■旅日誌
[2006/7] 懐旧街道、絹の道~大間越
(記:2006/8/3 改:2021/8/7)
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先週は帰路に予約した飛行機が飛ばないというハプニングに見舞われましたが、またも突然の思いつきで東北地方を目指します。リベンジを狙ってもよかったのですが、突如思い立ってリゾートしらかみの空席照会をかけるとまたも直前になって窓側A席にキャンセルが出ていた模様。人気の高い列車だけあってそうチャンスはないと思い、すかさず購入してしまいました。もちろん空港めぐりの数稼ぎも勘定に入れてます。
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 1日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
はまかいじ、信州まつもと空港、新千歳空港、青森空港
舌の根も乾かぬうちに…という言葉が合ってるかどうか分からないが、性懲りもなく次にコマを進めることにした。前回悲しい目にあった三沢空港は当面後回しにするとして、前振りの通り、リゾートしらかみを今回のメインターゲットとして、前後で空港めぐりを進めることにする。五能線にはかなり昔にやって来たことがあるが、もちろん何度も来たくなる場所のひとつである。当時はまだなかったと思うが、ノスタルジックビュートレインという50系客車を改造したイベント列車のおかげで観光資源の掘り起こしに成功し、五能線の知名度が全国規模になったのはよく聞く話である。その後車両の老朽化を理由に、秋田新幹線の開業を契機にしてリゾートしらかみという名前で実質2代目イベント列車へと引き継がれていった。その後も人気は衰えることなく、このたび第三編成目が投入されたのは記憶に新しい。というわけで、チャンスがあれば…くらいに思ってたところ、たまたま"出もの"を見つけた格好で急遽出向くことに決めてしまった。
はまかいじ
さて、そのリゾートしらかみだが、第三編成の投入に伴い人気のあった蜃気楼ダイヤは残念ながらなくなってしまった。夕暮れ時を狙っても厳しいような気がしたので、とりあえずおさえることができた朝一の青森→秋田を軸に置いてみる。時間に余裕があれば準備にも、当日の行動にもいくらでも手はかけられるが、まぁそこは妥協しておく。とはいうものの、素直に引き下がるのもおさまりが悪いので寄り道を考えてみる。ということで方向違いではあるものの、これもいつの間にか土日限定の"準"定期運用として定着した感のあるはまかいじ号を利用して松本へ行ってみようと企む。はまかいじは、その名の通り横浜から甲斐路を目指す列車であり、横浜線を通る唯一の特急という意味でも異質な存在である。信州から横浜というと、昔小学校で習った日本版シルクロード=絹の道が、ちょうどそのルートが一致する。車両自体は踊り子号にも使われているものがそのままやってくるのでまったく面白みはないのだが、何となく気にはなっていのでちょっと利用してみることにした。それ程混むとは聞いてなかったので指定は必要ないと思ったが、朝も早いし、まぁとりあえず取っておくことにした。
はまかいじの車窓
恐らく学生の数が少ないためだろうけども、朝の横浜駅はそれほど混雑していなかった。土曜日というより夏休みというのが大きいと思う。はまかいじ号は横浜線を経由するので京浜東北線のホームから出発する。かつては根岸線やその先の鎌倉まで出向いていた時期もあったが、いまは横浜駅を起点としている。東神奈川まではATC区間を行くので実は使える車両も限られるらしい。そんなわけで桜木町側から入線したら、邪魔にならないようにすぐに発車しなければならない。が、信号の切り替えと運転手交代のため、ひと駅先の東神奈川で運転停車する。最初の停車駅である新横浜を過ぎると、徐々にのどかな風景へと変わっていく。地元民なら当たり前に思っていても、横浜線という名前からしてそんな光景にあることはイメージしづらいかもしれない。東名高速も国道246も渋滞しており、前回前々回と大阪へ行ったのはこの時間に出発していたことをあらためて思い出す。町田で一本追い越しを行うものの、それほどペースがいいとは言えない。横浜線の快速列車もそうだが、通過駅ではホームに進入する際に必ずペースダウンするので、余計そう感じるのかもしれない。
