■旅日誌
[2009/6] 新地開墾、勇往邁進
(記:2009/7/19 改:2025/1/1)
(記:2009/7/19 改:2025/1/1)
去年に引続き、今年も常紋峠をSLが走ることなりました。北海道まで遠征するかどうか悩みましたが、指定も取れたことだし思い切って渡道することにしました。とりあえず網走で前泊して、2日目でSL常紋号に乗ることにします。その合間をぬって丸瀬布いこいの森へ行って森林鉄道を見てきています。
※下線部をクリックすると写真が表示されます
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1日目
今年に入って意識的に青組へマイルを寄せていたので、ADO女満別行きをANA便として利用したかったのだが、既に予約はいっぱい、キャンセル待ちも受け付けてもらえずJAL便を探してみたところ、こちらもうまく空きが見当たらなかった。しょうがないので旭川へ飛んで、陸路道東へ移動する作戦に出る。こちらも割引率の高い席をキャンセル待ちにしたが無情にも期限切れになってしまい、やむなく適当な運賃で座席を確保する。帰りのADO便にも空きはなく、ちょっと遅いがその後のJAL便で女満別から戻ってくることに決めた。ちょっとヒヤヒヤだったが、どうにか往復の足は確保できた。というわけで、土曜は朝7時半に羽田を発たなければならない。多少お疲れモードだったが、これからお出掛けするんだという気持ちの方が勝っているので、カラ元気で頑張って行こうと思う。(笑)
事情はよく分からなかったがセキュリティチェックが混雑していたとかで出発が20分近く遅れてしまった。結局旭川へ到着したのも10分以上の遅れとなる。そんな事情もお構いなしに、連絡バスは時間通りに出発します、とのことで大慌てで乗り込む。荷物を預けてあった人は絶対に間に合わなかったと思うけど、客の都合なんて問答無用、地方空港にしてはひど過ぎないかい?旭川空港を利用するのは初めてではないのだが、旭川市内からのバスには乗ったことがなかった。空港を離れ、北海道らしい風景を見ながら、名物の直線道路を延々と走っていく。東京に比べて気温が低いというだけでなく、カラッとしていているのでとても気持ちがいい。いつもそうだが、飛行機に乗ってる時間が短いので、こうやって着いてから徐々に北海道にいることを実感するようになる。やがて旭川駅へ到着、駅前広場では各地の名物カレーフェアのようなことをやっていた。といっても、いまはカレーを食べる気分でもないな…。(後日談:翌日にはカレーを食べる気分になっているのですが…。)ここで乗り換え時間に多少余裕をみておいたので、ようやくひと息つけた感じだった。ちょっと早かったが、特にすることもないので改札の中に入り、高架工事中のホームを横目に、折り返しのスーパーカムイなど見ながら、目的の列車がやってくるのを待つ。この駅にくるのもちょうど一年振りである。やっぱりこの時期の北海道は過ごしやすいな…。
自由席でも座れないことはないと思ったが、念のためオホーツク3号の指定を押さえておいた。いざ席へ向かってみるとキャビンの半分以上はグリーン車でちょっと狭苦しい感じがする。オホーツクに使われてる車両は北海道でも古い部類に入り、ドドドっとエンジン音を響かせながら東を目指して山道を行く。何だかんだで道東を訪れる機会はそれなりにあったりするのだが、石北線に乗って白滝越えをするのはこれが二度目、前回は随分と前のことのように思えてきた。オホーツクはますますエンジン音を唸らせ、険しい山岳コースへと差し掛かる。大自然の中の人工希薄地帯を列車はひたすら走っていた。さてと、、、先程旭川で買っておいたお弁当を開く。北海道らしい食材を目の前に心躍らずにはいられなかった。(後日談:このあとすぐに来た車内販売からヨーグルトを買ってしまいました。夕張メロンのシロップが美味しかったです。)
停車するたびに人の数は減っていき、遠軽に着くとどっと人が下りていってしまった。車内からSL常紋号が折り返しのために止まっているのが見えたが、そちらは明日のお楽しみとしておこう。列車の進行方向が変わり、石北線の最大の難所である常紋峠に挑む。特急列車でさえこの調子なんだから、それこそSLが全盛だった時代はどれほど苦労したことだろう…。牧歌的な景色を眺めながら、ボーっとそんなことを考えていた。列車は北見に到着、またもや人の数が減り、終点である最果ての町網走へとやってきた。
