■旅日誌
[2011/2] The Final Touch Down in GUAM
(記:2011/3/14 改:2021/7/10)
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JALのジャンボジェット・B747-400がこの3月に退役しましたが、それを記念しての企画です。この他にも、羽田→札幌→沖縄→羽田と国内をめぐるものや、ハワイ滞在を絡めたものなどもありましたが、こちらは1泊2日で成田-グアムを往復する弾丸ツアーです。内容的には、トークイベントあり、ジャンボ機を使ってのタッチ&ゴーの撮影ありと盛りだくさんの企画、、、ツアーには現役キャプテン数名とプロのカメラマンがアテンドし、またグアムでは地元の警察の強力なバックアップと、非常に充実した2日間を過ごすことができました。
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 1日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
成田国際空港、JL8747、グアム国際空港、ホテルニッコーグアム
前振りの通り、JALを代表するフリートとして世界中を飛び回っていたボーイング747が、この3月にすべて退役することになった。去年、旧世代のクラシクジャンボが退役したのは記憶に新しいところだが、まさかこんなにすぐに次のハイテクジャンボまで引退することになるとは信じがたいものがある。(余談:台湾へ行ったときに偶然クラシックジャンボに乗りましたが、そのときの旅日誌はこちらをご覧ください。)言うまでもなく、JALの経営立て直しのため、燃費の悪いジャンボをダウンサイジングして効率のいい中小型機中心リストラにするというもので、ここへきてそれが早められたとみていい。
B747-400
ところで、最初にこのツアーのことを知ったとき、ネタ満載の内容からら強い興味を覚えたが、正直なところ値段をみて躊躇していた。格安ツアーなら2、3往復できるくらい高価なものだったのだが、とりあえず3日間経っても思いが変わらなければ申し込もうと、一旦冷却期間をおくことにした。結局、その気持ちに変わりはなくオーダーを入れてしまったのだが、1泊2日にしてはかなりの買い物である。まぁ、それでも、土日なので休暇をとらなくていいというのと、目的地のグアムというのが普段の行動パターンから外れ、きっとこれはまたとないチャンスかもしれない…という思いが後押しし、何年かに一度の衝動買いをしてしまった。ツアーの流れとしては、初日は成田からグアムへ渡り夜はたっぷりトークイベント、翌日はグアム国際空港の敷地内へ特別に入れてもらい、実際にジャンボ機を使ってタッチ&ゴーを撮影するというもので、往復の足はもちろんジャンボジェット、、、ツアーにはJALのキャプテンが何名かアテンドし、航空カメラマンとしても高名な伊藤久巳さんが帯同、、、とまぁ、マニア向けにB747の退役を惜しむものになっている。
成田空港
ちょっと早いかな?とは思ったが、はやる気持ちを押さえるように成田へ向かう。時間があったので特急いは乗らない選択肢もあったのだが、楽して行きたい気持ちには勝てず今日もNEXを利用することにした。空港第2ビル駅で下車し、出発ロビーへと向かう。会社の出張でもなく、連休でもないのに成田から出国するというのが、ちょっとまだ不思議な気分だった今回のグアム行きでは、恐らく現金を使う場面はほとんどないと思うのだが、手持ちのドルがまったくないので適当に両替しておくことにした。円高傾向だし、まぁ少し多めに替えておいてもいいだろう。集合場所としてJALの団体ツアーのブースが指定されていたのだが、開いてる窓口が3つしかなく既に長蛇の列ができていた。折角早く来たのに、ただひたすら長時間待つというのは少々苦痛だった。
JAL・JL8747便・グアム行き