はまかいじ
八王子の手前で徐行して渡り線を通過し中央線に入る。空いてるとは聞いていたが、思った以上に着席率は高い。車内販売もここから乗ってくるとのこと。はまかいじ号はあずさ号に比べると停車する駅は多くかいじ号なみだが、行き先は松本である。だが、先へ進むにつれ乗ってくる人よりも降りていく人の数の方が明らかに多く、気がつけば岡谷を過ぎる頃には貸切状態になっていた。午前中の下りと午後の上りでは単純に比較はできないが、まぁそれなりにニーズはあるので結構長きに渡って運行されているのだろう。最近は改札で申し出ると「乗車記念」というゴム印を押して切符を渡してくれることが多いのだが、松本では入鋏時に使う形のスタンプが、下車印用に準備されていた。緑色で松本城の図柄が描いてある。こういうやり方はここ松本が初めてだった。
松本
松本で外に出ると運悪く雨が降っていた。松本城は以前行ったことがあるので今回はパスにして、1時間ほどあるフリーな時間で昼メシでも済ませることにした。特に理由はないが、ガイドブックでも有名なカレー屋へ行くことにする。傘をさして歩いてくのも億劫にも思えたが、特に道に迷うようなこともなく目的のお店は簡単に見つかった。小さなお店だが、定番のカレーを注文する。やっぱり日本人には日本のカレーが一番!さくっと済ませ、駅の方角へ戻るような感じでバスターミナルへと向かう。
信州まつもと空港
松本に寄ったもうひとつの理由は、信州まつもと空港を利用することだった。長野県に空港がある…というのがどうもピンとこないが、確か大阪、福岡、札幌へ1往復しかなく、東京の人間にとっては馴染みがない。長野新幹線があればもう十分だろう…くらいにしか考えが及ばないが、実際のところどのくらいニーズがあるのかはよく分からない。山の天気は変わりやすいというが、先程の強い雨はすっかり上がってしまい、時折うっすらと日が差すようになっていた。今日はここ松本から札幌へ出て、更に乗り継いで青森まで向かう予定でいる。無意味などと言ってしまうとその一言で片付いてしまうので、いつものようにそう真剣に考えてはいけない。2号体制の名古屋行きの長距離バスの後を追うようにして、空港行きのシャトルバスはバスターミナルを出発した。
新千歳空港
信州まつもと空港の滑走路は2000m級でジェット機の離発着も可能である。だが空港のある場所の標高が高く、実効長として少し短くみなければならないらしい。また、騒音問題から受ける制約もあって、大阪行き、福岡行きはプロップ機が就航している。それに対して札幌行きは旧JASのジェット機であるMD-87が担当する。正直なところ、松本から札幌なんてニーズあるのか疑ってしまうが、意外と着席率は高い。夏休みということが影響しているのだろうか?松本上空は晴れていたが、まだまだ梅雨前線の影響でどうしても雲が多い中のフライトとなってしまった。
青森空港
千歳へやって来たのはぐるり北海道以来である。あのときは素通り状態だったので、空港の様子を確かめる余裕などほとんどなかった。今日は乗り換えに2時間もあるので、空港内部を見物しておくことにしよう。北海道随一の空港とあって、頻繁に離発着がある。円弧状の大きな建物はまるでショッピングセンターのようで、お土産を売る店がこれでもかというくらいあり、すごい賑やかだった。そんなこんなでウロウロしてるうちに2時間はあっという間に過ぎてしまった。偶然にも乗り継ぎの青森空港行きは、先程と同じ型のフリートである。ジェット機で上がって降りるだけなのでフライト時間は30分とあっけない。陸路~津軽海峡越えを考えると、今日満席だったのもうなづける。
青森
津軽海峡を越え、青森空港へは西側からのアプローチとなった。方角的には八甲田山に向かって降りる感じになる。日が長い時期なので、この時間でも地上の様子をうかがい知ることができる。夕日に照らされた山々の中に、工事中の新幹線の高架が続いているのが分かった。青森空港は市の中心部からみて南の方角の山の中にある。今日はこれからバスで市街へと移動する。途中東北本線の跨線橋を渡ったときに、トワイライトエクスプレスのヘッドマークをつけた機関車がちらっと見えた。羽越線の土砂災害の被害は深刻で、まだまだ復旧の見込みは立ってない。お盆休みに影響が出ることが心配される。とりあえず、今日は青森で一泊することにしていた。
青森
 2日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
