■旅日誌
[2007/3] 天草・五島
(記:2007/5/20 改:2021/8/14)
(記:2007/5/20 改:2021/8/14)
大きく休みをとって八重山めぐりしたところで十分満足感を得ることはできましたが、途中仕事の都合で連休は中断。でも、休みはまだ残っていたので急遽2度目のお出掛けを組むことにしました。久しぶりの寝台特急に乗って九州へ渡り、空港めぐりの数を増やしに、難易度が高くて残ってた2つの空港に足を運んできました。
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0日目
前回の八重山で十分達成感(?)はあったが、連休を中断する形でどうしても仕事を入れなくてはならなくなり、2日ばかり会社モードに入ってしまった。で、今回はその2日目の晩にもう一度出発するところから始まる。ということで、世の中的には今日は普通の平日だが、自分は休日モードへ気分を入れ替える。18時の出発に間に合わせるようにして東京駅へ向かい、はやぶさ・富士号の入線を待つ。思えば寂しいもので、東京を起点とする九州夜行で唯一残っているのがこの列車である。多少そわそわしながら待ってると、赤い電機機関車に引かれ列車が入ってきた。この列車に乗るのも去年の8月に上りの富士号に乗ったとき以来である。都会の喧騒をよそに、優越感に浸りながら東京駅を定刻で出発する。(後日談:そのはやぶさ・富士号ですが、2009年3月のダイヤ改正で引退、長きにわたる歴史に終止符が打たれました。最後の惜別乗車の様子はこちらをご覧ください。)
1日目
前回の富士号はシングルDXを奮発してしまったが、今回はソロタイプのB個室である。それでも一晩過ごすには十分な空間だった。翌朝の放送再開で目を覚まし、しばらくぼんやりしながら過ごす。朝食を済ませ、下関で機関車の付け替え作業をみて、関門トンネルを抜けると門司駅ではやぶさと富士に分割される。九州を行くためにここでもう一度、機関車が交換される。列車は定刻どおりに進んでいくものの、途中他の特急に追いつかれたりもする。お昼過ぎ、無事に熊本までやってきた。
熊本からは長距離バスに乗り継いで、天草方面を目指す。熊本駅は街の中心部から外れたところに位置している典型的なパターンともいえる。なので、バスの起点は駅ではなく、途中から乗り込むような形になる。市街を抜け、しばらく工事中の九州新幹線の橋脚が続いたあと、右に曲がり三角方面へと向かう。有明湾沿いに出ると、しばらく三角線と併走していくことになる。かなり昔のことではあるが、一度来たことがあるので何となく見覚えのある風景が続く。三角を越え、どのあたりまできたのだろうか、バスは一旦休憩をとる形となる。外へ出てみたものの、営業所の近くには何もない(後日談:その後、天草・三角を再訪する機会がありました。そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
熊本県でもこちらの方はいくつか島が入り組んでいて、海岸沿いの地形はやや複雑なものになっている。天草五橋と呼ばれる橋を次々と通っていき、最後に本渡瀬戸歩道橋の昇開橋を左手に見ながら天草瀬戸大橋を渡る。市町村合併で天草市が誕生したが、バス停はこれまでの本渡市役所という名称のままだった。いろいろと見て回りたい気もするのだが、今回はタイミングがよすぎてほとんど素通りの予定でいる。ここでバスを降りてから、一旦千人塚、殉教公園へまわり、祗園橋を経由して天草バスセンターへと戻ってきた。時間にして一時間くらい、ちょっと散歩した程度である。乗り継ぎとなるバスターミナルは、地方の都市によく見られるようなバスの発着場で、建物は新しい様子だった。ところが、中の売店が今日限りでお店をたたんでしまうという。最近、こういったパターンが非常に多いように思うが、暗い話題に何となくあまりいい気はしない。空港へ向かうバスも結局貸切状態で、何とも寂しい限りである。
天草空港は新しい空港ではあるが、福岡や熊本を結ぶ路線がわずかばかりあるだけでこじんまりとしていた。運航しているのは地元出資の第三セクターである天草エアーラインのみ、それも所有する機材はQ100が1機だけと、かなりローカルな色合いが強い。(余談:高知空港のQ400の事故をきっかけに総点検のお達しが出てましたが、その後タイミング悪くトラブル続きで有名になってしまいました。)チケットを購入し、この静かな建物の中で熊本からの到着便を待つことにした。次の目的地は福岡で所要時間はおよそ35分、陸路ならどんなに頑張っても1、2時間で行けるような場所ではない。飛行機はこの上ない便利な乗り物ではあるが、果たしてコスト的に見合っているのかどうかはよく分からない。