ようやく受付手続きを済ませ、緑色の紙に印刷されたeチケットを受け取る。預ける手荷物にはジャンボの形をあしらったイラストのタグが目印として付けられる。搭乗券を発券して、ようやく荷物を預け終えたところで時計を見ると、思ったより随分と時間は経っていた。折角早く来たのに、、、とりあえず、さっさと出国手続きをしてしまおう。チャーター便なのでボードには出てないかな?と思っていたが、あらためて出発便を確認するとJL8747便が「行先=グアム」と表示されていた。セキュリティチェックでもまったく待たされることもなく、出国手続きまで済ませ、指定された61番スポットへ向かう。窓口付近では、明らかにそれっぽい風貌の人たちが取り巻きをつくっていて、行先表示のディスプレイを写真に収めたりしていた。事情を知らない人の目にはちょっと異質に写ったかもしれない。しばらくして制服を姿のスタッフがやって来ると、どこからとなくさぁーっと人が集まり、立派なカメラでパシャパシャと始まった。確かに異様な雰囲気かな、これは…。
JL8747便の機内サービス
出発に向け全ての準備が整ったところで、一旦機内からスタッフが戻ってきて61番スポットの前であらためてから挨拶があった。(余談:後になって振り返れば、この時点では未だスタッフもお客さんの方もどこか緊張気味で硬かったように思います。)フライトを担当するキャプテンとコーパイ以外にも何名かの機長がアテンドするらしい。ジャンボジェットということもあるが、フルチャーターでのツアーなので、CAさんの数もいく分多いようにも思える。相変わらずシャッターの嵐だったが、中にはどこぞの取材らしき姿もあり、こうしてずらーっと並んだ光景を目にすると、何か普通の旅にはない特別なものを予感させる。グランドスッタフの笑顔に見送られボーディングブリッジへ、、、さぁ、何と言っても今回の主役、B747-400とご対面!!と、その前に、搭乗機が見えたところでみな一斉に記念撮影を始める。
JL8747便の機内食
出発の準備の方は淡々と進められ、定刻よりやや遅れてドアクローズ、プッシュバクされながらJL8747便は離陸へ向けて始動を始める。成田の2タミと言えば、ちょっと前までは多くのジャンボ機たちで賑わっていたのに、周囲を見回してもその姿はまったくない。しかし、トーイングカーが離れA滑走路へ向けタキシングしていくと、翼を休めるジャンボたちの姿を目にすることになった。既に役目を終え、売却先が決まったものも多くいるだろう、、、ちょっと複雑な気分である。お決まりごとの安全ガイドが終わると、早速、実況放送のような感じでコックピットからアナウンスが入る。やっぱり、普通のフライトとは違うなぁ~。おっと、シンガポール航空のA380が重たい体を引きずって飛び立っていくぞ…。単純に比べられるものでもないが、こっちのベテラン戦士にだって新参者にはない安心感がある。さぁ、順番がやって来たところでR/W16Rに進入、4機のエンジンが唸りを上げるとぐんぐん加速、悠然とした面持ちで浮上、、、こうして成田を後にした。
JL8747便/JA8088
左手に銚子の岬を見て九十九里の上空を通り過ぎると、あとは太平洋の上をひたすら飛んでいくだけである。思ったより天気はよく、空も海も青々としているのが印象的だった。ベルト着用サインが消灯し、機内は少しずつリラックスムードになってきた。まずは飲み物サービスから始められ、CAさんたちの合間をぬって今回のツアーのメインのホスト役である立花キャプテンが挨拶にまわっていた。やっぱり、飛行機はいいねぇ~などとのんびりしていると、機内食のレシピなるものが配られる。フライングして手をつけないように…とのことだが、とりあえず説明に目を通す。事前にはスペシャルメニューとだけ告知がされていたが、自分たち思い思いに創作してください、ということらしい。完成図をみると、エビフライを中心にしてジャンボのデザインに仕上げるものになっていた。トレーにのった"材料"が全員に行き渡るのを待ってから"作業着手OK"の指示が下る。ふむふむ、ブロッコリーで山を、ピーマンで虹をまず配置、主翼にはダイコン、尾翼はハムとカマボコ、4発エンジンは枝豆、ウィングレットと翼の日の丸はケチャップで描けと…。最後に、胴体=エビフライに好きな文字を書いて出来上がり。なるほど、これはいいアイデアだ。作業途中は機体を揺らすなと機長に言ってありますから、、、などと立花キャプテンの冗談も混じり、機内は和やかなムードになる。さりげなく添えられたデザートのクッキーも食べるには惜しいかも…。