リゾートしらかみ、男鹿、秋田空港
今日の出発地は青森駅である。朝食を済ませたばかりで気が早いが、お昼過ぎまで乗り通すことになるので、昼食は前もって買っておくことにした。でお弁当を購入するときに、二千円札を差し出す。「あらぁ~、めんずらしぃ~ごと…」実は普段から財布の中に二千円札を数枚忍ばせており、時折このようにリアクションを期待してみたりする。悪趣味というか、結構これが楽しい。リゾートしらかみは、いまでは三編成で運用されていることは既に書いた通りだが、今回乗るのは第二編成である「橅(ブナ)」になる。ちなみに、一番新しい編成は「くまげら」、初代編成は「青池」とそれぞれ愛称がついており、どれも印象的な色づかいが特徴である。(後日談:その後、新しいリゾートしらかみ・青池編成に乗る機会がありました。そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
リゾートしらかみ
リゾートしらかみは三両編成で、両先端は展望席・談話席としてフリースペースになっている。時間帯によってはここで三味線の生演奏や津軽弁の語りべ体験などちょっとしたイベントが開かれる。真ん中の2号車は数人のグループ向けに簡易コンパートメント形式で仕切られており、シートをフルフラットにできる工夫も施されている。1号車、3号車の座席は特急で使われているものと同じでシートピッチは120センチとかなり広く、前座席のテーブルが遠く使いづらく感じるくらいである。低い位置から天井まで広がる大きな窓からの眺望もまた抜群である。ちなみにリゾートしらかみは快速列車の扱いなので、全席指定だが特急料金も急行料金も必要としない。もちろん、18きっぷでの乗車も可能だ。また、滞在型であちこち観てまわることを想定したフリーキップも3タイプ用意されている。車内販売員は全区間アテンドし、きめ細かいサービスにあたる。新車と見間違えるほど大胆に改造された車両もベースとなってるのは普通車用のディーゼルカーで、悪評だった足回りにも手が入れられている。総合的にみて、これ程乗り得感のある列車は他にはないかもしれない。
リゾートしらかみ
リゾートしらかみ2号は静かに青森を出発した。まずはノンストップで弘前へ向うのだが、車内はまだまだ閑散としている。弘前へ到着するとひと通り席は埋まった感じだった。その後も入れ替わり立ち替わり出入りは多く、満席の予約が入っているとのことだった。弘前へ立寄る関係で、川部までは一旦逆走する形になるのだが、弘前から通路を挟んで隣同士に乗ってきたのが、いわゆる"関西系のおばちゃん"で、逆向きに走ってるのが気色悪いとか、座席リクライニングのボタンに向かってなんやこれ?とか、まぁそれはマイペースで会話を続けていた。挙句の果てには車内販売のお姉さんも捕まえる始末で、あまりにもうざかったのでちょっとだけ口を挟んで席のリクライニングと逆走の話題については黙ってもらうことにした。(苦笑)
リゾートしらかみ・車窓
川部からは五能線の区間へと入っていく。車窓はリンゴ畑が広がり、岩木山の姿を眺めみることができる。地元"りんごのまち"板柳のアピールのために、各席をまわりながらリンゴジュースの試飲と試食用のクッキーが配られた。五所川原駅で交換するときに、駅の横で立ちねぶたの準備に追われてる様子が見てとれた。先頭車では三味線の生演奏があるということなので、折角なので見学に向かう。津軽三味線の魂を揺さぶるような音色は個人的にも興味があるところなので、しばらく聞惚れてしまった。こんな形で演奏を聴く機会に巡り合えるとは思いもよらなかった。やがて海が見えてくると、いよいよやってきたなという気分になってくる。鯵ヶ沢で下りリゾートしらかみ1号と交換し、先程まで慌しくしていたスタッフはここで下りへと乗り換えていく。もう一方の列車はくまげら編成で、この駅でご対面となる。あちらも多くの人で席が埋まってる様子だった。
リゾートしらかみ
五能線は日本海沿いをひたすら走っていく。青い海が車窓に広がり、何ともすがすがしい。荒天のときはまた違った表情をするだろうけども、日本でも屈指の風景であることはいうまでもない。海岸の様子は単調な砂浜だけでなく、時折風変わりな景色を目にすることになる。千畳敷や数々の奇岩など、徐行して案内が入るサービスもある。深浦で乗務員が交代するとトンネルが続く区間に差し掛かり、車内照明が落とされ天井には星と宇宙をイメージしたイルミネーションがブラックライトの光で浮かび上がる。子供が喜びそうな演出だが、ちょっとしたアクセントともいえる。列車はまだまだ海沿いを進み、前方に白神山系の荒々しい姿が見えてくる。あの山々の向こう側が世界自然遺産にもなっているブナの原生林だという。やっぱり、ただ通過するだけではもったい気がしてきた。
