■旅日誌
[2007/7] 土佐・絵金祭り
(記:2007/8/26 改:2021/9/20)
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もう何年も行きたいと思ってた高知・赤岡の「絵金祭り」に行ってきました。今まで見聞きしたことしかありませんでしたが、実際に行ってその雰囲気に触れることができました。ちなみに今回は車で往復しています。2日目の昼間には時間があったので、ついでと言っては何ですが、足摺岬まで足を延ばしてきました。いつもの旅日誌とは少し違った構成にしてみました。
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絵金屏風絵
絵金屏風絵
絵金屏風絵
絵金屏風絵
絵金屏風絵
絵金屏風絵
 往路
ルート概略
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往路:東名、中国、山陽、瀬戸中央、高松、高知
前振りの通り、今回は念願かなっての遠出である。目的地は高知と決まっていたのだが無謀にも車で往復することにしていた。距離にして830キロほど、行程の98%は高速道路とはいえ、所要時間の見込みは約10時間。かなりの長丁場である。ちなみに往路と復路でルートをかえてみようと思う。大阪までの東名~名神は同じだが、往路は山陽道を経由して瀬戸大橋を使って四国に入るつもりだ。まだ、梅雨の末期ということで、ところどころ雨の予報が出ている。走るのに苦にならなければいいが。
瀬戸大橋
高知入りの目標は16時前と決めていたので出発は朝の5時半となった。静岡に入ったあたりから次第に雨を感じるようになり、いつしか本降りになってしまった。こんな状態が続いてしまえば疲労度も違ってくるように思えたが、大阪を過ぎてからは雨に見舞われるようなこともなく本州を抜けるころには穏やかな天気になっていた。こちらは梅雨明け間近のようだ。倉敷で山陽道に別れを告げ、いよいよ瀬戸大橋を渡ることになる。何回か列車で通ったことはあるが、自分で車を運転して…となるとまた違った気分になれる。途中、与島のPAで休憩をとり、列車が橋を渡ってく姿をあらためて下から眺める。そのスケールの大きさにはやはりすごいと思う。ところで、我が愛車:マークXクンの走りは快適そのもの、結局、高知まで無給油で着いてしまった。2.5リッターのノーマルエンジンなのだが、燃費の計算をしてみるとおよそ14.3Km/L。最近の車の性能は驚異的である。宿にチェックインしたのは15時半過ぎ、おおよそ予定していた時間だった。早速、最寄り駅へ向かい、ごめん・なはり線赤岡駅へ移動することにしよう。
ごめん・なはり線
 赤岡絵金祭り
ルート概略
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高知・赤岡町
四国一小さい町・・・そんな言われ方もする赤岡の町は高知の中心部から20キロほど東にいったところある。絵金祭りは毎年7月の第三土曜と日曜に赤岡の商店街で開催され、地元はもちろん、よそからも多くの人が詰め掛ける。このお祭りは、百数十年前から須留田八幡宮の宵祭りで絵金の屏風絵を飾っていたのをもとにしたといわれ、今年で31回目となる。それなりに回数も重ねてきており、日本の原風景を思わせる夏祭りに、この日ばかりは小さな田舎町を賑わす。
赤岡・土佐絵金祭り
通称「絵金」とは『絵師である金蔵』からきている。幕末、土佐藩の髪結いの家に生まれた金蔵は類まれな絵の才能を買われ、狩野派を学びに江戸に渡る。免許皆伝には通常10年かかると言われてるところを3年で終え、土佐に戻り藩お抱えの絵師にまで上りつめ、その才能を開花させる。狩野派は師匠や先人の作品を模写することでその技や伝統を学びとることもあり、あるとき依頼を受けて模写した絵に偽の署名落款を付けて売られてしまうという"事件"が起きる。その才能を妬む者も少なからずいたということだろうか、いわゆる贋作事件に巻き込まれた絵金は、狩野派を波紋、城下からも追放され、その後放浪の時期を過ごす。旦那衆の間をフリーの絵師として藩下を渡り歩いたとか、京の芝居小屋で裏方をしてたとか「謎の十年」については諸説さまざまあり、中国に渡ったという奇説まである。