JAL・JL8747便・グアム行き
食事も終わり、和気あいあいとした雰囲気のままJL8747便は飛行を続けていた。立花キャプテン以外にも運航に携わらないキャプテンたちが時折機内を回られており、気軽に会話を楽しんだり、サインをもらったり、あるいは記念に写真を撮ったりと、チャーター便ならではというか、同じ趣味を持った仲間で空間を共有しているのがなかなか印象的だった。まぁ、その趣味の飛行機の中にいるのだから、楽しくないはずがないのだが、、、そうこうしてるうちに、もう間もなくグアム国際空港に到着となる。高度を落とし、やがて左手にグアム島の島影が見えてきた。リゾートホテルと思しき大きな建物と青い海が気分を盛り上げてくれる。到着時もコックピットからの"実況中継"は続けられており、グアムはいわゆる計器飛行ではなく有視界飛行であること、2つあるランウェイのうちひとつは閉鎖中であること、ちょっとした小高い山が邪魔して南側からは斜め気味にアプローチしなければいけないこと、といった感じで興味は尽きない。地上の様子がよく見えてくると海岸沿いのリゾート地と離れた場所はどことなく離島の雰囲気が伝わってくる。さて、いよいよランディング、、、素人がこんなことを言うのも大変おこがましいが、チーフキャプテンの澤木機長による操縦はまさに教科書通りのソフトランディング。ツアーの第一幕である3時間強のフライトは静かに終わりを告げた。
ホテルニッコーグアム
初日、グアム到着後はホテルに直行することになっている。一旦、飛行機を降りたところで、みんなが写真を撮り出したためか、空港職員に笛を吹かれてイミグレへ向かうよう催促されてしまった。おかしな行動をする日本人の集団は、とても異様に見えたに違いない。その後、イミグレでちょっとしたアクシデントがあったのだが、まぁ、海外なんてそんなもの、大きな声でクレームつけてる人もいたが、その程度でカリカリしちゃぁいけない。どうやらESTA登録してない人が記入しなければならないカードを、JAL側で準備し忘れたのが原因らしい。もともとグアムはのんびりした客が多くイミグレに時間がかかる上に、このハプニングのおかげで予定より1時間ほどロスってしまったようだ。指紋を採られ、そして顔写真を撮られたが、特に尋問を受けることもなく入国。既にほっぽり出されたバゲージの山の中から自分の荷物をピックアップし、ちょっとだけホッとする。空港の建物の外に出てみるとそこは南国、ムッとした空気に触れてみて、数時間前までいた日本とはまったく気候が違うことを実感する。
ホテルニッコーグアム・オーシャンビュー
ここからホテルまではバスで移動するのだが、乗れと指示されたバスには既に空席がなかったりと、相変わらずバタバタしていた。ここで間違えたら大変なことになりそうなので、もう一度確認して別のバスに乗る。ようやくバスが動き出し空港を後にする。外の様子を見ながら、少しキョロキョロしてるうちに20分ほどでホテルへ到着、空港からそれ程離れてなかったのはよかったかもしれない。今回はJAL主催のツアーということもあり、用意されたホテルはJAL系のホテルニッコーグアム、全室オーシャンビューのこれぞリゾート!といったところだ。白い立派な建物に入ると、大きなエントランスの向こうにはプールが見える。フロントとは別のデスクへ行き名前を告げると、ルームキーなどは既に準備されていた。指定されたフロアは12階、中は広々とした部屋で、すかさずベランダに出てみると、夕日に照らされた大海原が広がっている。いやぁ~~本当にグアムへ来てしまった、、、とここで悦に入るヒマはなく、空港の一件で時間的余裕がほとんどなくなってしまい、とりあえずそのままトークイベントへ向かわなければならない。
