■旅日誌
[2003/9] 豪華北斗星の旅…一転台風の悪夢再び
(記:2003/9/16 改:2021/7/25)
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今年の夏休みのお出掛けは、台風のせいですっかり狂ってしまったのは前に書いたとおりです。運を天にまかせて…というのは少々大げさですが、いつも当り前のようにスケジュールをこなしてこれてきたのでとても不満に残るものになってしまいました。不満解消のためには無駄遣いがよかろう!という取ってつけたような理由で贅沢な旅を決行することにしました。ところで、何ヶ月か前に残念なニュースが飛び込んできてちょっとそわそわしてました。ちほく高原鉄道・ふるさと銀河線の廃止の検討に入ったらしいとのことです。一説によると(?)どこで乗りつぶしを完成させるか?というのは、乗りつぶしを志す人の最後の悩みどころとも言われてるそうですが、実はここを締めくくりにしようと心の中で何となく決めていました。ですが、ボヤボヤしていると廃止されてしまうかもしれないので、JR最後の未乗路線である日高本線との抱き合わせ計画を前倒しすることにしました。ところが、日高本線がまさにこの間の台風の影響で不通のままであることに気がつきました。それも甚大な被害を受けてしまい、完全復旧には何ヶ月もかかるとか、、、う~ん、何とも恨み切れません。
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 プロローグ
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
女満別空港、ちほく高原鉄道、幸福駅跡、北斗星
それは高知からの帰りの飛行機の中で突然思いつたことであった。どうも消化不良気味であまりいい気がしない。そんな状態でふとちほく高原鉄道の廃止ばなしのことを考えていた。1泊2日で日高本線まで回れる"筋"がありそうだということは既に目論んでいたが、来月は3連休がある。3日間あれば気持ち余裕を持つことができる。待てよ、3日あって往復飛行機ってのも味気ないな、、、伸長された新幹線はやてで帰って来るのもありか?そうだ!もう1日あるなら北斗星に乗ってみようじゃないか!!ならば、この中途半端な気分を晴らすために、いっそのことロイヤルってのはどうだ!!!明日は8/14、1ヶ月後の9/14は3連休の中日に当たってる。まだ明日も夏休みだし、窓口へ行って10時にマルス叩いてもらうこともできなくはないか!?所詮、思いつきのダメ元だし、、、(笑)
北斗星
そうと決まれば(?)即行動に移すこととした。まずは自宅からそう遠くもない小さな駅にメボシをつけ、相談に乗ってもらうところから始める。小さな駅だからといって大きな行列を作ってしまっては迷惑千番なのでどんなものかと考えてしまったが、まぁその辺は割り切って9時半頃に訪ねてみた。運良くとても親切そうな方に対応していただき、全面協力を取りつけることができた。以前はスイートもロイヤルプラチナチケットとまで言われてた時期があったが、今はどの程度の競争率なのだろう?その道のツワモノ(?)はもちろん、実は個人客にとって旅行会社などが一番強力なライバルだと聞いたこともあるがまったく想像がつかない。下りより上りの方が取りやすいだとか、東日本の編成=上りだと4号の方が取りやすいとか、通説のようなものも聞いたことがあるが、連休中ということもあり悩む要素は多々あった。とにかく考え込んでいても仕方ない。
幸福駅
あらためて10時ちょっと前に窓口に来てクレジットカードを渡す。「じゃ、いくね…」と言いながらマルスをスタンバイし、一通り確認してから117にTELをかけた。いつの間にか、奥にいたもう一人の駅員もやってきて興味深そうに横から覗き込んでいる。10時の時報とほぼ同時にエンターキーを叩くと、5秒くらいしてからだろうか、カッツン、カッツンというあのカッターの小気味よい音とともにチケットが発券されてきた。「おぉ、取れたよ!はい、9号車2番ロイヤルですね♪」と窓口氏。退屈気味だったか、実は他に忙しかったか事情は計り知れないが、突然やって来た珍客のわがままに対してご快諾してくださった駅員の方々に感謝感謝である。(余談:10時の時報とほぼ同時だったのに2番とは、、、上には上がいるんですね。)