赤岡・土佐絵金祭り
やがて土佐に戻った絵金は、当時宿場町として栄えていた赤岡に身を寄せ、廻船問屋や町商人の後ろ盾を得て、六尺ほどの屏風に歌舞伎を題材にした芝居絵を描くようになる。絵金の屏風絵は、ロウソク1本を絵の前に立てて鑑賞するように描かれており、その構図や色づかいなど、作品は独創性に満ち溢れ、飛び散る血しぶきの赤や登場人物のグロテスクな様は見るものに強烈な印象を与える。その画風は、おどろおどろしくも不思議と生き生きとした空気に満ち、人物の配置、ユニークな表情、俗世間的な体たらくな表現の一方で狩野派の繊細さを偲ばせるテクニックが盛り込まれてたりと、最近あらためてその評価が見直されてるという。庶民の娯楽といえば相撲と芝居くらいしかなかった時代に、これ程の刺激的な絵はさぞ見る者の目をひきつけたに違いない。すっかり世が変ってしまった現在、芸術のプロの目からみても、使われた絵の具の原料や、密かな演出、例えば絵の中に「狩野派を匂わす絵」が描いてあったり、自分の隠し印を作品の中に忍ばせたりと、絵金の作品には実に興味深いことが多いのだという。
絵金屏風絵
絵金由来の地である赤岡には、23点の屏風絵が現存している。一説には数百人いたという弟子の作品も屏風絵として残されているのだが、赤岡にある作品はそのほとんどが絵金本人の作だとされている。夏のうだるような暑さの残る夕暮れどき、日は沈み、あたりは闇へとかわる頃、凪でよりいっそう蒸し暑さが増してくると、古い民家の軒先には屏風絵が持ち出され、ロウソクに火が灯される。どこからとなく人々は集まり出し、ロウソクが燃え尽きるまでのおよそ2時間、行き交う雑踏の喧騒さとロウソクの炎に浮かび上がった屏風絵という不思議な取り合わせで祭りはピークに達する。絵金祭りの期間中には、土佐絵金歌舞伎という地元の方による芝居も催され大いに活気付く。今年は文化座という立派な施設のこけら落としとも相重なり、庶民文化が今もこの地に根付いていることが分かる。年に一度、ひなびた小さな漁村は異様なまでの活気に包まれ、それはまるで絵金が絵に込めた想いは今もなお人々の間に息づいているようだった。
絵金屏風絵
絵が主役というお祭りも珍しいとは思うが、これぞ日本の夏というとても素晴らしい雰囲気が味わえる。賑々しさはもちろん、露店グルメ巡りも目が離せまない。ちなみに1晩目のメニューは、高知らしくかつおのたたきにちらし寿司とそうめん、アクセントは練り物の串てんぷらでしめてだいたい1000円、2晩目はおこわに串盛り合わせとお好み焼きでやっぱり1000円ほど。飲み物には、そこは地酒の振る舞い酒が相性ぴったり。これがまた美味!!じっとしてるだけでも汗が出てくるような状態だったので、さっぱり系の蔵出し冷酒の度数20%は最高だった。250円で木の枡を買うとその日は飲み放題というサービスまであった。(余談:絵金祭りは「美味しんぼ」など、フィクションものの中で取り扱われることもありますが、個人的には「ギャラリーフェイク」の『残暑絵金見舞』は秀逸だと思いました。白状すると、主人公の藤田玲司の「本物の絵金祭りを見てみたいものだ…」といったようなセリフが、本当に絵金祭りに行きたくなったきっかけだったりします。)(更に余談:日曜の晩、ゲージツ家を名乗る某有名人を見かけました。白系のお着物に雪駄、トレードマークの帽子と、その風貌は目立ちすぎでした。でも、最近見なぁ~~)
絵金屏風絵
それから、三本立ての一本だけだったが、歌舞伎も観ることができた。はっきりって正確な内容まで理解が追いつかなかったが、目の前の演舞には鳥肌が立つような感動を覚えた。軒先に屏風絵を並べてローソクと提灯で飾るという行事は、百年以上前から行われてたというが、手の届くところに惜しげもなく本物の屏風絵が持ち出され、写真も撮り放題と、幽玄な世界を直に体感できるのは非常に貴重な機会に思う。現地に行ってみると、地元高知の美術館の方が各作品について路上案内をしてくれたりと、より興味をそそられた。同じような催しは他にもあるようだが、本物を見るには年に一度、祭りの時期にそこまで行かなければならない。が、赤岡では絵金蔵という施設まで作って屏風絵を丁重に保存しており、レプリカではあるが絵金祭りの雰囲気を垣間見ることができる。高知に行った際にはちょっと立ち寄ってみては…。