ホテルニッコーグアム・トークイベント
ロビー階へ戻ると、そのままスッタフがお迎えする会場へと案内された。時間が押していたこともあり、慌しくイベントがスタート、冒頭でイミグレの件を詫びていたが、ここは気を取り直して、、、まず、JALグアム支店長の挨拶に始まり立花キャプテンジャンボに対する熱弁が続く。自分より詳しい人が多いのでは?などと照れながらも、熱の入った話に思わず聞き入ってしまった。時折、プレゼン途中にPVのような雰囲気でジャンボの写真を紹介していたのだが、バックの音楽がアラフォー世代にはぐっとくるものばかりで、それもまた心に響くものだった。続いて後半ではプロのカメラマンの伊藤久巳さんが担当、軍用機も民間機も追っかけるバリバリの方で、確か鉄道写真も撮られる方だったように記憶している。ちなみにその筋(?)の専門誌、月刊エアラインの最新号では、次世代ジャンボ=B747-8の特集記事を写真入で大々的に書かれており、いまボーイング社に潜入してます…なんて軽く流していたが、実はそれってものすごいことのような気がしてならなかった。だからといって偉ぶったところなど微塵も感じさせず「こんな機会は絶対にないです、素晴らしい写真を撮って日本に帰ることが皆さんの義務です。でも、あまりにもコンディションが良過ぎるので細かいこと気にせずシャッターを切るだけで、十分いい作品が撮れますよ!」なんてノリでとても面白かった。
ホテルニッコーグアム・トークイベント
さて、トークイベントに続いて食事となだれ込んだのだが、オープンテラスに準備されたビュッフェで海風を感じながらの立食パーティーは、この上ない開放感、、、アメリカらしいというか、ビン飲みのバドワイザー片手についついがっついてしまった。自由に歩きまわりながら、周囲の人たちと会話を楽しんだり、フランクな雰囲気の中、立花キャプテン伊藤さんの話も存分に聞けてとても楽しいひと時だった。と、まぁそんな感じで南国ムードたっぷりの中、浮かれ気分の初日のが過ぎていった。
ホテルニッコーグアム・立食パーティー
 2日目
ルート概略
【寄ったところ、乗ったもの】※詳細はこちら
グアム国際空港、JL8744、成田国際空港
明けて2日目、弾丸ツアーなので、自由時間はほとんど準備されておらず、朝食を済ませたら即出発のスケジュールが組まれている。そんな感じではあったが、速攻食っちまえば散策くらいできるだろうと思い、早速6時半に朝食会場へ向かうことにした。時差を考えると日本はまだ早朝5時半なのだが、リゾートホテルでの朝食というだけで自ずと贅沢な気分にもなってくるものだ。ホテルの建物を出たところにはウォータースライダー付きのプールがあり、ヤシの木に囲まれたBBQ会場の向こうはまるでプライベートビーチ、、、遠くはタモン湾の素晴らしい景色が広がり、振り返ると恋人岬が海にせり出しているのが見える。既に気温は30度近くで、当たり前だが、寒い真冬の日本と比べるのはヤボってもの…。このままに飛び込みたい気分ではあったが、波打ち際へ行って、少しだけ波と戯れる程度に留める。そんな感じで砂浜を歩いていると突然スコールに見舞われ、5分ほどして止んだあと、海には虹がかかっていた。ほんの数分の出来事だったが、まるで夢の中にいるようなひとコマだった。
ホテルニッコーグアム
8時にチェックアウトを済ませればもうホテルに戻ってくることはない。手元に最低限のものだけ残し、あとの荷物はここで預けたら日本へ直行、、、本当に"弾丸"だ。ここからはバス数台に分乗するのだが、警官立会いのもとパスポートと照合して帰りの搭乗券が渡される。麻薬探知犬も引き連れて随分と厳重だなとも思ったが、このまま車列をなしてタッチ&ゴー撮影場所へ向かう。移動は警察の車バイクが先導、なんと信号も無視して他の車の方が止められていた。すごいVIP待遇だが、空港の制限区域に直接入るのだから、テロとか考えればこれくらい当然かもしれない。そして会場へ到着、いよいよという感じだが、本当にランウェイの目の前で距離にして50メートルくらい、KEEP OUTと書かれたテープの他にさえぎるものは全くない。よくぞこんな場所に300人もの一般外国人を入れる許可が下りたものだ。JALも相当頑張ったようだが、グアム当局のはからいというか、どこか心意気に近いものを感じる。地元メディアも同行しており、それなりに話題にはなっているのかもしれない。