気をよくして自宅に戻ってきたが、再度ルート確認に入る。本当に1泊2日で大丈夫かとか、行きの飛行機は女満別でいこう!とか、帯広に宿を確保しておけば安心(!)など強行スケジュールのためには準備は怠れない。とはいうものの、変則日程の旅疲れモードだったし、それこそ今日寝坊しては元も子もないので昨晩は早めに就寝してしまっていた。なので何もしないで今日初めて駅の窓口へ行ったというわけである。とりあえずインターネットを使えば用は足りると軽く考えていたら、前日(9/13)の女満別行きの便は軒並み満席を示す×印がついてる。某お宿探しサイトを見れば、この日の帯広地区にはまったく空きがない。当り前だが、他のサイトを見ても状況はまったく変わらない。げげげ、最大の難関を突破したはずなのに、これは嫌な雰囲気。さらに追い討ちをかけるように、日高本線が台風被害のため不通でどうにもならないことにようやく気がついた。「うわぁ、最悪!」思わず叫んでしまいそうになったが、ここからが腕の見せどころでしょ!と自分に言い聞かせる。といっても日高本線の被害状況は尋常ではなく、橋が流されたとか、路盤ごと持ってかれたとか、致命的なところ以外にもダメージを受けた箇所が90数ヶ所にも上るとか。(驚) 過去にも同じようなことがあったらしいが、復旧には数ヶ月を要することは避けられないとのこと。日高本線は素直に諦め、とりあえず体制の見直しである。14日の北斗星からさかのぼると、初日に渡道してふるさと銀河線に乗っておきたい。それも1日数本しかない中で乗り通せる筋を考えるとやはり午後の便で北見から池田に向かうのがよい。となるとお昼過ぎには北見に着いていなければならない。ちょっと遠いいが旭川に朝一で渡ればなんとか乗り継いで北見に辿りつけそうだ。仕方ない、こっちの便まで埋まってしまうと困るので予約だけでも入れておこう。(弱気?)次はお宿探しである。池田に着く頃は夕闇迫っているはずなので、襟裳まわりの日高線を諦めたとしてもやはり帯広に宿泊するのがよさそうだ。確かに大手メジャーサイトは便利だが、インターネット向けの枠が早めに消化されただけと信じてあとは電話攻撃しかない。もちろん独自にサイトを立ち上げてるホテルチェーン系のサイトもチェックをしてみたが、どこもかしこも満室だった。連休で人が集まったのか何か特別なイベントでもあるのか、この状態で予約を取るのは相当厳しいようだ。(余談:一度同じような場面に遭遇したことがありましたが、そのときは"学会"という予想もしないイベントとぶつかった経験があります。)仕方なく、いわゆる有名どこではないけどあまり怪しくなさそうなところをリストアップし始めた。1時間半程してもう切り上げようとしたところ、最近インターネットで宿泊予約を始めたという宿のサイトに行き着き、何気なく予約状況を見ると9/13の残数が1と表示された。たまたまキャンセルが出たタイミングだったのであろうか、迷わず予約を確定させる。と、すぐに折り返しのThank youメールが送られてきた。よしよし、これで問題ひとつ解決。
飛行機の方も直前になればきっとキャンセルが出るはずだと信じて、キャンセル待ちのキューに入っておいた。時折インターネットで空席状況を確認していたが、なかなか状況は変わらなかった。何日かして、たまたま午前の2便目に残数1が表示されたので、とりあえず保険をかけた旭川の予約からこちらに切り替える。この時間なら、空港から北見までのバスに乗ればちょうど池田行きに乗り継ぐことができる。しかしあまりにもあっけないので、もうしばらくキャンセル待ちを続けることにした。更に何日かしてようやく1便目の空席が出たとの連絡が入った。すかさず予約を済ませ、予備でとっておいた方を解放した。これでちょっとだけ寄り道する時間が確保できる。もしかしたら、、、と淡い期待を抱いていたが日高線はまったく復旧の見込みが伝わってこない。そこまで強運は続かなかった。やっぱりこちらは諦めるしかなさそうだ。(後日談:この旅の約2週間後に2003年十勝沖地震が発生しました。そう思うと、やはり運がよかったのかもしれません。)
 1日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
女満別空港、西女満別、網走、北見、ちほく高原鉄道、池田、帯広
しつこいようだがGWや夏休みを除いて、ここ3年くらいまともに3連休なんてとれた記憶がない。もちろん、何だかんだで仕事をさせられてたわけだが、例のプラチナチケットが入手できたのでこの3連休は絶対に休むぞ!と早々に宣言をしていた。とはいえ、急転直下…というパターンもあるので気は抜けないとハラハラしてたところ、その前々日から前日にかけて徹夜で対応しなければならない仕事が入ってしまった。まぁ、前日から当日にかけてというパターンでなかっただけ運がよかったと思わなければならない。それにしても、また徹夜明けで旅に出ることになるわけか、、、週に1度や2度は徹夜をしているので当り前といえば当り前の話かもしれないが、どうでもいいからこの生活からは抜け出したい。それはそうともうひとつ、もっと不安に感じる材料があった。南の方で台風が発生してしばらく睨みを効かせている。天気予報によると、また週末にかけて北上してくるらしい。しかし、どうしてこんなにタイミングがいいのだろうか?徹夜もしながら、祈る思いで週末を迎えることになってしまった。
