■旅日誌
[2006/2] トリプルA(エース)で行こう!
(記:2006/2/25 改:2015/11/21)
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この時期まったくお出掛けする予定はなかったのですが、前回12月同様思い切ってお休みをとって遠出することにしました。お休みといっても普通に土日休むだけです。乗りつぶしという意味では春先の新線開業はとても気になるところだし、そもそも真冬の一番寒い時期に遠出して雪か何かで足止めくらうのも困りものです。ただ、出雲の引退や日本海1/4号の縮小を考えると、去年のあさかぜようにお別れ乗車も頭を過ぎりましたが、いかんせん準備不足でどうにもなりません。だからといってつぎ確実に休めるのも分からず悶々とするのも辛かったので今回はなぜか奮発してちょっと贅沢気分を味わうことにしました。タイトルにあるように三者三様のエースの登場です。ちなみに、出雲のさよなら乗車は1ヶ月後に決行してます。
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 1日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
京都、大原、比叡山・延暦寺、坂本、あかつき
いつものように許された時間は2日間である。ここ数年の暖冬傾向を考えるとこの冬の厳しさは記録的で、行き先を間違えるとそれこそ足止めを喰らう心配もある。ところで、JALのクラスJに対抗して、ANAもB767クラスを中心にプラスαでワンランク上のシートを提供する作戦を展開しはじめた。先日、そのアップグレードキャンペーンに当たったとかで通知が届いていた。そんなことなど忘れかけてたときに、たまたま見かけたページでANAのある路線には国際線の機材(B747)が就航しそのプレミアムシートにはファーストクラスの座席が充てられてることが紹介されていた。キャンペーンの有効期限は3月末まで、当選案内が来たときはそう急に言われても飛行機なんて乗らないしなぁ…くらいにしか考えてなかったが、今回は思い立ったら何とやらで、すかさず長崎-東京便の予約を入れてしまった。
東海道新幹線・のぞみ
購入手続きを済ませ事務局にTELしてみるとキャンペーンはB767拡大記念のものなので、長崎線でもB747の便はNGだと告げられた。期待してた分、正直ちょっとがっかりした。それでも一度揺らいだ気持ちは収まるわけもなく、結局正規運賃で予約を差し替えることにした。ただキャンペーンの内容にどうも納得がいかないのでANAのページから質問を投げてみたところ、手順のミスであることがメールで案内されてきた。もしかしたらクレーム対応の特別処置だったのかもしれないが、差額の払い戻しと手数料を還元してくれることになった。これまでも何かとANAとは相性が悪く、細かいことはガマンしてきたが、とりあえず言ってみるべきなのかもしれない。
大原・三千院
そんなわけで目的地は長崎と決まった。長崎近辺は結構押さえてたつもりなのでどこに行くか迷ったが、その結果どうなったかはまたあとで書くとしよう。滞在時間と移動のタイミングを考慮し、まずは飛行機の利用は帰路と決める。さらにどこで一泊するかを考えてみたものの、既に夜行を利用することしか頭の中にはない。(苦笑) もう今ではさくらは叶わぬ選択肢なので、必然的にあかつきが候補にあがる。帰りのスーパーシートとバランスをとるためにもここは奮発してA寝台個室しかない。後先考えずに予約に走ると、2週間前の時点でなんとシングルDXは満席とのこと。盛況なのはそれ自体喜ばしいことだが、ピンポイントでもらったチャンスが活かせないとなると妙に悔しい。仕方なく大阪あたりで途中寄り道するとして、夜に福岡入りするスケジュールを考えてみた。それでも諦め切れず、ダメ元で5日前にトライしてみるとこんどは残席が7つあるという。すかさず予約を入れたのは言うまでもない。前回は操作ミスでもしてたのだろうか?