ホテルニッコーグアム
もう間もなく出発というときにザーッとスコールが降ってきたが、5~10分して晴れ間が戻ってきた。ジャンボの出発は9時半の予定だったが、天気次第では離陸を見合わせる可能性もある。というのも、グアム国際空港は有視界飛行のため、コンディションが悪ければタッチ&ゴーの回数が減らされることもあり得るらしい。「みなさん普段の行いがいいようですね、予定通りこれからジャンボは出発します!」立花キャプテンの言葉だったが、大丈夫、ここに超晴れ男がいますから…。(後日談:この日のグアム周辺は大きな雨雲に囲まれ、ちょうどポッカリと雲の切れ目にはまってたそうです。)さて、空模様を心配する必要もなくなり、一瞬ではあったが遠くに虹も顔をのぞかせ、より一層気分は盛り上がってくる。カメラマンの伊藤さんも頻繁に動きまわり、絶え間なく声を掛けてくれる。「前列は座る、立つ人は50センチ後ろ!」人と人とが重ならないように気を遣ってくれたおかげで、みんなが万全な体制で撮影に臨むことができそうだ。さぁ、本日の主役ジャンボジェットB747-400機体番号JA8088タキシングして目の前にやって来た。いやぁ~実に大きくて、そして文句なく格好いい滑走路の端に一旦静止フルスロットルでジェットエンジンにパワーが伝えられ、キィーーンという金属音に近い爆音を残して一気に加速、あっという間のエアボーンだった。
グアム国際空港・タッチ&ゴー撮影会場
撮影の流れとしては、離陸後空港の向こう側を周回してアプローチし、接地から離陸タッチ&ゴーを2本、進入してから再度上昇するゴーアラウンドを1本挟んで、タッチ&ゴーを1本。そして最後の着陸後にフルストップというものである。いま離陸したジャンボがちょうど正面の向こう側、タモン湾の上空あたりだろうか、低空で南下していくのが見える。やがて左旋回し、こちらめがけてアプローチ。さぁ、これからいよいよ1回目のタッチ&ゴーに入る。ギアダウンした状態でこちらに向かって近づいてくる。来るぞ、来るぞ、、、目の前ですっとタッチダウン、、、そして減速する間もなく再び上昇して行く。鳥肌ものの見事な光景を目前に、撮影しながらも多くの人が歓声を上げていた。
B747-400
前日のトークイベントで、撮影に臨むコツのようなものを伊藤さんから伝授されていたのだが、至ってシンプル…。まず最初の離陸時にフレームに収まるように大きさを確認、タッチ&ゴーの瞬間、時速200キロで左から右へ通り過ぎるジャンボに向けてパシャ、パシャ、パシャと流れるようにして体を正対させながら3回シャッターを切る、そうすれば、アプローチ接地離陸写真が撮れるはず、1回目のタッチ&ゴーは練習と割り切ってもチャンスは3回ある、所詮プロでも写真は回数勝負!とのこと。寝る前に3回、起きたら3回パシャ、パシャ、パシャとイメージトレーニングしておけばバッチリだよ!教えていただいた。もちろん上級者向けには選択するレンズやシャッタースピードなど技術的な指導があったが、機首にピントを合わせないと引き締まった作品にならない、という言葉が印象的だった。さて、再び緊張しながら進入してくるジャンボを待つ。遠くを飛んでるときは優雅に見えるものだが、フライト自体は通常と同じ動作をしなければならず、通常2時間くらいの間に確認することを2分程度で済ませなければならないので、コックピットの中は結構忙しないらしい。そして2回目、タッチダウンして、再び加速するとあっという間に飛び去っていった。文句なしですごい迫力だ。2回目も例の教えの通り進入から、パシャ、パシャ、パシャと3回やってみたところ、それなりの写真が撮れていた。
グアム国際空港・タッチ&ゴー撮影会場
