■旅日誌
[2009/12] ふるさとゴロンと~最後のあけぼの
(記:2010/1/17 改:2015/11/1)
(記:2010/1/17 改:2015/11/1)
今年最後の遠出ということで青森を往復しています。年末も押し迫った時期に、車中2連泊の0泊3日の強行スケジュールでしたが、往路にふるさとゴロンと、復路ではあけぼのを利用しました。別に帰省のためというわけでもなく、ただ行って、帰ってになってしまいましたが、青森では浅虫温泉まで足を延ばしています。
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1日目
そういえば、青森へは三沢の航空祭のときに行ったばっかりだったが、今回は汽車旅に徹しようと決めていた。具体的には、毎年、正月帰省のために設定されているふるさとゴロンと号に乗ってみようとしている。いつの頃からか、この列車に乗ってみることができないか漠然と考えていたのだが、なかなかそのチャンスがなく、初めて乗車する機会がめぐってきた。実は去年の年末にもふるさとゴロンとの予約を取るか迷っていた時期があり、虫の知らせか、その後風邪を引いてしまい、結果的に計画はしないで正解だったが、そんなわけで1年越しということになる。その前にも荒天で運転が取りやめになった年があったりと、意外とハードルが高い列車だという印象が強かった。
ふるさとゴロンと号は、今年も例年通り、年末には下り列車として上野から青森へ向かい、年明けに上り列車として青森から上野へやってくる。上越線で日本海側へ抜けて羽越線から奥羽線を通って北上するルートはちょうどあけぼのと同じ経路になるのだが、今回はそのあけぼのでとんぼ返りすることにしていた。ふるさとゴロンと号は、その名の通り全席ゴロンとシートとして設定されているため、寝台料金は不要で比較的安価に利用することができる。この列車には、秋田所属の583系があてがわれ、全区間に渡って寝台がセットされた状態で利用する。毛布や枕、浴衣類の提供は省かれているいるものの、仕切られた空間で横になれるので夜行バスよりも楽だと思う。この583系というと、今年の夏には急行きたぐにに、去年は臨時急行のあおもりに乗ったことが記憶に新しいところだが、今日利用する編成は、懐かしい国鉄時代のオリジナル塗装を身に纏い、夜行列車と呼ぶに相応しい。歌の歌詞にもなった583(ゴッパーサン)が団臨以外で営業するのは限られたことなので、ふるさとゴロンとに乗ること自体、貴重な機会だともいえる。そんなわけで、本当に帰省する方には申し訳ないのだが、1年の締めくくりに夜汽車の旅を楽しむことにした。(後日談:もうひとつ仙台のオリジナル塗装の583系に乗ったときの旅日誌はこちら)
とりあえず、旅をしながら越年するつもりはないので、青森に着いたらあまり長居をせずに、その日のうちに戻ってくることにしている。車中2連泊の0泊3日というのは、過去にあまり記憶がない。天気予報によると、大晦日から年明けにかけて日本海側は大荒れになるようなので、足止めをくらう前に帰ってきてしまいたい。さて、出発の日はもう仕事納めの後で、年明けに向けてとりあえず身の回りの片付けくらいはやってつけてから上野へと向かうことにした。ふるさとゴロンとの出発は21時少し前、今日くらいは少し余裕を持って列車を待つことにした。こんどのダイヤ改正で北陸号の臨時格下げと、能登号の廃止が決まり、ますます夜行列車が減ることになり悲しい限りだが、今日もここ上野駅にも、この列車目当てに多くのギャラリーが押しかけていた。そんな騒がしい中、ふるさとゴロンと号が上野駅13番ホームへやってきた。