絵金歌舞伎
 足摺岬往復
ルート概略
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足摺岬、桂浜
祭りは夜に行われるので、昼間の時間を使って滞在2日目は少し遠出してみることにした。自分の車で来てることだし、折角なのでここはどこか行っておきたい。泊まった場所からだと室戸岬にでも出るのがいいようだが、一度行ったことがあるので、今回はもうひとつの"突端"である室戸岬に出向いてみることにしよう。少し距離があるようだが、まぁ夕方戻ってくることを考えればちょうどいいのではないだろうか。
足摺岬
とりあえず南国ICから高速の通ってる須崎まで出て、あとはひたすら一般道を走っていかなければならない。国道56号から321号へと抜けると、やがて太平洋の大きな景色が見られるようになる。時々、土讃線・土佐くろしお鉄道とも交差しながら先へと進む。土佐清水まで出て最後に足摺岬へ続く山道を進む。足摺スカイラインと呼ばれるこの道はかつては有料道路だったらしいが、クネクネとした尾根道を快活に攻めていく。いつも旅先で借りるようなレンタカーと比べてはいけないが、軽やかな我が愛車の足回りにはあらためて惚れ惚れしてしまう。もっと、こいつとお出掛けしないといけないな…。
足摺岬灯台
目的の足摺岬までやってきた。人里離れたこじんまりとした観光地でお昼を挟んでしばらく時間を過ごすことにしよう。最初に展望台灯台などを見てまわり、雄大な太平洋の景色に自分のちっぽけさをあらためて感じる。細かいことで悩んでちゃいけない…。(笑)近くにある第38番札所の金剛福寺に立寄ってからお昼ご飯にしようと思う。風景だけでも十分贅沢なおかずになりそうだが、折角なのでここは少し奮発してしまおう!!
四万十川
帰りもほとんど来た道を戻り、途中、四万十川を眺めて休憩を入れたりしながら須崎へ出てきた。ここからは高速道路は利用せずに、浦ノ内湾の北側を通る県道を経由して桂浜へ向かうことにした。道は狭くカーブはきついが、交通量は少ないのでさほど苦にはならない。やがて県道14号へ出ると、再び太平洋が左手に広がり、悠然とした道がしばらく続く。これまで高知に立寄ったことはあったが、桂浜に来たことがなかったので、今回はいい機会だろうと思ってここによることにした。いざ来てみると、何だかレジャースポットのような場所で少し気落ちしてしまったが、あの坂本竜馬像など一通りみてからこの場をあとにすることにした。闘犬の見学ツアーといったようなものもあるようだったが、結局長居する気にはならなかった。桂浜からは宿まで意外と近く、ちょうど高知竜馬空港の前を通っていくことになった。さて、今晩ももう一度絵金祭りへ向うことにしよう。
桂浜・坂本龍馬
 復路
ルート概略
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復路:高知、徳島、神戸淡路鳴門、阪神高速、名神、東名
今日は連休明けの平日だったが休暇を取っていたので1日かけて帰ることにする。帰りのルートは行きと少し変えて、徳島の鳴門で四国を出て、淡路島を経由して明石海峡大橋を渡っていくことにしていた。帰りも順調に行って10時間はかかるので、あまり朝のんびりとはしてられない。朝、ラッシュ時にあたったせいか土佐電鉄と並走することもあった。南国ICから高速に乗り徳島道で徳島市街へ向かう。徳島道路はほとんど対面通行で、途中工事中のため片側通行規制もかかっていた。高速道路では初めての体験だ。昨日は足摺岬へ遠征したので、途中徳島で給油しておくことにしたが、それにしてもガスの高騰ぶりは気掛かりでならない。
明石海峡大橋
淡路島は思ったより大きかった。最後のPAで休憩をして明石海峡の様子を見ておく。とても素晴らしい景色だった。その後、本州へ渡ったあとの阪神高速も初めての体験だったが、殺気立った走りっぷりは首都高速とほとんど変わらなかった。名神高速の途中で工事渋滞していたが、幸いにも大きな渋滞もなく帰ってくることができた。最後に箱根を越えるあたりで大雨に見舞われ、少し疲労を感じたが、どうしようもない程の疲労でもなかった。大阪は何回か往復したので、体が距離感を覚えていたが、今回はいい経験になったかもしれない。
土佐電気鉄道