機体にはイルカをあしらったイラストが描かれており、ぱっと見、独特のデザインが目を引く。RACのダッシュエイトには先日乗ったばかりで、狭い機内もすっかり慣れっこになっている。思ったより利用者は多く、空席はほとんど見当たらない。福岡行きは定刻で天草を飛び立ち、さっき通ってきた海岸線のうえを行く。まもなく福岡というところで、最後の脊振山地越えで揺れが強くなってきた。小さい飛行機はこれがあるから怖い。思えば、空路福岡へ来たのは何年ぶりだろうか、玄界灘へ出て海側からのアプローチとなった。福岡は今日の最終目的地ではないので、ここからさらに乗り継いでいくことになる。(後日談:その後、AMXに乗って天草へ再訪する機会がありました。そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。さらに、2代目みぞか号に乗ったときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
今回はここまでほとんど移動に時間をかけてしまっているが、これで最後、五島福江行きに乗り換える。福岡空港は分かりづらいところだという記憶しかないのだが、ローカル路線同士の乗り換えということもあり迷わずに済んだ。これから乗るのANA便のダッシュエイトQ400は、例の高知空港で事故を起こしたのとまったくの同型機である。頭では分かっているつもりでも、どこか気持ち的に割り切れない感じがする。そこは承知してのことだが、まぁとにかく先へ進まないことにはしょうがない。厳密には先日事故を起こしたオペレーション会社(エアーセントラル)とは違うのだがは、A-netのロゴの入った真新しい機体は不気味に思えてならない。などと悪口ばかり書いてしまったが、スマートな青い機体のQ400に乗るのは実は初めてのように思う。
福岡を飛び立ち、雲が途切れて下の様子が見えたときはもう既に海の上だった。飛行時間はおおよそ40分、日は徐々に西に傾きかけている。やがて大小さまざまな島が見えてくると、そこはもう五島列島である。福江は五島列島の中で一番大きな街で、地図をみると九州のはるか西に位置している。その福江の空の玄関口は五島福江空港である。着陸する際にドスンとかなり強い衝撃を感じ、きゃぁっと思わず機内に声が上がる。おいおい、勘弁してくれよ。
2日目
どちらかというと今回も思いつきで来てしまったので、あまりいいスケジュールは立てられていない。帰りの便の出発が11時と多少時間があるので、欲をかいて3時間だけレンタカーを借りて、島の西の端まで行ってみることにした。いまいる福江島が五島列島の中でも一番大きい島で、また一番西に位置している。その島の最西端には見晴らしのいい場所があるというので、とりあえず行くだけ行ってみようと思っている。島を横切る山間の道をひたすら走り、先を目指す。土曜の早朝、こんなところを走ってる車はほとんどない。やがて海が見えてくると、リアス式の海岸沿いに道は続いていた。この道も一応国道なのだが、道幅は非常に狭くすれ違いもままならない。そんな感じで道はくねくねと続いており、存分に景色を楽しむ…といったような余裕はなかった。そんな感じでしばらく進み、大瀬崎方面へ入るところまでやって来た。
ここからも道は海沿いに続いていた。最後に大瀬崎灯台を見下ろす展望台に向かう道に入る。その先は山登りの急坂へと変わるため、アクセルはベタ踏み状態、非力な軽自動車はどんどんと速度が下がっていく。そんなことなどお構いないしにしばらく上っていくと、最後に展望台がある場所へとやってきた。ここから見る大瀬崎灯台の景色は圧巻だと言われていたが、すがすがしい朝の空気の中、確かにその様子は息を飲むばかりだった。一見の価値ありと言われるだけに、やはり無理してでもきてよかった。頭の中を空っぽにして、何時間でもボーっとしていたかったが、帰りのこともあるので思い切って去ることを考えなければならない。海沿いの国道で島の南側を行ってもよかったが、どれくらい時間がかかるのかよく分からなかったので、島を突っ切る別の道路で戻ることにする。