時間にして15時をまわったところ、網走駅を降りて、すぐにバスの乗り場を探す。国道沿いのちょっと離れた場所にバス停があり、天都山へ向かうバスを待つ。しばらくしてやってきたバスには乗ってる人は数えるばかりだった。網走刑務所の前を過ぎて左折し、先程乗ってきた石北線の踏切を越えると天都山エリアとなる。今日は途中で降りることにして網走監獄へ見学しに行こうと考えてた。ここも前々から一度は来てみようと思ってただったが、なかなかスケジュールが合わず、ようやく訪れる機会に恵まれることになった。網走監獄は屋外博物館とうたわれてる通り、実際に刑務所として使われてた建物や裁判所といったような施設が広大な敷地の中に移設、復元されて見学できるようになっている。最初の門構えからして、さながら刑務所に入っていくような雰囲気である。入場料を払い案内されたルートにしたがって見学していくことにしよう。入って正面にある建物を見てから、農業施設や味噌や醤油を醸造する施設などを見学する。続いて裁判所と二見の農場施設をみてまわる。建物の中には囚人たちが過ごしていた部屋や食堂なども再現されており、昼間は刑務所の食事を再現したものを試すことができるようだ。建物自体はとても古いものだが、うまく再現されていてリアルな生活感もありとても興味深かった。
続いて歴史資料が多く展示されているところをみてまわる。社会科の教科書では屯田兵という言葉について学んだ記憶があるが、実際にはこのように囚人やタコ部屋労働といったような、過酷で劣悪な環境下での開拓が大きな役割を果たしていたのだなと分かると、ちょっと複雑な気がしてきた。北海道の中央を横断する鉄道や幹線道路ができたからこそ、いまの反映があると言っても過言ではないわけで、そういったことをあらためて認識しなければならない。にわか勉強ではあったが、思いつまされるものは少なからずあったように思う。
次にメインである独居房のある建物を見学に行く。エントランス部分から5つの方角に向かって廊下が広がり、囚人房がある。一部の牢獄は公開されており、実際に中へ入って見学できるところもあった。最後に入浴風景や教会を見て網走監獄を後にした。今回も、網走へ来たらここ…と決めてあるお宿を予約してあったので、北海道らしい食事で締めくくることにしよう。
2日目
網走で投宿したので、これからあらためて遠軽まで移動する。といっても、慌ててまくる必要もないので、ボチボチ行くことにしよう。宿でゆっくり朝食を済ませ、とりあえず網走駅へと向かう。日曜の朝だけあって、通りの交通量もぐっと少ない。上りの普通列車でまずは北見まで行き、さらにもう1本乗り継いで快速列車で遠軽へと向かう。ふと車窓に目を向けると早咲きのラベンダーが見頃を迎えていた。北見にはちほく高原ふるさと銀河線に乗るために2回ほど来たことがあったが、駅前の東急が消滅してしまったりと、地方受難な時代はいつまで続くのかちょっと心配になる。ちょっとしたダイヤのいたずら…というわけでもないが、留辺蘂でSLを追い抜き遠軽には先回りしてSLを待ち受けることにした。
遠軽駅ではSL常紋号の運転にあわせてさまざまなイベントが行われるようだった。駅のホームも開放されていて、改札は自由に出入りできるようになっており、グッズの販売やブラスバンドなどがSLの到着を待っていた。遠軽駅はスイッチバックの駅としても有名な場所だが、その先の線路が続く方では、人力のトロッコやラッセル車の展示も行われていた。そちらにはあまり興味を覚えなかったのでさっらとみておくだけにして列車が見やすい場所へと移動しておこう。しばらくすると、遠くから警笛の音が聞こえ、黒い煙が上がっているのが徐々に見えてきた。瞰望岩をバックにSL常紋号が入線、石炭の匂いを漂わせ力強い走りで目の前を過ぎていく。やって来た列車は機関車が後ろ向きに付けられており、最後尾にはDLが2両重連でサポートに当たっていた。遠軽駅のホームに到着すると、歓迎のセレモニーが始まり、特急列車と交換する様子などを見ておく。
今回、SLの運行にあわせてイベントが行われていたが、遠軽から何ヶ所かまわってくれるバスが運行され、その中のひとつから丸瀬布いこいの森へ送迎してくれるバスを利用することにしていた。ここも前々から行ってみたいと思ってた場所だったので、今回ちょうどうまい具合に訪問できそうである。いこいの森へは丸瀬布駅から日に2、3便程度バスが出ているらしいのだが、車でないと往復するのが厳しく、まさに今回は"渡りに舟"だった。おまけに今回のアクセスバスは無料で利用できるとのことで、そいつはとてもありがたかった。先程SLが入ってくるところを見た場所の近くからバスは出るようである。早めに並んでおいた方がよさそうだ。
中型の観光バスは、補助椅子を含めて程なくして席が埋まっていた。丸瀬布いこいの森までは1時間くらいで着くらしい。途中、道の駅に立ち寄ってから行くようだ。少し慌しいが、そこで先程遠軽駅でかったお弁当でお昼を済ませることにしよう。いこいの森は丸瀬布中心部からは距離にして9キロほど山の方に向かって入っていったところにあり、周囲を山に囲まれた静かなところだった。日帰りでの利用も可能な温泉施設や、本格的なキャンプ場も併設されていたりと、なかなかいい場所である。だが、ここでのお目当ては雨宮21号という森林鉄道で、とてもきれいな状態で動態保存されているという。撮影に駆けつける人も少なくないというので、少し楽しみにしていた。何はともあれ、到着して早々だったが森林鉄道に乗車してみることにした。
