■旅日誌
[2008/11] スローなブギにしてくれ
(記:2008/12/20 改:2010/9/16)
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この11月、山陰線開業100周年を記念して特別な列車がいくつか設定されたようで、中でも夜行の普通列車だった「山陰号」を意識した、だんだん山陰号というのが気になり、遠征できないか検討だけしてみました。実際には、金曜出発だということと、そもそも指定は簡単に取れないだろうということで断念してしまいましたが、のんびりしたいなぁ~という願望は常に頭のどこかにあり、そのためか別のところでもいいのでまったり汽車旅を決め込むことにしました。
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 1日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
津山、みまさかスローライフ、松江
前振りの通りだんだん山陰号の乗車は断念していたのだが、冷やかし半分、何回か照会をかけてみたがまったく出てくる気配はなかった。それとは別に、ものは試し(?)というか、実はある旅行会社へキャンセル待ちの予約を入れてあった。いつしかそんなことなど忘れてしまっていたところ、前日になって「今朝方、大量のキャンセルが出たのですがどうしますか?」との連絡が入る。いつもならYes!と即答して、きっとこの旅日誌も『毎度ながら運よく…』という出だしの文章になっていたかと思うのだが、今回ばかりはどうにも日程の都合がつかない。ツアーで抑えていた座席が開放されたものと思われるが、泣く泣く断念することになってしまった。
ひかり393号
そんな話はとりあえず置いといて、週末一泊二日の逃避行へ向かうことにする。今回のスタータは新横浜始発のひかり393号今年のGW以来二度目の利用となる。前日の帰宅が遅い(朝早い?)のはすっかり恒例となってしまい、眠ると危険な予感がしたので準備でもしながら時間が過ぎるのを待つことにした、、、が、いつの間にかうたた寝に入ってしまった模様で、ハッと意識が戻ったときは、もう間もなく出発しなければならない時間になっていた。あぶない、あぶない、、、まだ暗い中、少々慌てながら家を出発する。過労と睡眠不足のせいか食事も不規則がちで最近めっきり食欲が落ちてしまっている。しかしながら、それこそ倒れたりしたら洒落にもならないので途中コンビニで食料を調達、味気ないものでも必要最低限の栄養補給を考える。
のぞみ99号・岡山
5時半になって改札が開き早速ホームへ向かう。あたりはまだ薄暗く、人の影もまばらである。やがて列車は6時ちょうどに出発、すぐにワゴンサービスが通りかかったのでコーヒーを注文する。さてと、、、コーヒーのせいではないようだが、不思議と眠る気も起きなかったのでパソコンを開き、書き溜めてあった旅日誌の続きでも書くことにしよう。足元にあるコンセントを拝借し多少前かがみになってPCに向かう。何の気なしに無線LANのスイッチを入れてみると、車両内に設置されたアクセスポイントの信号を拾うことができた。走行中のインターネット接続サービスはぜひ実現させてもらいたいものである。小田原に停車し、外は徐々に白々としてきた。しかしながら天気はあまりよくないようで、富士山の姿を見ることはできなかった。静岡に停車し自由席はほぼ満席となる。思ったより集中力が持続したようで、それなりの作業成果はあったようだ。いつもならぼんやりと窓の外を眺めてるだけが、今回は景色に目もくれずにいた。直前までこのまま岡山へ言ってしまおうと考えていたが、心変わりして新神戸で一旦下車することにする。意外と外気温は低く、外に出ると少しひんやり感じる。ひかりを見送り、後続ののぞみ99号に乗り換える。この直前を今月末で引退する0系のこだまが走っているのだが、途中追い抜いてしまうダイヤのため乗り換えすることはできない。どうせなら最後の勇姿を目に留めておきたかったが、その願いは叶わなかった。(後日談:その後、ひょんなことから0系新幹線に乗るチャンスが巡ってきました!!旅日誌はこちらです。)
みまさかスローライフ号 津山