女満別空港
前回の台風に比べるとやや西寄りのコースだったので直撃は免れていた。しかし、ある程度北上するとジェット気流に乗って東に流されてくるので予断の許せる状況ではなかった。それから、いわゆる秋雨前線ってやつが北の方に横たわっていたので、好天気は望めそうにない。でも飛行機が飛ばないという程でもなかったし、あとは前へ進むだけである。ところで、徹夜したあくる日より、ひと晩寝て起きた次の日の方がボーっとして辛いことも十分考えられたが、一番心配してた寝坊して寝過ごすというのだけはうまく乗り切ることができた。これなら午前の2便目の方がよかったかもしれない。(笑) ともかくいつのもルートで羽田に出て出発を待つことにした。当然のように朝飯は途中コンビニで買ったものを空港でちゃちゃと済ませることにする。予想通り女満別のようなマイナーな路線はバスで搭乗することになったが、到着ではなく出発でバスに乗ったのは初めてのような気がする。ともかく、乗り込んで見るとやはり満席であった。運良くとれたプラチナチケットを片手に、これまた運良くキャンセル待ちで得た座席につき、宿も運良く確保できていたので、このまま強運で台風に影響を受けずに乗り切れることを祈りつつ渡道することにした。
西女満別駅
台風の影響で揺れるかもしれないとアナウンスがあったが、そんなこともなく約1時間半後には道東の上空へ来ていた。眼下の広大な風景を見るとやはり北海道であることを実感する。左手すぐ下に空港らしき施設が見えたが、そのまま通り過ぎて飛行機は網走湖の真上で180度旋回し、急激に高度を下げた。風向きの関係だろうか、やってきた方向と逆向きからのランディングになる。ここ女満別空港は、元はオホーツク近海の気象観測の拠点として開設されたという。つい何年か前に滑走路の場所を少し移動し、滑走路も十分な長さに延長され中規模のジェット機も余裕をもって離発着できる立派な空港に整備されていた。道東観光の拠点としても需要は高く、現に今回だって連休でキャンセル待ちにもなるのだからそうなのだろう。着地したときの衝撃はまったくなく、今まで経験がしたことのないくらいのソフトランディングだった。
西女満別駅
空港の敷地を出るとずっと先まで田園風景が続く。あらかじめ地図で予習しておいた通りに、ここから徒歩で西女満別駅を目指すことにする。舗装道路のところどころには水溜りも見られたが、ちょうど今は雨は降っていない。それこそ台風直撃だったら既に企画倒れで終わってたろうが、まだ強運は続いているようだ。空港から西女満別駅までは直線距離で1キロ足らずなのだが、道なりにいくと2キロ弱にはなる。普通に歩いて20、30分もすれば到着できる距離ではあるが、目標物も何もないしちょうど林が視界を遮るので到達するが難しいともっぱら噂されているところでもある。駅自体もいわゆる秘境駅の部類に属し1日数本のローカル列車しか停車してくれないので、もちろんそんなところへ徒歩で向かおうなどと考える人はいるはずもなかった。だからこそ、何か引かれるものがあり、今回は朝一の便で寄ってみたくなったわけである。予習の効果もあり、線路の上をまたぐ橋まで迷わず来れた。坂を下り、何も目印がないと言われたはずの道を探すと、なんと「←西女満別駅」という看板がしっかり出ていた。空港近くはだだっ広い畑という印象だったが、もっともっと広い視野で見ると空港の位置する場所は一段高い地形にあり、石北線の線路は防風林のような形で両サイドガードされていた。こんなところにも北海道らしさを感じてしまう。早速に近寄り様子を眺め始めることにする。とても静かなところである、、、と思ったら意外とそうでもなく、先程の舗装道を行き交う車があり、秘境度120%とまではいかなかった。もっとも、真冬だったりすると全然違うのかもしれないが、それにしても時間の動きを感じさせないなかなか雰囲気のある駅だった。頑丈なつくりの比較的新しい待合室は噂どおりくもの巣でいっぱいだったのであまり居心地のいいものではなかったが、その気になれば駅寝に十分耐えうるものだとは思う。そんな感じでウロウロして、上りの便を1本見送る。そうこうしてる間で意外だったのは、車でやって来て様子を観察する人が多く、1時間もいなかったはずなのに3台も見物の車が現れたことだった。最後にまたか…と思ったら、地元の高校生が家人に送られて来たようで、網走行きの便に一緒に乗り込むことになった。
西女満別駅 西女満別駅
1本前の上りに乗って北見へ出ると、池田まで到達できる便より前のが捕まえることができるので途中下車も可能だったが、ひとつふたつに絞るのに迷ってしまいとりあえず止めておくことにした。結果的には、西女満別駅にいたときに既に雨が降り出してしまったので、それだけを考えると網走を往復しておくのがよかったようだった。わずか1両のキハは10人程度の客を運んで終着の網走に到着した。今回も素通りの形になってしまうが、前回はとても慌しかったのでそれに比べればゆっくりできたような気がする。とりあえずお昼に何か食べるものを調達し、再び石北線の上りで折り返すことにする。雨はそれほど強くはなかったが、止むような感じでもない。同じ道のりではあるが、網走湖などを眺めながらゆったりとした気分で食事にすることにした。まさに汽車旅という風情である。