大原・三千院
あかつきに乗るということから、経由地は京都と決まった。京都なら新幹線でひとっ飛びして時間を有効に活用することを考えたい。さらにここでも何かに引かれるようにグリーン車を予約してしまう。根が貧乏性なのでこれまで新幹線のグリーン車なんて考えも及ばなかったが、スーパーシートからトントントンと勢い余った感じだ。というわけで、一泊二日にしてはあまりにも贅沢なエース3本柱の投入となった。もちろん、ここでコストパフォーマンスなんて野暮なことを考えてはいけない。(笑) さて、出発当日はとても寒い朝だった。週末にかけてまた寒波がやってくるらしい。米原付近降雪のため遅れ見込み20分、と既に案内が出ている。今日は新横浜から新幹線に乗る。2、3本見送って予約したのぞみに乗り込む。最初のエース=グリーン車の印象は、やっぱりゆったりしてるなぁ、といったところか。前の方の座席には年配の男性の団体さんがいて、意外にも賑やかだった。おしぼりのサービスがあったが、それ以上に気が引けるほど丁重なサービスがあるわけでもない。まぁ放ったらかしてくれておいた方がいいのだが。やや雲がかかっていたものの、新幹線から富士山の姿を拝めたのは久しぶりのような気がする。海側の席だったので、静岡を出た先で唯一太平洋側の窓から富士山が見えるポイントを確認してみる。安倍川を渡ったあたりだろうか、"幸せの富士"とはよく言ったものだ。
大原・三千院
前回車で通った岐阜羽島あたりから、車窓は雪雲が流れるようになってきた。急に減速したかと思ったらあたりは一変して銀世界になってしまう。ゴツンゴツンと雪を跳ね上げながら走っているのはあまり気分のいいものではない。吹雪のような中、米原駅を通過すると、意外にも天気の回復は早く、京都へは5分遅れでの到着となった。快適なグリーン車の旅も2時間ちょいではもったいない気もする。ホームへ出るとちらちらと風花が舞っており、東よりもぐんと気温が低いことが分かる。思えば冬の京都というのも経験したことがなく、そんなわけで今回の行き先は大原と決めていた。いつものように単なる思いつきである。駅の外へ出て京都タワーの目の前のバス停で待つものの、目的のバス=17系統はなかなか姿を見せない。20分に1本の割で出てるにもかかわらず、30分待ったところでようやくやってきた。バスは満員のまま四条河原町を経由し、しばらく鴨川沿いに洛北へと向かう。
叡山ケーブル
終点の大原で降りるとまさに雪の中の世界だった。遅れたバスの真後ろをいつの間にか空の状態で次の便が追いついていた。乾いた雪がちらつく中、おぼつかない足取りで参道を進む。お店も雪に埋もれてる。きーんと顔を突き刺す寒さで別世界へやってきたことを実感する。やがて三千院の山門へ出てきた。まさしく冬の京都風情だ。拝観料をお納めして、早速中へ入ることにしよう。建物へ入るために靴を脱ぐと、つま先からじんわりと冷たさが伝わってくる。ぼんやりしながら見学を続け、ふと外を眺めても、こんこんと雪は降り続いている。写真にみる手入れの行き届いたもすっかり雪風景で白い世界が広がっていた。雪をバックに景色建物の写真を撮る人は多く、まるで別世界へ飛び込んでしまった感じだ。さらに奥に進み、有名なあの小さなお地蔵さんや赤色の建物を観てまわる。寒さは厳しかったが、不思議な清々しい気分にさせてもらった。休憩所に入ると何とか茶とかいうのがサービスされ、湯のみ茶碗の熱が冷え切った手にじーんと伝わってきた。
叡山ロープウェー
折角ここまで来たので寂光院へも行ってみようかと思ったが、雪が強くなってきたのでとりあえず食事をすることにした。バス乗り場へ戻る途中、そこらへぷらっと入ってみる。お店の人のおすすめにまかせしばらく待つと、かやくご飯と湯豆腐とあといくつか小鉢が運ばれてきた。湯豆腐は旅館で出てくる固形燃料を使ったお鍋で、ぐつぐつとそのまま温まるのを待つ。付け合せの柴漬けも地のもので、スーパーで売ってるような真っ赤な下品なものともまったく違う。あぁ、何とも至福のときである。次のバスの時間に合わせるようにして店を出る。心なしか雪は弱くなってきていた。これだけでももう十分冬の京都を満喫できた。大原のバス停から行きと同じ系統で八瀬駅前まで下りてくる。それほど距離はないものの雪はほとんど残っていない。叡電八瀬駅を通ってケーブルカー乗り場へと向かう。ここから比叡山をめざすことにする。山頂を経由して今日はその先の延暦寺へ向かい、坂本へ抜けるルートを考えていた。通しでふたつのケーブルカーを利用することになるが、この時期このルートをたどるのはよっぽどの物好きでしかない。