結局、GWのときと同じつなぎで岡山へ到着、のぞみ99号をあとにする。在来線のホームへ降りる前に一旦改札の外に出て指定席券売機を探す。ダメ元で明日乗る予定の列車の照会を掛けてみると、、、おっと、残席が出てきたぞ。ずっと満席のままだったのに、とりあえず押えておこう。立ち席でも乗車は可能とのことだったが、安心料としておこう。今回のルートは、これから中国地方を北上して山陰地方へ出て、再び南下して山陽方面へ戻ってくる予定でいる。岡山駅の北の端のホーム吉備線と津山線の列車が出入りする。だが、1両、2両のキハが行き交うだけでどことなく寂しい。区間便の普通列車を1本見送り、後続の快速を待つ。程なくして座席は埋まり、快速つやま号岡山駅を出発、岡山市街を抜けるのにそれほど時間はかからなかった。
津山
新幹線で気を張っていたせいか時折意識が遠のき、車窓はすっかり山間の風景に変わっていた。気がつけばもう間もなく津山に到着するところだった。ここ2、3年、GWと秋のこの時期みまさかスローライフ号にという列車が津山と智頭を往復し、途中地元の方々も参加しての行事が行われている。今回はその列車に乗ってみようと思う。津山駅ではスローライフ号の運転に合わせて旧津山機関区扇形機関庫も開放され間近で見学することができる。一旦改札を出て、運転区のある方へ向かうと。既に多くの見学者が集まっていた。梅小路と同様、ターンテーブルはいまでも現役で作動させることができるようで、時折デモ代わりに動かされていた。車庫の中には今日これから乗るみまさかスローライフ号が目の前に停留されていた。年季を感じるキハ58・28は国鉄色に戻され、周囲の情景をバックになかなか絵になっていたように思う。
復活!急行砂丘
スローライフ号の出発まではまだ時間があったが、全車自由席ということもありちょっと早めに並んでおくことにした。先程見学してきた車庫から入れ替え作業が行われ、2番線に入線、2両編成の車内はちょうどいい感じに席が埋まってきた。出発直前に岡山から来た列車と接続を図り、駅員さんやらJR西日本の職員やら多くの人のお見送りを受けて列車は出発した。東津山で姫新線と分岐し、キハは唸りを上げながらもどこかゆったりとした加速で進んでいく。いまどきの車両にはない、このゆるい感じがたまらない。時折鳴らすタイフォンもどこか郷愁を誘う。スローライフ号は、美作深尾美作加茂美作河井の3駅では長時間停車して、地元の方の主催の行事が行われていた。美作加茂では、ヘッドマークを付けて急行砂丘号に復元させてみたりと、サービスが行われていた。
みまさかスローライフ号
そんな感じなので通常のダイヤよりも時間が掛かっていたようだが、スローライフ号智頭駅へ到着し、それほど停車時間もなく、津山へ向かって引き返してしまった。乗ったまま帰って行った人も少なくないようである。さて、今日はもうこれで目的を果たしてしまったので、あとは列車を乗り継いで先へ進むだけなのだが、気がつけばホームにポツンと取り残されてしまった感じである。智頭駅には一度降り立ったことがあるが、山間のとても静かな場所だった。それほど頻繁に列車が来るわけでもないが、タイミングよく鳥取行きの特急がやってくるのでそいつを捕まえる。ここは特急でなくても構わないのだが、本数が少ないく1本落とすとあとに大きく響くので、素直に特急を利用することにした。
みまさかスローライフ号
予想通りスーパーはくとはガラガラだった。あっという間に鳥取駅へ到着、今度は松江行きの快速とっとりライナーへ乗り換える。距離を考えると、こっちが特急でもいいかな?と思ってしまうのだが、そううまくもいかないようである。この快速も何度か利用する機会があったが、俊足を生かして意外といいペースを保ってくれる。ただ、利用客も多く、短い編成に押し込まれた結果かなり混雑した感じになる。長距離乗り通すにはあまり向かないようである。やがて日も暮れ、車内はどことなくどんよりとした空気に包まれていた。松江に到着したときは、すっかり夜になっていた。とはいえ、まだそんな遅い時間でもないので、宿まで歩いて向かうことにした。しかし、未だこんな時間だというのに人の往来もなくとても寂しい感じがする。というか、これが普通なのだろうか?自分にはよく分からない。
とっとりライナー
 2日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
木次、奥出雲おろち、備後落合、芸備線、広島