ふるさとゴロンとは定刻で上野駅を出発、一路、青森を目指す。今回は運よく下段が取れたので大きな窓が占有できる。とはいえ、ほとんど暗闇の中の走行なのだが…。それでも、うすぼんやり見える車窓を随分長い間眺めていた。そうか、、、どこか見覚えがあると思ったら、先日、ときで通ったばかりじゃないか、、、列車は快調に走り続け、高崎、前橋と上州路を進んで行くと、やがて関東平野に別れを告げる。ダイヤの隙間をぬって走っていたのであまりスピードは出ていなかったが、ここからは上り坂とカーブがきつくなる。景色のいいところなので昼間なら大いに車窓を楽しめたところだけど…。水上で運転停車したあたりから雪が見えはじめ、長いトンネルを抜けた先は一面銀世界だった。2週間前とはまるで季節が違っている。夜中にしてはどうも外が明るいなと思ったら、空のてっぺんでお月様が煌々と輝いていた。冬の時期にしては珍しく、風もない穏やかな月夜の晩だ。見るからに気温も低くなってきており、架線に凍りついた氷はパンタグラフの摩擦で火花となり、バチバチと大きな音を立てていた。静まり返った原野を照らす青白い光りは、なんとも幻想的な光景だった。こんな楽しみも夜汽車ならではだな…。列車の暖房は暑くてたまらないと、どこかで聞いたような気がするが、寝台に敷かれたマット1枚だけは少々寒さかった。でもまぁ、何ともこの狭っ苦しさもなれれば居心地のいいものだ。
2~3日目
明けて翌日も列車は定刻で走っていた。気がつけば外は雪が舞っていて、とても寒々としている。途中、長時間停車する駅は数えるほどしかないため、ほとんど車内で過ごしていたが、それでも外へ出てみるとかなり冷え込んでいることに気がつく。正面のふるさとゴロンとの幕もいつしか雪で見えなくなってきている。秋田を越えたあたりから雪の降り方も強くなっていたが、幸いにも列車は遅れることなく走り続けていた。終点のすぐ手前、新青森を通り掛ると、新幹線延伸を間近に控え随分と様子が変わっているのが分かった。無事に列車はそのまま定刻で青森駅に到着、13時間弱の長旅も終わってしまえばあっという間だった。
前述の通り、今回は宿泊もしないで夜行でそのまま帰京することに決めてある。なので、一応、昼間はフリーということにしてあったが、それでも時間には限りがある。当初、酸ヶ湯温泉にでも…と考えたのだが、バスの時刻を調べてみたところ往復するメドが立たないのでそれは断念、その代わりに青森駅から比較的近くにある浅虫温泉へ行くことにした。ここも名の通った温泉場なので、温泉旅館なども多く、日帰り入浴できる場所もいくつかあるようだ。とりあえず今回は気軽に済ませようと思い、浅虫温泉駅のすぐ隣にある道の駅ゆ~さ浅虫>へ立ち寄ってみることにする。ここには道の駅と一体的に運営されてる展望風呂があり、交通の便も至極良好で、真っ先に思いついたところだった。青森駅からは、さほど待たずに東北線の普通列車に乗り継ぎ、20分ほどで浅虫温泉駅へやってくることができた。雪が舞う中、午前中の早い時間から浸かる温泉は、いうまでもなく気持ちのいいもので、まさに生き返った思いだった。(笑)中途半端な時間のようにも思えたが、意外と入れ替わりもあり、結構多くの人が利用されている。ちなみに入浴料は350円とお手軽なのもちょっと嬉しい。タオルや石鹸、シャンプー類もその場で購入することができるので、通りすがりの利用でも十分OKだと思う。
さて、浅虫温泉に来たのにはもうひとつの理由がある。道の駅から程近い場所にあるとある食堂へ行って名物メニューを試そうと考えていた。ここも有名なので、知ってる人も多いと思うが、鶴亀屋食堂というとんでもない大盛メニューを出してくれるお店である。実は、道の駅には以前立ち寄ったことがあったのだが、そのときはこの食堂がこんな近くにあったことには気が付かず素通りしてしまったので、ちょっと狙っての訪問だった。とりあえず名物のマグロ丼を注文してみたところ、出てきたどんぶりはうわさに違わぬ圧倒的な量だ。朝食も簡単に済ませていたし、ゆっくり温泉に浸かった後でもあり、時間的にもちょうどお昼と、バカ食いするには好条件だったが、いやぁ、すごいのなんのって…。(爆)乱暴にぶつ切りされたマグロがこれでもかとのっていて、、、というか聳え立っており、箸をつける際には、まずは小皿へ分けてから…ということなのだが、大き目の切り身は20個はあっただろうか?怖くて数えられなかったが、いい加減食べつくしたところで、ご飯が顔を出してきた。それでもマグロはまだ有り余っていて、感覚的には1年分のマグロを年末1日で食べ尽くしたような気がする。それにしても、これで減量してるというのだから、元はどんなだったのだろう??ちょっと前は価格も1000円を切ってたようだが、いまの1500円というのでも、全然惜しくはない。