比叡山・琵琶湖
八瀬ケーブル乗り場で切符を買おうとすると、上では延暦寺に抜けるのか質問される。バスは走ってないし、時間的に山門も閉まってしまうが大丈夫か?と念押しされた。もちろんそれは承知している。実は叡山ケーブル坂本ケーブルも高校生のときに修学旅行で今日と同じルートをたどったことがあったのだが、そんな昔のことははっきりとは覚えていない。確かその日は自由行動で延暦寺にも立ち寄ったはずだが…。遠い記憶に思いを馳せながらひとり貸切状態で出発を待っていると、男子学生ふたりが乗り込んできた。小学生のようにはしゃいでいるが、その気持ちもよくわかる。自分も加わりたいくらいだ。結局最後まで例の学生は乗務員と話に華を咲かせていた。ここのケーブルも初乗ではないのだが、ほとんど記憶にないのでひとつ乗りつぶしをしたような気分だった。ケーブルの駅にとどまっていても仕方ないのですぐにロープウェイに乗り換えることにする。ケーブルカーの到着にタイミングを合わせ出発し、高度を上げていくとその下は本当に別世界が広がっていた。ところどころ低い雪雲が煙っているものの、上空の天気はそんなに悪くない。今度は乗務員もいないゴンドラだが、例の学生は相変わらず小興奮状態だった。自分も窓を開けて、わぁーーっと思いっきり大声を発したいくらいだった。
延暦寺
ゴンドラはゆっくりと終点の比叡山上駅に到着した。明らかに空気は凍っている。階段状の足元には滑り止めが敷かれていたが、それでも滑りそうで怖い。あらためて下界を見下ろしてみると、寒さと高さでぞくぞくっとくるものを感じる。とりあえずバス停があるところまでは歩いて行かなければならない。山道は新雪が積もったままで、さく、さくっとした踏み心地が何ともいえない。先ほどの学生は先に行ってしまったが、それでもまったく人が通らないわけでもない。途中左に分かれて30分ほど降りていけば延暦寺に向かうことができるのだが、今日の雪の状態を考えるとやめておくのが賢明のようだ。ゆっくり確かめるようにして山道を進みバス停のあるところへ出てきた。この先は比叡山ドライブウェイとなって延暦寺まで続いているのだが、車専用の道路なので歩行者は通ることができない。踏み荒らされてない新雪の真ん中を突っ切って展望台へ向かうと琵琶湖を見渡すことができる。これまた例えようのない絶景である。先ほどの学生は先にここまで来ていたようで、相変わらずテンションは高いままだった。「四条から1時間でこれだぜ、信じられるか?今日のことは一生忘れね~よな!!」というのは正直な気持ちだと思う。そこらに積もった雪が時折強い風に舞い上げられあたりを覆う。幸いにも、急に天気が変わるようなこともなく助かった。寒さも忘れるくらい、しばらくこの風景に見入ってしまった。この時期ガーデンミュージアムは閉館、シャトルバスも運休してるのだが、わずかばかりの路線バスにタイミングを合わせ、先へ進むことにした。
ケーブル比叡山駅
道路メンテナンスの車が2台、凍結防止剤を撒きながら山上へやってきた。車の後ろには大きな木の枝を引きずっている。日に3本しかない路線バスは時間ちょうどにやってきた。これを逃すともう後はない。もし取り残されたら、遭難するかもしれない。(笑) 10分ぴったり待たされ出発となる。だらだらと続く下り坂はところどころ路面が凍結しており、エンジンブレーキを最大限に利かせて本当にゆっくりと下りていく。遠く琵琶湖の景色を見ながら5分ほどして延暦寺バスセンターへと到着する。ここまで貸切であったことは言うまでもないが、ここで降りていくのもちょっと不自然な行動かもしれない。このバスは京都行きで、延暦寺から乗り込む人はそれなりにいたようだった。京都駅で買った1000円のカードをちょうどぴったり使い切り、運転手からは足元に気をつけるよう言葉をかけられる。本当につるつるしていて、スケートリンクのように凍結していた。冬場なので延暦寺の拝観時間は繰り上げられており、今日は建物の中まで入ることはできなかった。仕方ないので外から建物を観るだけにとどめ、坂本ケーブルへと歩いて向かうことにした。そのケーブルカーも最終17時とあまり時間がない。日は傾き薄暗くなった雪道を足元に注意しながら進んでいく。
坂本ケーブル