今回お世話になったお宿は松江温泉の中にあり宍道湖が見渡せる場所にあった。宿の車で松江駅まで送ってもらい、待ち時間を使ってこれから乗る列車の指定の照会をかけてみると、満席の結果が返ってきた。昨日は運がよかったようだ。とりあえずここから次の乗り継ぎ駅である宍道駅へ向かうことにする。少し余裕があるので目の前の1本を見送って、区間便の宍道行きキハ単行に乗り込む。もしかしたらこの列車がそのまま木次線に入るのかもしれない。宍道湖を右手に見ながらこのまましばらく移動する。
松江宍道湖
先ほどから気にはなっていたのだが、どうもカメラを構えてる人の姿が目立つ。はて、何かあったか??そうか!!今日は例のだんだん山陰号が京都へ向かって上っていく日だ。宍道駅に到着すると、もう間もなく回送されてくるところだった。折角なので記念に写真くらい撮っておこう。対面のホームに向かい待ち構えていると、赤いディーゼル機関車に引かれて列車が入ってきた。専用のヘッドマークを掲げて青い客車を引っ張ってる姿はやっぱり絵になる。乗車はとっくに断念したいたが、まさか今日ここで本物の列車お目にかかれるとは思ってもみなかった。上下行き違いの列車をやり過ごすために数分間停車した後、列車は松江へ向けて走り去っていってしまった。う~ん、直前に乗れそうなチャンスがあっただけにやっぱり惜しいな…。
だんだん山陰号
ちょっとしたサプライズの後、ここから木次線でもう少し先まで進んでおかなければならない。折り返しの便に乗り込もうとすると一旦ドアが締められ、先程のキハが増結される。思い起こせば、木次線に乗るのも随分と久しぶりのことになる。もちろん、そんなに頻繁に利用するはずなくそのときの記憶も少し曖昧になってきている。宍道駅を出発すると、すぐに急坂に差し掛かる。車両自体は新しいものの、それほどパワーがあるわけでもなく、エンジン音を唸らせながらゆっくりと勾配を駆け登っていった。
宍道駅
木次駅での乗り継ぎはスムーズで間もなく奥出雲おろち号が入ってくるところだった。このトロッコ列車もなかなかの人気のようで、運よく指定が取れたのは前に書いた通りである。奥出雲おろち号は、ここ木次から備後落合の間を1往復しているのだが、普段なら頭に"超"が付くほどのローカル線で、しかしながら、その沿線の風景はなかなかのものがあり、いわゆる"うまいもの"もそれなりに揃っている。また、小説や映画にもなった『砂の器』の舞台にもなった亀嵩を通る路線でもあり、知名度はなくもないところである。ただ、どこから来るにも不便でることには変わらないので、来ようと思ってもそう簡単に来れる場所ではない。そんなところをトロッコ列車が走ると言われてしまえば、来ないわけにも行かない。(苦笑)
木次線
奥出雲おろち号は、一応全席指定となっているが、控え車に人が座ってなければ「立席」で乗っていいことになっている。このように運用ルールを緩めたことで、利用者の数がかなり増えたという。特におろちループ橋の見物と三段スイッチバックを通過するだけでも十分に楽しめるようで、現にそこだけ乗りに来る人も少なくないようだった。今回は指定が取れなくても立席で強行するするつもりだったが、運よく指定を取ることができたので座席の心配をする必要はない。いつもと同じセリフだが、自分の強運に感謝するばかりである。
奥出雲おろち
トロッコ車両のイスは木製でゴツゴツしており、また窓枠は何もはまってないので、この時期、走り出した後の乗り心地は決して快適とはいかないようだ。ご近所さんの様子を見ても防寒着はもちろん、携帯カイロを準備してる人もいる。ただそこは、控え車もあることだし気が向いたときだけトロッコ車両に席を移せばいいのであまり深刻に考える必要はない。最初から最後まで乗りっぱなしの人はいないと思うが、半分ほど席が埋まった状態で奥出雲おろち号は出発することなった。何となく予感はしていたが、いざ走り出してみると体感温度は結構厳しいものが、、、と、1分経たないうちに認識することになってしまった。
奥出雲おろち