ミニ丼の1000円でも十分満足いくようだし、マグロだけでは飽きてしまうだろう…ということからか、スペシャル丼なるメニューもあり、マグロ以外にサーモンやタコ、エビがふんだんにのっていて、そちらもやはり聳え立っていた。後からやってきた人も何も知らずに、注文していたが、実物が目の前に運ばれてきたとたんに大うけしていた。(そりゃそうだ…)他にも焼きそばやイカ天などのメニューもすごい量のようだった。(後日談:で、勝敗(?)の方ですが、もちろん完食しました。途中から苦しくなってきたのはいうまでもありませんが、某大食いタレントさんなんかは本当にすごいな…などとわけの分からんことも考えていました。最後に、この日の夜は全く空腹を感じることなく、軽くつまみと地ビールだけをあけぼのへ持ち込んだことを書き加えておきます。)
苦しいほど(?)満足したあとは、特に予定は何も考えていなかった。とにかく、そんな満腹状態では頭も回りそうにない。気がつけば雪も上がり、薄日が差し込んでいる。視界もぱっと開けてきており、目の前の海や遠くの山々がくっきりと見通せるようになっていた。先程、食堂で見た天気予報でも今夜からの荒天を再三警告しており、さしずめ嵐の前の静けさといったところだろうか?再び浅虫温泉駅から普通列車で青森駅まで戻ることにした。天気が急変して戻ってこれなくても困るので、下手に動くようなことはせず適当にその辺で時間をつぶすことにしよう。これ以上何か食べるというのも無理な相談だし、土産ものを物色したり、街中のお店などをウロウロしてみるくらいが関の山かな?結局、食後にちょっと運動した後、青森駅近くにある某ホテルに向かい、フリースポットにもなってる喫茶店でしばらくお茶しながらPCを叩いて時間を過ごすことになった。変なネットカフェなんかよりよっぽど居心地もいいし、コーヒーのお替りなど気を遣ってもらったり、ちょっと得した気分だった。温泉の効果なのか、アルコール摂取はゼロなのに、ほのかに体中が火照った感じがしてたのは気のせいだろうか?
行きのゴロンと…で費用を抑えた分と、ふるさと行きの切符=往復1万円を考慮して、帰りのあけぼのはシングルDXを奮発!実はこいつを利用するのは2度目だが、1度体験すると止められない。(追記:1度目に乗ったときの旅日誌はこちらをご覧ください。)北陸や能登の廃止が取りざたされてる中、ひょっとしたらあけぼのに乗るのもこれが最後かもしれない(縁起でもない?)なんてことが頭を過ぎる。まぁ、そんなことを考えても何の役にも立たないのだが…。(後日談:その北陸と能の廃止直前にお別れをいう機会がありました。そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。)日も暮れてライトアップされたベイブリッジが映えるようになった頃、DEに引っ張られてあけぼのが入線してきた。あらためて列車の正面にまわり、ライトを点した赤い機関車みると、、、うん、こいつもなかなか絵になっていい。
早速、あけぼのに乗り込み、出発の時を待つ。定刻から2、3分過ぎたところで列車は青森駅を出発した。久々に聞くハイケンスのセレナーデの音色と、時折くるガクンという衝撃で客車に乗っていることをあらためて実感する。昼間、青森にいるうちは雪のち晴れとまぁまぁの天気だったが、途中、羽越線の秋田付近で雷雨&強風のため速度規制がかかってしまった。雪ではないのがかえって不気味だったが、しばらくノロノロ運転が続き70分近く遅れが出ていたようにも思う。それでも上野駅に到着する頃には遅れも30分まで回復していた。予報通り冬型の気圧配置が強まり日本海側は嵐になってたみたいで、その分関東平野の天気はよかったようにも思う。(後日談:ちなみにこの日の夜に出発する夜行は、大雪と強風が見込まれたため、軒並み午前中の早い時間に運休が決定、毎度ながら運も味方してくれたようでした。)滞在時間も短く、ピンポイントで青森往復だけというのももったいない気がしたが、どこか緊張感から開放されたようなホッとした時間が持てたのはとてもよかった。こんな旅も十分ありかな?と感じる年の瀬になった。(後日談:そんなあけぼのですが、残念ながら2015年1月をもって運行が終了しました。)