ふるさと銀河線
北見に降り立ち次の池田行きまでまだしばらくあるので再び時間待ちとなる。急ぐ旅ではないのでお気楽でいられる。隅々まで見たわけではないが、網走に比べると都会の雰囲気がする。ここから池田まで乗り通す人などまったくいないだろう。駅の待合室も連休だというのに、とても静かだ。(余談:実際にはかなりの人が座ってましたので、もしかしたらこれでも普段よりも人出は多かったのかもしれません。)次の池田行きの発車時刻のわずか前に石北線の特急オホーツクの交換がある。ふるさと銀河線の車両が入ってきてホームに渡ってすぐに上り下りの特急がご対面となった。さていよいよお目当ての車両に乗り込む。北見を出るときでも全ボックス席が埋まらない程なので、やはり経営状況の厳しさをうかがい知ることができる。石北線から左に分かれ見る見るうちに人里離れたところへ分け入っていく。高原という名前がついているが、さほど標高が高いわけではない。しかし人間の生活感のまったく感じ取れないところの連続で山深いところに来てしまった感がある。またそれなりの勾配もあり、非力なエンジンはうなりを上げていた。平均乗降客が3人とか5人とか、あるいはそれ以下だとかいう駅も律儀に停車していく。停車といってもドアが開くわけでもなく一瞬止まって直ぐに出ていく感じだ。置戸で銀河鉄道の絵柄がペイントされた車両と交換し、本当に周囲にまったく人工物を感じさせないところの連続で、いよいよやってきたなという感じだ。いままで写真とかでしか見たことがなかった板張りのホームや、朽ち果ててしまいそうな駅舎など、車内からではあったが目にすることができた。いゃぁ、こんなところにひとりで何時間もいたらどんな気持ちになるのだろう?(笑)
北見駅
陸別、足寄など立ち寄りたいところはあったが、本当に廃止されてしまうのだろか?自分が思っていたのより早く夕闇は迫ってきていた。北海道の緯度の高さをあらためて思う。やはり車窓に見惚れていただけでも時間が過ぎていくのを忘れてしまうようで、あっという間に池田に着いてしまった感じがした。名残惜しいが運転手から精算済み証を受取る。ふと見ると沿線案内になっていたが、乗り終わってしまってから…というのが少々残念かもしれない。(後日談:そのふるさと銀河線ですが、2006年の春に廃止となってしまいました。廃止前に再訪したときの旅日誌はこちらをご覧ください。)それほど待ち時間はなく帯広行きの普通列車に乗り継げるのだが、すっかり雨は本降りの様相であたりももう随分と暗くなっていた。帯広に着き、安易だが豚丼の有名なお店に行ってみることにした。前回も帯広には1泊しているはずなのに、何か印象に残る行動を取ったのかというとまったく覚えていない。予想通りお店の前には行列ができていたが、店の中から出てくる人の姿も見えるので少し待てば席に着けるようだ。霧雨の中カサをさしてしばらく待つことにする。お店の中に入ると20人分ほどの座席しかなく、数個のテーブルに相席ばかりでひしめき合っていた。でもそれが気になるということでもなく、何かお店の雰囲気は悪くない。メニューはシンプルで、ただ松竹梅でランクが分けられている。肉の質が違うのでもなく、ごはんの上にのる肉の枚数によって値段が違うらしい。だが普通と違うのは"梅"が一番上で、その理由はおかみさんの名前が"ウメさん"というらしくそれに敬意を表してのことだという。恐らく厨房も一日中フル稼働だとは思うが、まわりが幸せそうな顔をして食事をしているのを見てしまうと待たされる方もたまらない。(笑) 目のやり場に困りながらしばらく待ち、ようやく自分のところにどんぶりが運ばれてきた。う~ん、このフタからはみ出た感じがたまらない。でもって、早速がっつき始める。うん、うん、うん、なるほど。この焦げ具合というか香ばしさと肉の脂の感触がまたいい。こうして、思いつき北海道の旅の初日は締めとなった。
オホーツク・ふるさと銀河線 ふるさと銀河線
 2日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
幸福駅跡、根室本線・石勝線/スーパーあおぞら、札幌、羊が丘展望台