タッチ&ゴーというのは、通常は訓練の一環として行われるものだが、もちろんこんな光景を目にするのは初めてのことである。続いて3回目は接地せずにローパスしてゴーアラウンドするのだが、どんな姿を見せてくれるのだろうか?1回目、2回目よりは多少心のゆとりも感じる。先程と同じようにして進入してきたあと、今度は目の前でエンジンにパワーが伝えられヒューーンという爆音を残して再上昇していく。上っていく角度と加速感は先程のタッチ&ゴーとはまた違った迫力があるものだ。青い空をバックに大空を舞うジャンボこの美しさはどう表現すればいいのか、適当な言葉が浮かばない。3回目タッチ&ゴーの合間に他社便が離陸していったが、白いボディーのジャンボの美しさとは比べ物にならない。そして見納めとなる3度目タッチ&ゴーを終え、ぐるっと1周して戻ってきたあとでランディングしリバース、最後の急制動でフルストップとなった。再び歓声が上がり、みな一様に拍手しながら心の中でジャンボにお礼を言ってたに違いない。「こんなすげぇージャンボ、私も今まで見たことがありません!!」なんて、伊藤さんも興奮気味にはしゃいでいたが、立花キャプテンが気持ちうるっと来てたように見えたのがとても印象的だった。ありがとう、ジャンボ!!心底、感謝、感謝だった。
B747-400・タッチ&ゴー
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいあとはもう帰国するだけ…。グアムまで来て本当に観光する間もなく空港へと戻ることになった。その昔、アメリカ横断ウルトラクイズで機内テストの結果を知らされるのはここグアムだったが、そんな古いことはどうでもいいか…(苦笑)バスの車窓は明らかに日本とは違いアメリカチック(?)なのだが、でも離島のイメージとしてはどこか共通していたようにも思う。30分もかからず空港に到着、既に拘束の身でもあるので、このままセキュリティチェックを受け出発を待つことになった。グアム国際空港は、どことなくのんびりしていて時間がかかるのと、最近の情勢からチェックが厳しく、早めの手続きが勧められているという。ちょうど出国便が続くタイミングだったこともあり意外と待たされることになった。セキュリティを通った後、イミグレがなかったのは気のせいじゃないとは思うのだが、ここで1時間ほどフリーな時間ができたので、少し空港内をウロウロしてみることにした。空港としての規模は小さい部類だろうか?南国のゆったりとしたムードが漂っていている。一応、ブランドものを扱う免税店や土産店もあったが、数も少なく全体的にこじんまりとした印象を受ける。かなりの強行スケジュールだったので買い物するヒマもなかったが、一応お土産くらいは買っておくことにする。それでもまだ余裕があったので時間つぶしにフードコードへ向かい、折角なのでバーガーキングへ立ち寄ってみることにした。おっと、ここはアメリカ、Sサイズでも日本人には十分なボリュームかなと…(苦笑)
B747-400・タッチ&ゴー
慌しいスケジュールも本当にこれで最後、出発前にエプロンサイドに降りて間近でジャンボを撮影する機会が与えられている。バスの号車毎でさらに半々に班分けされ、順番に撮影に向かう。それぞれ持ち時間は10分ほどだったが、実際の搭乗口から制限区域内へ立ち入ることが許可されている。それにしても、こうしてあらためて近くで見るその大きさに圧倒されるものだ。集合写真を撮った後、残された時間で思い思いに撮影グアムでの最後のひとときを過ごすこととなった。振り返ればイベント満載の2日間だったが、出発時刻が近づき、これでグアムに別れを告げなければならない。バスにアテンドしてくれた地元チャモロ系のスタッフにお礼を言ってゲートに向かう。どこからかの差し入れだろうか、さよならメッセージ入りのケーキがあったので、伊藤さんに入ってもらい記念撮影をしておく。(相変わらずいいノリで…)搭乗口に掲げられたB747の写真には客室乗務員の方々のメッセージが書き込まれていたのも印象的だった。帰りの便ももちろんこのツアーの主役B747-400なのだが、最後に乗り込むところでミスグアムのお見送りがあり、貝殻のレイを受け取ることとなった。オヤジ臭い言い方をするならば、小顔のスレンダー美人だったが、あらためてこのツアーに対する地元の思いのようなものを感じる。本当にこれはありがたいことだ。