そんな感じなので、席を立ってそこらをうろちょろしながら過ごすことに決めた。左右どちらも紅葉の景色が続き、見て飽きることはない。夏なら夏でまた違った雰囲気が楽しめたかもしれないが、それはそれとして、色づいた山々は本当に自然美そのものだった。地元の名産品を紹介する売り子さんや沿線案内のボランティアの方が乗り込んできたりと、景色以外にも楽しめるものはある。特に仁多米を使った笹のずしと仁多牛弁当は甲乙つけがたく、結局両方買ってしまい押鮨の方をお土産にとっておくことにした。またそれとは別に、亀嵩の蕎麦弁当も外しちゃいけない!と心に誓っていたので、事前に電話予約も入れておいた。亀嵩駅で顔を出してて欲しい…という指示通り、駅に到着するや否や代金と引き替える。と、まぁ、この日のお昼はこの上ない至高のメニューと相成った。(余談:本当は食べ比べのために八川のお蕎麦も考えたのですが、そちらは自粛しました。それにしても亀嵩蕎麦の素朴な味わいといい、仁多牛のとろけるような食感といい、こんな贅沢なお昼は本当に久しぶりでした。)
奥出雲おろち
控え車で食事をした後、またトロッコ列車へ戻ってしばらく車窓を眺めていた。早々に引き上げていく人、控え車の存在を知らないのかひたすらガマンしている人、人それぞれといったところだろうか。車掌さん曰く「最後の10分だけは絶対ガマンして外にいてくださいね!」とあちこちで力説していた。やがて奥出雲おろち号出雲坂根に到着、かの有名な"延名水"にできた人だかりを尻目に見所のひとつ、三段スイッチバックへと差し掛かる。運転手はこれまで進行方向後ろ側だった機関車の方へ移動し、停車した駅ホームの位置からバックで坂道をゆっくり登っていく。再び運転手がトロッコ車両側の運転台へ戻り、さらに進路を変えて勾配を稼いでいく。先ほど通ってきた駅舎の赤い屋根も下の方に見える。随分と標高も上がってきたので、風はより寒く感じるのだが、ここはもう少し我慢、最後のクライマックスが待っている。
おろちループ
やがて列車はスピードダウンし、おろちループ三井野大橋の案内が入る。木次線と並行するように走ってきた国道314号もここで高度を稼ぐために大きなループ橋となっており、出雲地方に伝わるヤマタノオロチにちなんでおろちループと名付られている。たまたま近くにいた車掌に聞いたところ、今週末が紅葉のピークだったようで、先週よりもさらに美しいとのことである。また、今年は台風直撃がまったくなかったおかげで、例年に比べてもはより映えて見えるようだとも言っていた。いやぁ、それにしてもこの絶景、本当に言葉にならないほど美しいものだった。もっと時間があればいつまでも見ていたいと心底思った。
三井野大橋
奥出雲おろち号は終着備後落合へ到着。その昔、ここで乗り換えたときのことが思い起こされる。(余談:駅売りのおでんうどん、忘れられません♪)かつては陽陰接続のターミナルとして数多くの列車が行き交っていたのが、今ではすっかり秘境駅の仲間入りをしてしまっている。長いホームがより悲しげに思えてならない。(後日談:その後、木次線へ再訪する機会がありました。旅日誌はこちらをご覧ください。)奥出雲おろち号を下車した人はほとんどなく、みんなこのまま戻っていくようだった。その奥出雲おろち号を見送り、芸備線に乗り継いでこれから広島へ向かうことにする。わずかばかりの人を乗せたキハは山間の寂しい駅を静かに出発した。
備後落合駅
列車のどかなところをのんびりと走っていた。先ほどから気になっていたが、あまりにものんびり過ぎて非常にペースが悪い。それでもダイヤ通りなので間違ってはいないようだが、どうしたものだろうか?(後日談:帰ってきてから知りましたが、JR西日本では十分な保線作業ができないなら速度を落とす、という方針を取っているようですね。不幸な事故があったにせよ、儲けがない=サービスの質を落とすという構図はなんとなく納得いきませんが、どうなんでしょう?)庄原駅で時間調整したあと、三次で広島行きの快速に乗り換える。利用者は徐々に増えてきたものの、こちらも1両編成だったので結構込み合っていた。広島に到着すればあとは東京へ戻るだけとなる。この時間なら新幹線で帰ってもまぁそれなりの時間だと思うのだが、何年かぶりに広島空港を利用してみることにした。しかし、リムジンバスでの一時間は苦痛なので、山陽線の普通列車セノハチ越えしてに白市からバスのルートを考えている。山口宇部空港と同様、社会人になって飛行機を乗るようになってからよく利用した空港なので、ちょっとした思い入れもある。少し懐かしさを覚えながら、今回の旅の締めくくりとなった。
JAL・JL1616便・羽田行き