天気予報によると、台風は北海道西岸の日本海沿いをうろうろしながら北上しているらしい。札幌あたりは夜遅くから明け方にかけて暴風域に入るが、その後天気は回復するといっている。十勝地方は直撃を免れたので朝からすっかり晴れ上がっていた。かつて広尾線が通っていたルートをバスを乗り継いで襟裳岬を経由し、さらに日高線で苫小牧へ出るルートを想定していたのだが、日高線が途中で途絶えてしまっている関係で今回は諦めることにした。スケジュール的にはややタイトなのだが乗りつぶしには都合のいいもので、前々から狙っていたのだが、、、今回は自然災害という不可抗力には勝てなかった。そうなると逆に、時間を持て余してしまう格好になり、根室本線をのんびり北上し富良野を経由してフラノラベンダーエクスプレスを捕まえてみる計画を立てていた。フラノラベンダーエクスプレスには時期によって何種類かの車両が運用にあたっているのだが、今日はニセコライナーの番であるという。富良野出発の時間から逆算してももう少し帯広に滞在できるので、午前中に旧広尾線幸福駅へ行ってみることにした。
幸福駅
たまたま引き当てた宿だったが、つい最近改築され部屋は広く新しく、また朝食もサービスだったのでここでもついてたのかなと思った。普段なら朝の通学の足となるバスも、連休となれば利用する人も少なくまったくのガラガラだった。帯広駅の周囲をぐるっとまわる格好で一周し南下していく。郊外に出ると碁盤の目のように縦横に整備された道が続き、やがて穀倉地帯の風景と変わる。いかにも北海道らしい光景だ。「××何号」といったようなバス停を律儀にカウントアップしていき、乗り降りするでもなくただ通過していく。途中で愛国駅跡の近くへ立ち寄り、再び一本道を南下していく。あと1便バスに余裕があれば愛国で降りてもよかったのだが、とりあえず今回はパスとした。そうこうして幸福という名前のバス停に到着した。他に降りる人もなく、もちろん道を歩いている人も他にはいなかった。朝の日差しは強く、ここが北海道であるような気がしない。まだ夏のようにジリジリと照りつけていた。バス停のある幹線道路から幸福駅までは少し距離があるようだが、看板が出ているのでまったく迷うことはない。緑の畑の向こうにキハが2両停泊しているのが見えた。実際には廃止されてもう走ることはないので停泊という言い方は正しくないかもしれないが、今にも走り出しそうな感じは十分する。500メートルくらい歩くとそこは公園のような形でかつての広尾線幸福駅が保存展示されていた。朝早くなので観光客の姿はほとんどなくとても静かだ。車両の周囲もぐるっとまわれるようになっており、車内にも入ることができる。駅のプラットフォームに上がり早速キハの中に入ってみることにした。古い時代ものの車ではあるが、比較的しっかりとしており、板張りの車内は木と油のあの独特の臭いがした。座席に座ってみることもでき保存状態はいい方だ。他にもこうやって展示されているところが各地にあるが、マナーの悪さというか悲しいニュースが多く聞かれるのでこれからも大事にしてもらいたいものだ。何をするでもないが、名刺や切符などが貼られた駅舎を見てもうしばらく時間をつぶす。早朝にも関わらず、お土産やさんも既に開いており、さかんに話しかけてきた。どうも昨日は台風で散々だったらしい。個人的にあまりお土産というものを購入することは好まない方なのだが、何となく小物を買うと、団体さんがバスで乗りつけてきた。こうやって一日中人がやってきたりするのなら観光地としても結構賑わっている部類に入るのではないだろうか。居心地のいい場所にこうしていると時間の経つのも早いもので、折り返しのバスの時間が近くなったので名残惜しいがこの場を去ることにした。バスは10分ほど遅れてやってきたが、立客でとても混んでいる。この先も随分と押し込んでの運行となっていたが、これなら鉄道の方がどんなに楽だろうかと思ってしまった。(後日談:後日、幸福駅跡に再訪する機会がありました。旅日誌はこちらをご覧ください。)
幸福駅 幸福駅 幸福駅
まだ早いが帯広駅まで戻ってきた。つい先程まではとても穏やかだったのに、風が物凄く強くなっている。ひどいときにはまっすぐ立っていられない程だ。まだ富良野へ抜ける便までは時間があったのだが、改札の近くまで来てみるとどうも様子がおかしい。人の多さといい、駅員の慌しさといい明らかに何かが起きている。自分も心配になったので近寄ってみると、急告案内で新得から先が強風で運休してしまっていることを知らせていた。ありゃりゃりゃ、、、1時間前に出るはずだった上りのスーパーおおぞらもここ帯広駅で立ち往生している。その1本前を行く上りが新得で抑止をくらってのことらしい。さらには下りでやってきて帯広で折り返すはずのスーパーとかちは狩勝の山奥でずっと足止めだとか。えぇ、、、まさか、札幌に出れないの??(絶句)台風はオホーツク海へ抜けたようだが、吹き返しの風というやつが大雪山系にぶつかって強風となっているのだろうか。もちろん強風がおさまれば直ぐに運転は再開するとはいってるが、お天道様が決めることなのでそれはいつになるか分からない。富良野を回るどこではないようだ。最悪札幌へ出れないとなると折角、折角、折角手に入れたプラチナチケットは一体どうなるのだろう??慌しい中も駅員に聞いてみてみると、北斗星に乗るのならやはりおおぞらの運転再開を待って動いたらそいつで前進するのがいいでしょうとのこと。ただでさえ峠を北上する根室本線の本数の少なさは超ローカル級なので、まったくどうなるかわからない2時間後の列車を待つのはリスクを感じてしまう。札幌駅で精算できるから、いま止まってるスーパーおおぞらにとりあえず座っておいた方がいいでしょう、という駅員のすすめもあり、自分もそう直感してたので自由席に空きがないか確かめることにした。