坂本ケーブルはどことなくレトロで、なかなか雰囲気のある場所だった。切符を買い求め一旦外へ出ると、ここでも琵琶湖の雄大な景色を拝み見ることができる。この景色も今日これが最後となる。坂本ケーブルは日本一距離の長いケーブルで、実際乗ってみるとスケールが違うことがよく分かる。延暦寺の拝観はできなかったが、ちょうど計算通り比叡山縦走ができたのは天気にも恵まれたおかげで、運がよかったと思う。ケーブル坂本駅へ着いたときはもう夜がそこまでやって来ていた。日は落ちて気温もよりいっそう下がってきている。あとは比叡山坂本駅へ向かうだけなのだが、時間があれば日吉大社へも寄ってみたいと思った。大きな鳥居とその先の山裾は寒々として、それはそれで絵になる風景だ。ここ坂本へは以前も寄ったことがあったが、雰囲気があって何度来てもいい場所だと思った。京阪の駅の前を通り、おのずと足早になって比叡山坂本駅へと向かっていた。
坂本
ホームに上がり遠くに目を向けると夕闇のなか、かすかに琵琶湖が見える。すぐにやってきたのは湖西線から直通する新快速だった。今日一日のんびりペースだったので、このスピードには妙な違和感を覚える。あっという間に京都へと到着し、まずは今晩の食料の調達にあたる。彗星に乗ったときの記憶がよみがえる。入線まではまだまだ時間はあるものの、外はとても寒そうなので建物の中にいることにした。ところで北陸本線のダイヤはボロボロになった模様で、雪まみれのまま何時間も遅れてやってきたサンダーバードも時間調整とへばりついた雪剥がしのため停まっており、仕方なく新快速などに乗り換える人の表情はどことなく疲れ切っている様子だった。日本海の運休も早々に決定し、今夜のお宿はそちらにしなくて正解だった。
あかつき・なは
入線時間になり東京側からあかつき・なは号が入ってきた。乗客の姿もまばらで何か物悲しいが、前回の彗星のときと同様ブルートレインであることを誇示してるかのように思えた。なんとなく周囲の様子を見てから、指定された車両に乗り込む。年季の入った部屋だが今晩はこの快適な空間で過ごすことができる。A寝台個室という響きには、やはり何かわくわくさせられる。通りかかった車掌からトラベルグッズとルームキー、シャワーカードを受け取る。この編成のシングルDXはシャワー施設が利用できるのが特権だ。やがて定刻にあかつき・なは号は京都駅を出発した。流れ行く夜景をおかずに先ほど半額で買った2000円の高級弁当を味わうことにしよう。いやぁこの満足感は何と例えたらいいだろうか。明石海峡大橋の案内が入ったあと、シャワーを浴びて今日は早めに就寝することにした。暖房の利きがあまりよくないが、毛布に包まってしまえばなんら問題はない。さすがにこの日はあっという間に眠りに落ちてしまった。
あかつき・なは
 2日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
長崎、大串、西海橋、佐世保
関門トンネルの騒音で一瞬目を覚ましたものの、次に気がついたときは鳥栖駅でなは号を切り離したあとだった。すっかり熟睡し切ってしまったようだ。身支度を整え佐賀を出たところで朝食にする。車内販売もないので、こんども昨日京都で仕入れたお弁当である。まったりしながら朝食を済ませ、編成の後ろの方へと移動してみる。開放型のB寝台も上段の利用があり、まぁそこそこの利用率ではないだろうか。もう途中下車してしまったかもしれないが、レガートシートには本当に人がいなかった。個室の窓は進行方向右側にあるので、談話室で有明海を見ながらしばし過ごすことにした。誰にも邪魔されず貸切状態のまま、しばらくそこにいた。諫早でもさらに人が降りていくが、ホームには次のかもめを待つ人が列を作っている。あかつき号は最後になって逃げ切れず、後からくるかもめに追い抜かれてしまう。2つの列車が分割されてしまったので編成は短くなり、朝日を受けてできる影もどことなく寂しい。長崎へ乗り入れる夜行列車もこのあかつきだけになってしまったが、細々でもいいからこれからも残してもらいたいものである。
あかつき
あかつきは定刻で長崎駅へ到着した。最後の放送で「長時間に渡るブルートレインの長旅はいかがでしたでしょうか?」といったようなアナウンスが入った。気の利いた名調子に、逆に寂寥感を覚える。大半は寝て過ごしていたとはいえ、13時間弱はあっという間だった。到着するとすぐに引き上げのためにDEが入ってきた。慌しく作業は行われ、余韻にひたるヒマもない。今日これからはバスでの移動なのだが、タイミングが悪くあと2時間近く余裕がある。往路の割引率を計算して周遊きっぷを作っていたこともあり、片道長与まわりで諫早を往復してみることにした。直前に出て行った佐世保行きの快速は席が埋まるほど利用者がいたのに、旧線経由のローカル線は日曜の朝のこの時間、とてもがらんとしていた。あれからもう何年経つだろうか、本川内でスイッチバックがあったのでそれも随分昔のことになる。あのときのつらさと今のつらさを天秤にかけてみても、自分はどうすべきだったのか正解を知りたいと思った。