折角なので、大瀬崎から戻る途中にある井持浦天主堂へ立ち寄ってみよう。五島列島にも長崎県らしくこのような教会がいくつもあり、敬虔なクリスチャンでなくても見てるだけでそんな気分になってくるから不思議なものだ。まだ時間に余裕のあるうちに福江市街へ戻ってくることはできたが、ガソリンスタンドも探さなければならないので、一旦福江港に出てから車を返すことにする。やはり時間を掛けてゆっくり回るべきだなぁ~などと考えていると、突然携帯がポケットの中でブルっとし出した。まさかこのタイミングで呼び出しもあるまいと思いながらも、条件反射的に会社のことを考えてしまうのはやや悲しい気もするが、会社の携帯は右のポケット、いま震えてるのは左のポケットなので個人持ちの方である。車を止めてみると見慣れない番号が表示されていたが、ワン切りでもなさそうなのでTELに出てみると、なんと西表島のレンタカー屋だった。そういえばあのとき、予約してあるのに見当たらない…などと訳の分からないやり取りをしていたが、そうか予約した日が間違われていたようだった。先方も事情が理解できたようで、そのまま電話を切りこの車を返すことにした。
時計を見るとちょうどいい時間で、空港まで送ってもらう。帰りは長崎行きのORC便を予約してある。オリエンタル・エアブリッジを利用するのももちろん初めてだが、ちょうど一年前、上五島、小値賀便が廃止されたのはまだ記憶に新しい。まだあのときは、本気になって空港訪問…なんてバカなことを考えていなかったので、いま思うと惜しい気もしないでもない。そんなことを思いながら、昨日のAMX、ANAと同シリーズのダッシュエイト・Q200に乗って長崎へ向かうことになった。福江を飛び立つと、青い海に多くの島々が見えてきた。快晴の穏やかな空を進み、やがて大村湾へと差し掛かる。離陸からおよそ30分、長崎空港へランディングとなった。
今日はバタバタしたわりにまだお昼前である。ここで素直に乗り継いで羽田に帰るのもちょっともったいない気もするので、陸路しばらく移動することを考える。空港で昼食を済ませ、直通バスで長崎駅へと向かう。しばらく高速道路を飛ばして行き、最後にトンネルを抜けるとそこはほぼ長崎の中心部である。山に囲まれた狭いところに街ができているのをこんなところからも感じとることができる。駅に到着しそそくさと切符を購入し、次のかもめでまずは博多へ移動することにする。快晴のいい天気が続き、乗り心地は言うまでもなく、諫早湾の景色もまた格別だ。こんな列車旅も悪くないなぁなど考えながら、快適な時間はあっと過ぎていき、博多に着いたその足でそのまま新幹線に乗り継いで小倉へと向かう。
小倉へ出てきたのもあまり意味はなく、理由はただひとつ、単に新しい北九州空港へ寄ってみたかっただけのことである。午後はずっと余裕があったので、あまり時間は気にせず、とりえず来たバスに乗って空港へ向かうことにする。昔の北九州空港へは以前来たことがあり、時限付きという条件もあって拡張されることもなく、周囲は宅地に囲まれかなり苦しい運用だったが、新しい空港は24時間使える海上空港と見違えるほど立派なものになっていた。九州の空の玄関口は福岡であることには変わらないが、新幹線との競争も激化することは想像に容易い。そこを見越して新しい航空会社の参入もあって、ドラマのロケに使われたりと、何かと話題になったところでもある。
連絡バスはしばらくモノレールの下を行ったあと、高速道路に入っていく。最後に空港へ通じる橋を渡るとそこには見違えるほど大きな空港があった。駐車場もこの上なく立派である。建物の中の空間も余裕があって、とても地方空港とは思えないつくりだ。あとひとつ、メーテルの人形による案内というのも気になったのだが、今日は調整中とご機嫌ななめとのこと。機械の体は相性がよくないらしい。と、そんなことは放っておいて、今回はその新しい航空会社、スターフライヤーを利用してみることにしていた。自動チェックイン機でチケットを購入すると、ANAの説明がそのまま出てくるのもご愛嬌、実はANAとコードシェア便を飛ばすことも検討されてるという。直接競合する路線がないこと、JALにはないA320のオペレータだということ、航空券の発券システムをそのまま流用してることなど、もともとANAとの繋がりが強かったので、ある意味自然な流れのようである。時間の余裕をみて一便落として予約を入れていたので、周防灘をバックにそのひとつ前の便が出て行くのをしばらく眺める。見慣れない黒い機体が何とも印象的である。やがて日も傾き食事を済ませ、ようやく予約してあった便に乗り込むことになった。山口宇部の管制下にあるため、あちらの出発を待ってから離陸することになった。総革張りのシートは、ピッチも広く乗り心地はなかなかである。もし北九州へ頻繁に来るのなら間違えなく選択肢に入るなと思った。