幸福駅 幸福駅
ホームに駆け上がると確かに1時間前に出発してるはずの特急が止まっていた。運良く空いてる席があったので座ることにする。先程の駅員の話ではすぐに出発だから急いだ方がいいと言っていたが、それは10分ほど前の話であって運転再開のメドが立った直後に再び風が強くなり、あらためて抑止の指示が出たらしい。じっと待ち続けていると、この次の折り返しスーパーとかちの出発時間になってしまった。もちろんこいつは未だ山奥で身動きが取れないでいる。そちらの指定を持ってる人も遅れてしまった1本前の自由席に座れ、という案内もあった。車内はすっかり腹をくくった空気となっており、騒ぎ出す者もいなかったが、遠くのおばちゃん団体だけが相変わらずはしゃいでいる。と、突然何の前触れもなく運転再開します、とのアナウンスがあった。とりあえず動けばいいか、、、と思ったが、すぐに徐行運転になってしまう。「まだ強風による抑止は解かれてませんがまずは新得へ移動します。下り列車を救済するための代行バスが峠に到着し新得へ下りてくるメドが立ちましたので、新得で待っても風がおさまらない場合にはそのバスで今度はこちらのお客様を乗せて山を登っていきます。」とのこと。とうに富良野は諦めていたが、何とか狩勝峠越えはできそうな気配だ。えっちらおっちらといったペースで新得までやって来た。残念ながらこの先の抑止は未だ解かれていないとのこと。「あと30分くらいすると代行バスが下りてきますので、その時点で判断します。」車外へ出てみると、確かに麓でも風が強いことがわかる。対応もしっかりしてるようだし、一応は札幌へ出られそうだ。フラノラベンダーエクスプレスに未練はあるがここで賭けに出ても仕方ない。それにしても、ここまできてまた台風にやられたかと思うとやはり悔しい気がしてきた。
幸福駅 幸福駅
新得の駅は突然のことで多くの人でごった返していた。ここに代行バスが到着して下りの人がやって来たらどうなっちゃうのだろうか?などと考え再び席に戻ると「空っぽの車両がいま下りにトライしてます。こちらも、これから山登りにチャレンジします!」という知らせが入った。チャレンジという言葉を使ったがどうか記憶が定かではないが(余談:いや、使ってはないでしょう。)車掌の口調からは確かにそんな雰囲気が感じとれた。駅の方でも早く席に戻れというアナウンスがあり、結局定刻から3時間弱遅れての出発となった。しかしまだこの先も25キロ程度の速度規制がかかり、おまけに立ち往生していた列車同士をすれ違いさせなければならないので、さらに遅れは出るという。風は強くても天気はいいので、車窓の眺めはいいはずだ。まぁそこは割り切っていこう。座席に座れず立ってる人もいたが、思ったほど自由席は混雑しておらず、安心できる状況になったのか車内販売も来るようになった。雄大な狩勝の風景を見ながら順調に列車は山登りを続け、結局速度規制に引っ掛かることもなかった。多分この便を優先させるために、すれ違いの列車の方が道を譲ってくれたのであろう。1本あとの便の救済処置でトマムに臨時停車したが、降りる人も乗ってくる人もおらず、何だかな…といった感じである。もしかしたら新冠から富良野に出る都合のいいバスがあったのかもしれないが、ここで冒険しても仕方ないと今日はあらためて思っていた。
帯広駅 スーパーおおぞら
千歳からの飛行機に乗り遅れた人、函館方面への乗り継ぎの予定が狂ってしまった人など、救済を求める人もたくさんいたようだ。時折まわってくる車掌の応対も慌しい。そうこうしながら3時間遅れのまま札幌に到着した。特急料金は免除されたが、大幅にルート変更したのでその分を精算して(余談:それでも救済扱いとやらで南千歳-札幌間の往復を精算するだけでした。)札幌駅ではラチ外へ出ることにした。当初はフラノラベンダーエクスプレスで夜に到着しそのまま北斗星に乗り換える予定だったので札幌はまったくの素通りだったが、ひょんなことで3時間以上余裕ができてしまった。3時間遅れると3時間余裕ができる、というのはまったくおかしな計算だが、整理するとそういうことである。(笑) こうなると何をしていいのかよく分からなくなってしまいそうになるが、だからといって大通り公園あたりをただぶらぶらするのももったいない。ここは安易だが、風景のいいところにでも行ってみようか?