あかつき
朝の大村湾青々と輝いていた。の向こうには空港の姿も見ることができる。小型の飛行機が上空を通り過ぎていった。諫早でハイパーサルーンのかもめを見送り、島原鉄道などもちらっと見ながら、次のかもめを待つ。やってきた車両のロゴを見るとSONICと入っている。大分のときと逆になるなるが、まぁご愛嬌といったところだろうか。先ほどあかつきで通ったばかりなのだが、明らかにスピード感が違う。快適性が追求された結果生まれた車両であるが、夜行で長時間過ごすというのとはまったく意味は違う。あっという間だったが、浦上で下車する。
大村湾
浦上駅前からは路面電車で移動する。路面電車は頻繁にやってくるし、何しろ料金が100円ということで市内の移動にはこれ以上便利なものはない。もちろん、観光客だけでなく地元の足としても重要な役割を果たしている。それだけにいつも混雑しており、今日もかなり窮屈な移動であった。長崎駅を通過し、とりあえず出島で下車した。以前、長崎を回ったときは最後に素通りする格好になってしまい、その後もちょっと寄ってみたい気がしていた。とはいうものの、それ程時間もなく何となく、ぼーっと見て回るだけだった。最後にミニチュアのセットを眺めて、ここを後にする。(後日談:その後、長崎を再訪したときの旅日誌はこちらをご覧ください。)
かもめ
長崎新地のバス乗り場を探し、目的のバスが入ってくるのを待つ。近くには中華街があって今日は何やらイベントがあるらしい。バスは定刻に出発し、駅前を経由して市街を抜けていく。長崎線沿いにしばらく進んだあと、時津という場所で大村湾に出てきた。あとは大村湾沿いに北上していくことになる。路線バスは途中国道を離れ、琴海ニュータウンやバイオパークなど立ち寄るのだが、脇に入ってかなり奥まで進んでそのままUターンして戻ってくるというのを3回ほど繰り返すことになった。漁港のそれも船が停泊してるすぐ脇の一般道ではないようなところをバスは進み引き返してくるといった場面もあり、地方の交通事情に触れるいい機会だったかもしれない。そんなことにもきょろきょろしながら終点の大串へと到着し、しばらく乗り継ぎの便を待つことにする。
長崎電気軌道
あと30分は待たなければならないが、日に数本しかないのでこれでも接続はいい方である。ここから先は全国時刻表にも載ってない路線で、運よく探し当てた感じだった。時間があるのでしばらくあたりをうろつく。ゲートボールに興じるご老人たち、入り江のようになった、折り返しのために停留しているバス、だからといって面白いものでもないが、何となく時間をつぶす。次の目的地は西海橋で、バスで10分強の距離のところある。そんなに遠くもないが、地図を見ても分かるように歩いて行ける距離ではなさそうだ。
大村湾
西海橋は大村湾と佐世保湾の境のところに架かった橋で、湾の幅が極端に狭くなり潮の流れがとても速い場所である。時折渦潮も見られ、春には桜が咲き誇るなかなか風光明媚なところだ。一旦を渡り、東側の公園へやってきた。ちょっと離れたところへ移動しの姿を眺め見ることにする。とても均整のとれた美しい姿をしていた。もうひとつ有料道路のための橋が建設されており、そちらは1ヶ月後の3月に開通することを後から知った。は歩いて渡ることもできるので、さっそくチャレンジしてみる。路肩は狭く、車も頻繁に通るのでちょっと怖いが、橋の上から眺める景色はスリルもあってまた格別である。西側へと渡り切ったところで、あらためて展望台へ登ってみる。ここでも橋の全景を見ることができる。反対の方向の大村湾の眺めもまた素晴らしい。吹き抜ける風はとても冷たいが、しばらくこの風景に見入ってしまったのは言うまでもない。こんなに素晴らしい場所が自分の知らないところにまだまだあるのかと、あらためて思った。
西海橋