リゾートしらかみ・車窓
能代を過ぎると次はもう奥羽線の東能代、進行方向が逆になりあとは秋田を目指すことになる。ここでリゾートしらかみ3号と交換する。こんどは青池編成で、ほんの1、2分だが横に並ぶ姿が見られる。あちらもまた満席の様子で、どれも人気が高いことがあらためて分かる。ここから秋田まではおよそ1時間、もう海沿いを行くことはないが、途中右手に八郎潟の様子をちらっとみることができる。
リゾートしらかみ
気がつけばあっという間の5時間だった。ただ乗ってただけなのに、不思議と時間は過ぎていた。リゾートしらかみは定刻で秋田へ到着、今日はもう用事が済んだのであとは帰るだけなのだが、ちょっとタイミングが悪く秋田空港行きのリムジンはリゾートしらかみ2号到着の3分後に出発することになっている。さすがにこの乗り継ぎは危険過ぎるので、帰りの便をもうひとつずらして時間に余裕を持たせることにした。だからといって何か特別することもなく、とりあえず男鹿線を往復しておくことにした。(後日談:今回乗車した編成には思わぬところで再会することになりました。そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
男鹿線
奥羽線を追分まで戻り、左に分岐して男鹿半島へと向かう。鬱陶しい梅雨もまもなく明けるような気がする。なぜかなまはげの絵が車体に描かれているのが、とても分かりやすい。終着男鹿駅周囲には、はっきり言ってこれといったものは何もない。もっと何か見てまわるとしたら、時間と"足"が必要である。今日は単に時間合わせに来たようなものなので、30分ほど待って秋田へ舞い戻ることにしている。途中、寒風山でパラグライダーをやっているのが見えたのと、船越の水路を渡るのが気になるくらいで、特に目立ったものはほとんどない。再び秋田へ戻ったものの、またもリムジンバスの乗り継ぎに時間がない。今度は8分と先程の3分よりはましだが、大急ぎでバスの乗り場を探す。もうバスは出発するところだったが、乗り切れない人で既に長い列を成しており、次のバスが準備されているとのことだった。それでもまだ1、2名は乗れるようで思い切って乗ってしまうことにした。なぜか後方に適当な空席があったので着席する。その後も途中数名拾いながら、補助席まで使ってバスは秋田空港へ向かっていた。しばらくすると、遠くに奥羽線の普通列車が走っているのが見えた。
男鹿
どこもそうかもしれないが秋田空港はかなり山の中にある印象だった。この時間上りの便はどれもピークの様子で、すぐ前のJALの東京行きも満席、こんどのANAも満席である。少々慌しかったのでラウンジでひと呼吸おくことにした。折り返しとなる機材の到着が遅れているため、出発に少し時間を要すとのこと。これから乗る機には大きくUSJのペイントが施されていたが、機内清掃を省略して、とにかく急いで出発することが案内された。中に乗り込むと空調は止まったままでかなり暑苦しい。そんな感じでバタバタしたまま秋田を後にすることになった。既に日は西に傾いていたが、差し込む日差しがとてもまぶしい。眼下には雄物川の蛇行する様子が分かった。そのうち一面雲だけになってしまったが、他のANA機が並行して飛んでいるのが見えてきた。どこからやってきたのだろうか、しばらくしてこちらの真下を横切っていった。猪苗代湖を越えて突然アナウンスが入る。羽田で"渋滞"しているため到着が更に10分ほど遅れる様子。すると、霞ヶ浦の上空で左に旋回を始める。確かに360度回ったのが分かり、いわゆるこれが上空待機ってやつらしい。車のように手前で止まって待ってるわけにもいかないで仕方ない。それでも羽田空港に着陸したのは定刻から15分遅れ程度だった。到着するとすぐに大阪、岡山、広島への乗り換えが促される。どうしてあんなに急いでたのか、ここで初めて理由が分かった。これで訪問した空港の数が3つカウントアップされたが、先は未だ長い。というか、本気で"制覇"に乗り出すのか、まだ懐疑的なのだが…。
秋田空港