羊が丘展望台
ということで、本当に安易な発想で羊が丘展望台に行ってみることにした。往復+数十分の滞在でちょうどいいかな?と単純に考えただけのことである。以前来たときに頑張って(?)地下鉄は完乗として片付けていたが、あのタイヤの車両は久しぶりである。福住からバスを乗り継ぐと、目的地にはすぐについてしまった。窓口の人がバスに乗り込んできて席を回りながら入場料を徴収し、あまりにも有名なあの眺めの場所にやってきた。俗化されてるとはいえ、いやぁここもいいところですね。札幌ドームの存在がちょっと興ざめだけど、飽きずに何時間でもいれそうなところだ。クラーク博士像の前は、お決まりのポーズで記念撮影をする人が絶えず行き来している。本当に羊がいるの?と思って見回すと、いました、いました。遠目には置物かと思ったが、全身を揺らしながら息をしてる姿がなんとも印象的でした。「いやぁ、かわいい♪」などと言ってる人もいるが、すぐ近くでジンギスカン何ぞ振舞っているのだがら、まったく人間は勝手なものである。(笑) まぁ、そんなことはどうでもいいか。
クラーク博士像
 2~3日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
千歳線・室蘭本線・函館本線・津軽海峡線・東北本線/北斗星
1時間程の滞在でそのまま札幌駅へ戻ってきた。昨日もそうだったが、確実に日が短くなっていることが分かる。ホームに上がりしばらく行き交う列車などを眺め、北斗星の入線を待った。乗るべきはずだったフラノラベンダーエクスプレスの到着を札幌駅で待つことになるとは思いもよらなかったが、全然混雑はしてない。やっぱりこうなると惜しいものだと感じてしまう。旅にアクシデントは付きものだとしておくしかないだろう。さてそれはそれとして、かなり慌しく行き交う列車の合間を縫ってお目当ての北斗星重連のディーゼル機関車に引かれて入ってきた。出発前に先頭まで見に行ったが、ホームいっぱいに止まるため1両目の機関車はホームからはみ出ている。さてと、今夜のお宿となるロイヤルに向かうことにする。やはりわくわくしてしまう。車両や設備は決して新しいとは言えないが、扉を開け中に入ると噂通りの立派な空間がそこにあった。まさに動くホテルというやつだ。しばらくしてウェルカムドリンクのサービスを受け、明朝の飲み物の時間を告げる。アテンダントの応対は事務的だと聞いていたが、まぁ目くじらを立てる程のものでもないだろう。たまらず写真を撮る人もいるというが、自分も例外ではなく、とりあえず2、3ショット記念に残しておくことにした。(笑) そうこうしてるうちに、すぐに発車となる。客車車両独特のガクンという衝撃とともに、北斗星4号は上野へ向け札幌駅を定刻に出発した。でもって、すぐに食前酒がわりにワインに手をつける。別にワインフリークでもないので味の良し悪しなど知る由もないが、この雰囲気でワインをいただくというのがたまらないではないか。
北斗星 北斗星
暮れ行く北海道の風景を惜しみながら、非日常の雰囲気を満喫していた。南千歳を過ぎ、食堂車の準備が出来たとのアナウンスがあったので、早速向かうことにした。本当なら車掌の検札を受けカギを受取ってからにしたかったのだが、食堂車の時間が限られているので、やむなく離れることにした。夕食は予約制なので座席まですべてセッティングされていた。まわりでは早々に宴が始まっていた。もう国内には列車の食堂車というものがほんの僅かしか存在していないが、こんな感じでゆっくりと旅の雰囲気にひたれるのはいつしかとても貴重な機会になってしまった。ざっと見回すとフルコースディナーと和食膳と半々くらいのようだが自分は和食を予約してある。正直値段の話をしてしまうとどちらも決して安いものではないが、雰囲気というか場所代を考えるとそれに見合うだけの価値は十分にある。変な話だが、いくら景気が悪いといってもこの程度の贅沢なら今の平均的日本人にとって手が届かない程のものでもなく、多くの人がデジカメやらでパチパチ記念撮影してるのも平和な証拠かな?と思ってしまった。そういう自分も…と思ったが食事を撮るのは億劫だっので止めておく。まぁ昨日の豚丼と同様で、いろんなサイトに紹介されているのでそちらをご覧ください…とでも言っておきましょう。