おもちゃみたいな機関車だったが、ちゃんと手入れはされており、水蒸気を吐きながら出発を待っていた。ヒューといったような甲高い汽笛が周囲の山々にこだまし、列車は動き出す。無蓋車を改造したトロッコ車両の他にも、屋根つきの客車があり、最後尾にはそれっぽい運搬用の車両が連結されていた。機関車は見た目は小さいが、モクモクと吐く煙は迫力があり、石炭の匂いはどこか郷愁を誘う。ここへ来る前は、遊園地のアトラクションのようなものと勝手に思っていたが、結構な距離で路線が敷かれ、橋が架かっていたり、本物の踏切があったりと、なかなか本格的である。路線は大きく8の字を描くようになっており、橋を渡ってループを通ってきたあと、もう一度別のループを描いて出発地点へと戻ってくる。特に後半の方は、本格的な森の中を走っていくことになるので、遠目にも絵になるようである。なるほど、実際に来てみて人気があるのがよく分かった。雨宮21号は30分おきに運転されていたので、乗車した後も場所をかえて列車が通り過ぎていく姿をみておくことにした。
いこいの森に居れたのは2時間半くらいだったが、なかなかいいものを見せてもらった。ここはおすすめポイントとして十分に評価したい。帰路も同じバスに乗って、遠軽駅まで戻っていくことになった。時間的にもちょうどうまい具合にSL常紋号に乗り継げるようなっている。遠軽駅に着いてから乗車する前に、一度遠くから列車の姿を確かめておきたい。こんどはSLを先頭に、補機であるDLを二機従えて都合三重連の形で列車を引っ張っていくことになる。なかなか迫力があって壮観である。おっといけない、出発時間が迫ってきたぞ、急いで戻らなくては…。
最後はほとんど余裕なく列車に飛び乗ることになってしまった。今回SL常紋号を引くのは2つライトが特徴のC11 207号機でSLニセコ号に乗ったとき以来の再開である。北の大地で活躍するSLはまるで生き物のようだった。多くの人に見守られ列車は遠軽の駅を出発、非常にゆっくりとしたスピードで北見を目指す。ここも沿線では多くの人が手を振りこちらを見ていた。北海道のこんな山奥なのに有名な撮影ポイントではカメラを構えた人の数は半端でなく、その人気ぶりがうかがえる。去年復活して今年も地元の強い要望で運転が決まったらしいが、運転区間は若干短くなっていた。来年のことはまったく分からないが、これなら他の地方の方々もSLの招致を希望するに違いない。ちょっと期待してもいいかな??
列車は最大の難所である常紋峠へと挑んでいく。停まりそうなくらい非常にゆっくりとしたスピードで、モクモクと煙があがっているのがよく見えた。先日、TVで定期貨物列車のことをやっていたが、特に冬場はパワーのあるDLでさえ立ち往生してしまうこともあるという。難所中の難所と言っても過言ではない。峠を越え、トンネルを抜けてようやく次の停車駅である生田原へ到着。生田原では数十分の停車時間があり、模擬店や太鼓の演奏など、地元の方の手による催しが行われており、しばらく様子をみてまわる。他でも似たような経験があるが、こういった形で歓迎されるのも悪い気はしない。最後に大勢のお見送りを受けて生田原駅を出発、車内ではミス・ツィンンクルが華を添えるような感じでアンケートを配ったりと、のんびりとした時間を過ごす。移りゆく沿線の風景を何となく目で追いながら、残された時間を使って汽車旅を楽しんでいた。(後日談:C11 207号機は引退後、東武鉄道のSL大樹として復活することになりました。SL大樹に乗車したときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
列車は終点の北見へ到着、あっけなくSLの旅は幕を閉じてしまった。あとはもう帰るだけか…。北見からバスで女満別空港へ向かう。夕方の東京便に接続するバスは多くの利用者で席が埋まっていたが、いまここで急ぐ必要もないので1本見送る。なぜか5分後にもバスが来ることになっていて、そちらに乗ってみるとまったくのガラガラだった。しかし空港に着いてみれば、先発のバスにほとんど追いついてしまう。時間のことをいうと少し早い便にしたかったのだが、予約が取れなかったので最終のJAL便に乗らなければならない。まぁ、そこは割り切って夕食を済ませておくことにした。大きな空港ではないので選択肢は限られてしまうのだが、地産地消を合言葉に北海道カレーというものが目にとまり、そいつを試すことにした。ころころジャガイモにしっかりとしたビーフ、厚めの玉ねぎリングのフライの甘さがとても美味しかった。まずいカレーを探す方が難しい…なんてことをいう人もいるが、最後に軽く締めくくるにはこれで十分満足。ひょっこりやって来た北海道の旅だったが、もっとのんびりと過ごしたかったかもしれない。