にはなっただろうか?集合場所に戻り列車を見送って、これで一旦秋田駅を離れる。
今回参加したツアーでは秋田駅近くの温泉に立ち寄り、朝食と朝風呂の時間が組み込まれていた。駅前で待ち構えていた温泉施設のバスに乗り込み20分ほど移動、後で調べてみたら、それなりに人気のあるところのようだった。朝食のバイキングには地のものも多くあり、移動中に駅弁で済ませる食事とも違ってなかなかよい。そのあと続いて入った温泉もとろっとした肌触りで、一晩列車で過ごした体に染みわたり、朝からなんとも贅沢!贅沢!!、心身ともにすっかり癒され、再び温泉施設のバスで秋田駅まで送ってもらいツアーコースに戻る。列車の切符を受取り、次は車内での集合となるため一旦解散となった。
半年前にスーパーこまちで来たときは、こんなすぐに次があるとは思っていなかった。ゆるきゃらさんたちが寂しそうにしてたので写真を撮ってあげて、駅構内へ向かう。ホームで待ち構えていたのはリゾートしらかみ3号・青池編成、ハイブリッド車両に乗り込む。(蛇足:五能線に乗るのはこれで3度目になります。以前に乗ったときの旅日誌はこちらとこちらをご覧ください。)列車は定刻に秋田駅を出発、東能代で進行方向を変え五能線へ入っていく。次の能代駅で秋田方面へ向かうリゾートしらかみと交換する時間を使って、名物のフリースローイベントが行われる。このツアーの参加者には、すべて海側になるように座席が配慮されており、やがて車窓には日本海が視界に入ってくる。
お昼に配られたお弁当を食べてると白神山地は進行方向後ろの方に見えていた。車窓は晩秋の日本海、言うまでもなく五能線は見どころの多い路線でビューポイントでの徐行も行われる。波打ち際の砂浜、鄙びた漁村、時折現れる奇岩の姿は見てて飽きることはない。リゾートしらかみ3号は千畳敷駅で15分停車するダイヤが組まれており、列車を離れて見学できるようになっていた。わずかな時間ではあるが、海岸まで行ってみることにする。発車3分前に出発を知らせる警笛が鳴らされ、やがて列車は千畳敷駅を後にする。
その後、海岸沿いを離れると車内ではイベントが行われ、津軽三味線の生演奏と「津軽かたりべの会」の方々の津軽弁昔語りを聴く。気がつくと車窓には岩木山が見えてきて、雲の合間からは日の光が差し込みどこか幻想的で何とも印象的だった。五所川原駅でリゾートしらかみ・くまげら編成と交換すると、やがて五能線の終点、川辺駅へと到着する。長いようで短かった時間もこれでおしまい、ひと駅先の弘前で列車を降りることとなった。