(笑) 話は逸れたが、御膳のメニューは北海道の食材を中心に、とても丁寧なつくりであることは素人の自分にもよく分かった。どちらかというと、スローペースの食事はあまり得意ではないのだが、今夜ばかりは時間をかけてじっくりと味あわせていただいた。最後に季節のデザート(?)として、おはぎが出てきた。そういえば、最近では十勝産の小豆を使ったアンコものが人気だとか言ってたな。(余談:先程のワインで満足してたこともあり、ビールは頼まなくて正解だったようです。)部屋に戻りしばらくすると、ようやく車掌が回ってきた。「遅くなってすいません」と言っていたが、そういえば食堂車へ向かう途中でちょっともめてたような様子もうかがえた気がした。検札を終え、部屋のカギを受取る。カギといっても北海道の編成とは違って使い捨てのカード式なのでお持帰りできるやつだ。特に理由はないが、車内を探索してみようかと思って外に出ようとすると、サロンカーでちょうど車内グッズの販売があるとのアナウンスがあった。前にも書いたとおり、あまりお土産品というものに興味はないのだが、乗車記念のオレンジカードくらいは買っておこうと思う。パブタイムで満席の食堂車を通りサロンカーに移ると、既に多くの取り巻きが車掌を囲んでいた。セールストークでもなく本当に数に限りがあり、あらゆるものが飛ぶように売れていた。自分もその中に紛れ込んで台紙付きのオレンジカードを購入した。
北斗星 北斗星 北斗星
再び部屋に戻ると、噴火湾の向こうに月が出ていた。海面が月明かりに照らされていてとても幻想的である。この風景にはしばらく見惚れてしまった。気がつくと既にすっかりいい時間になっており、すぐに函館到着となった。時間が過ぎるのが早く感じる。機関車の付替えのためにしばらくの停車となるが、深夜のホームに人の姿はまったくない。ここから青函トンネルを通っている間は進行方向が逆になり、部屋の窓は津軽海峡と逆側になる。この時間帯でも貨物列車の本数が多く至るところで行違いとなり、トンネルの果たす役割が大きいことがよく分かる。個室の特権でもある専用のシャワーを利用して、しばらくするとやがて青函トンネルを通過することになる。北斗星では青函トンネルについても説明も何もないので、よほど注意してないとどこがどうだか分からない。知内駅を通り過ぎて列車の走行音が変わり、いくつかトンネルを通過すると北海道を後にすることになる。目を凝らしてみていても、トンネル内は何も変化はない。強いて言えば、吉岡海底駅と竜飛海底駅を通過するくらいだが、そういえば昨晩2時間ドラマで吉岡海底駅を通過するときに人が目撃され殺人事件が起きていたっけ。(笑) およそ40分でトンネルを抜け本州へ出たところで、さすがに眠くなってきたので名残惜しいが寝ることにした。ロイヤルのベッドはとても快適で、寝つきの悪い自分も青森の停車はまったく気がつかなかった。
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朝目覚めるとすっかり夜は明けていた。途中一度も目を覚ますことがない程の熟睡だった。身支度を整えしばらくすると、仙台に間もなく到着する。折角なので朝食も食堂車でとることにした。食事を終え戻ろうとすると「お飲み物9時頃お持ちいたします」とアテンダントの方から確認があった。ロイヤルの客の顔を覚えておくのも仕事らしい。新幹線に乗り換えれば、とうに東京へは行けてしまうのだが、こうやってゆったりと時間を過ごすのはあらためて贅沢だなと思った。9時ちょうどに飲み物と朝刊のサービスにやってきた。ただ車窓を眺めながらそのまま東北路を南下して行き、北斗星は定刻通りに上野駅へやって来た。16時間はあっという間だとは聞いていたが、これほど早いとは思わなかった。これで今回のプラチナチケットの権利は終わってしまうが、機会があればぜひまた利用してみたいものだ。ホームに降り立つと、入れ替わり立ち替わりで多くの人が記念写真を撮っていた。まだまだ汽車旅の人気は根強いようだ。(後日談:そんな北斗星ですが、残念ながら2015年8月をもって運行が終了しました。)
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