B747-400・タッチ&ゴー
ツアーに参加する前は、その手の趣味の気合の入った方々ばかりかと思ったが、意外にも家族連れや若い女性の集団なんかもいて、素人でも十分に楽しめる内容だった。ドアクローズ後、プッシュバック、、、帰りの座席も行きと同じ席が指定されており着席してふと窓の外を見ると、昨日のトークイベントで使われてた横断幕JALのグアム・スタッフが掲げて手を振ってるのが見えた。いま、こうして乗ってるシップJA8088機もJALとしては最後のお勤め…。(後日談:帰国後、あとでこのレジ番号を調べてみたのですが、モデルプレーンのベースに使われたり、カレンダーやパンフレットにも頻繁に登場する「JALの顔」であることが分かりました。運航最終日の3/1に成田のハンガーで行われた式典でも確かに石井竜也さんのバックにこの機材が写っていました。国際線の特別なチャーターにも使用されることも少なくなかったとか…。)慌しくも楽しかったスケジュールをすべてこなし、帰国の途へつく。
B747-400・タッチ&ゴー
でも、本当にすごかったのは、帰路にグアムを飛び立った直後、最後の最後に超ド級のビッグサプライズがプレゼントとして待っていた。空港離陸後、あれ、なんでもう上昇止めちゃうの?と不思議に感じてたところ、立花キャプテンのアナウンスで「これからみなさんにも先程のゴーアラウンドを体験していただきます…」との告知が!!一瞬、耳を疑ったが機内は大喝采、うゎぁ~~という歓声とともに拍手が上がった。空港の建物を左後方にレフトターン、高度を低く保ったままタモン湾の方向へ機首を向けると昨晩泊まったホテルニッコーグアムがすぐ真下に見える。白く波立つ青い海の上をジャンボジェット遊覧飛行グアム島の様子が手に取るように分かる。ここで一旦、空港と交信しアプローチへ…。滑走路手前の小さな山を避けるように小刻みにレフトターンを繰り返し、少し斜め気味に滑走路へと向かう。アプローチインサイト、、、前面スクリーンは正面に滑走路を捉えられている。徐々に高度を落とし、先程撮影で入った地点の近くで急上昇、4機のエンジンは再びフルパワーヒュ-ンというエンジン音を受けて、まさにドッカーンというGが全身に伝わる。1回目の離陸とは違う加速で一気に高度を上げていった。今度はあっという間に空港の建物が小さくなっていったが、機内は再び大きな拍手に包まれる。低い雲を抜けアンダーセン基地がちらっと見えたあとはもう洋上を行くばかりとなった。
B747-400・ゴーアラウンド
去年、下地島で行われたクラシック・ジャンボ引退記念ツアーのときも予告なしのサプライズ・ゴーアラウンドがあったようだが、まさかグアムでもやってくれるとはキャプテンの粋なはからいにはあらためて脱帽だった。少し高度を下げてローパスするだけかと思いきや、燃料満載の状態で本当に着陸するかのように降下し、そして一気にゴーアラウンドするなんて、澤木チーフキャプテンの凄みを見せ付けてもらったというか、思わずこちらも興奮してしまった。(後日談:実は真崎コーパイの発案だったといううわさも…。)このあと帰路の途中、タッチ&ゴーを担当した岩崎キャプテンと話ができたのだが、当初は「ここがゴルフコースです…」なんて感じで、低空での遊覧飛行みたいなことを考えてたらしい。ところが、ダメ元でゴーアラウンドをリクエストしたらOKが出てしまい本当に急遽決まったとのこと。日本じゃ100%あり得ないですよ!なんてびっくりされていたが、近くに居合わせた人たちとしばらくゴーアラ談義に花が咲いてしまった。ついつい自分も、羽田でB777のファーストクラスでゴーアラしたことがあるなんて自慢話を披露してしまったが、みなさん様々な体験を重ねているようで、岩崎キャプテンも面白がって話に加わっていた。「危険回避でもないのに、お客さん乗せたままこんな大胆なことしたの初めてだよ、それにしてもゴーアラして喜ぶ人がこんなにいるなんて」と笑ってらっしゃていたのが印象的だった。思い起こすと、ツアー申し込みのとき3日間待ったあと、キャンセル待ちで左側の座席が確保できたことを考えると、我ながら毎度の引きの強さにはあらためて感謝するしかなかった。(苦笑)