小腹が空いたので、近くで皿うどんでもためすことにした。ボリュームもあり、何よりあったかい食べ物というのがありがたい。残された時間がほとんどなくなってきたが、通りの向こう側にあるお土産を売ってる場所へと足を向けてみる。大きないけすに取り巻く人々、威勢のいい掛け声とともに地元の魚介類などが売られ、なかなか盛況で活気があっていい。バイキング形式で様々な料理が食べ放題というのも、ちょっと引かれるものがあった。時間ギリギリになってバス停へ出てくると、向こうに止まっていた折り返しのバスがちょうどこちらに向かってくるところだった。あらためてバスでを渡ると何となく帰路に着いた気分になり、旅の終焉にくるあの独特の寂しさが過ぎる。そのままバスは何事もなかったかのように、佐世保へと向かっていた。早岐までやってくると車の量も増え、都会の賑やかさが戻ってくる。大村線沿いに北上し、佐世保駅前でバスを降りた。
西海橋
浦島太郎ではないが、佐世保駅は驚くほど立派になっていた。周遊きっぷが使える範囲なのでここからは大村線で移動する。高架の駅へと入り、行き交う列車をしばらく眺める。特急列車松浦鉄道のローカル線などが行き来している。日も西に傾きかけ快速シーサイドライナーは発車となった。ちょうど行き違いで国鉄色のキハが入ってきたのを確かめ、佐世保駅を後にする。先ほどバスで通ったところをしばらくいくと、あの有名な通販会社の社屋を見ることができる。
大村線
ハウステンボスを通過すると大村線大村湾沿いに南下していくことになる。ここの夕陽の景色はとても有名で、今日も何となくいい時間帯に通過することになった。この時間になってやや雲は出てきたものの、しばらく夕景を眺めることができた。この風景を見ていると、悲しいかな、さらにまた感傷的な気分が増してきた。列車で通り過ぎてしまうのがとても惜しく思う。
大村線からみた夕景
今日は大村駅で列車を降りることにしていた。快速列車の後姿を見送りをあとにする。大村から空港行きのバスが出ているのだが、乗り場がどこなのかよく分からない。大きな荷物を持った人が2人程走っていったので後を追ってみる。するとちょうどバスが発車するところで、ギリギリ乗り込むことができた。あと30分すれば次のバスは来るのだが、何となく明るいうちに空港まで行っておきたかった。バスはしばらくして空港への連絡橋を渡る。最近では海上空港も珍しくなくなったが、ここ長崎空港はそのはしりだということを後から知った。あっという間に日は落ちてしまい、お土産屋などを一通りみてから展望デッキへと出てみた。昨日、今日と気温が低いのに慣れてしまったせいか、この海風もそれ程苦にならない。離陸・着陸を何便か見て時間をつぶし、自分が乗る飛行機も外から見ておくことにした。国際線仕様のジャンボ機はこの空港でも存在感を示していた。
大村線
ここまで順調にスケジュールをこなしてきたが、大げさにいうと残った1時間半が最後のクライマックスということになる。優先搭乗で乗り込みあらためてファーストクラスのシートを目の前にすると、確かに贅沢な気分になった。最新鋭の機種ではないにしろ国際線スリークラス仕様のクラスF、正真正銘のフルフラットシートである。前後2メータは空間があるだろうか、こんな席を利用するなんて、やっぱり普段では絶対にあり得ないぞ!!(爆) 15席あるプレミアムシートは満席で、普通席の方も満席に近い様子である。(余談:ちなみにクラスC=ビジネスクラスは何と一般席扱いです。エコノミー(クラスY)料金=普通運賃ですが、もちろん席の予約は早い者勝ちです。これまた違う意味で乗り得と言えるでしょう。)当たり前だが、航行位置を示すディスプレイも国際線のもので、地図上の日本列島が小さく見える。もちろん、長崎は「NAGASAKI」と表記されている。飛行機は定刻に離陸し、水平飛行になったところで飲み物と食事のサービスが始まった。食事といってもやや軽めのお弁当だが、それでもメニューは凝っており、椀のものまでしっかりついてくる。CAの配置やサーブの段取りなど、国際線と同等のようにもみえる。もっと時間とお金があれば…。普段飛行機でアルコール類を口にすることはないが、折角なのでちょっと試したりもする。すっかり気分もよくなり、お決まりで席をフラットに倒して遊んだりしてるうちに、もう着陸体勢の時間になってしまった。う~ん、これは非常に名残惜しい。
長崎空港
羽田に降り立ったのも定刻、何しろ一泊二日の強行軍だったので無事スケジュールを消化できてよかった。そんなことにはお構いなしに、明日からまたすさんだ生活が待っている。雑踏の中、できることなら家路につくこの状況から更に逃げ出したい気分になっていた。ここ2日で潤いだ気分は何時間持つことやら…。
ANA・NH670便・羽田行き