B747-400・ゴーアラウンド
成田グアムの所要時間はおよそ3時間半、帰りもそんなに時間は感じなかった。やや雲が多かったものの、概ね飛行は順調、途中硫黄島の島影が見えたのも印象的だった。帰りの機内食グアムで積み込んだものなので行きのように創作メニューではなかったが、手書きでB747と書かれたチョコレートケーキはいいアクセントになっていたように思う。ところで、このツアーの往復に使われたチャーター便は行きがJL8747、帰りはJL8744と付けられているのだが、頭の8はボーイング社のBを捩って”8”、後ろ3桁の数字は747=ボーイング747を、744はダッシュ400型を示す略号"744"からとっていることは簡単に想像できる。このツアーに参加してる人にとっては当たり前すぎて説明すらなかったが、チーフキャプテンの直筆サイン入りの搭乗証明書や両便の便名の入った搭乗券はとてもいい記念になったように思う。他にもちょっとした記念品があり、また機内でも記念グッズの販売もされていた。
B747-400・JL8744便
さて、別れというものは寂しいもの…。青ヶ島八丈島と過ぎると、徐々に高度が下げられ、ウロウロする人で賑やかだった機内もいつの間にか静かになり、揺れの予告が入ったところでほとんどの人が着席していた。操縦席からは真崎コーパイに続いて澤木キャプテンの挨拶が続く。「厳しい訓練を通じて一人前のパイロットに育ててくれたのも、このジャンボあってのことでした、、、」なんて言葉を聞いてるうちに、こちらもグッとこみ上げてくるものを感じた。最後は感極まって涙するCAさんも多数いらっしゃったが、情熱をもって仕事に向かう姿をあらためて目のあたりにすると羨ましくもあり、また逆に自分はどうかと考えてしまった。ベルト着用サインが点灯されると、これから成田へ向け最終降下となる。本当に最後まで普通とは違った演出が続き、立花キャプテンからは専門用語を交えて、こと細かに逐一状況説明が入る。ここでフラップを10から20に変更しさらに減速しますとか、ややショートカット気味に旋回するよう管制から指示がありましたとか、雲を避けるように少し左へ振ってます、などといった具合で、それに聞き入る自分もすっかりマニアと化してるのだが…。そしてフライトの締めくくり、成田空港のB滑走路に北側から入りR/W 16Lへ着陸、、、まさにこれがこのツアーのFinal Touch Downとなった。自然と機内は大きな拍手に包まれ、ここに居合わせた人たちみんなが、ひとつのものを共有してことを実感する瞬間でもあった。
ミス・グアム
ところで、経営破たんしたJALはいま再生に向けて正念場を迎えている。そのためのリストラが急ピッチで進められているわけだが、皮肉にもその象徴であるジャンボジェットB747が退役、今回はそれを惜しむツアーだったわけで、時代の象徴がまたひとつ走り去ったと言っても過言ではない。昨年末は、納得行かない気持ちを引きずったまま去られた方も多くいらっしゃると聞いている。自分たちの力の及ばない、大きなうねりに翻弄され、結果こうなったと腐る気持ちも分からないでもない。ここのところ、JALだけでなく日本中がどこか閉塞感に苛まれているが、今回お世話になったスタッフの方々のように、現場の強い思いがあればこそ、きっと復活のときは来るものと信じたいものだ。何かと世間の風当たりが強いのも仕方ないこととは思うけど、それでも諦めることなく自分を信じ、そして仲間を信じ頑張って欲しいものだ。他人が軽々しく物を言うのも失礼ではあるが、小さくエールを送ってここらでこの駄文を締めくくることにする。
JL8744便・ゴーアラウンド