■旅日誌
[2007/2] 大島、再び
(記:2007/3/1 改:2009/3/14)
(記:2007/3/1 改:2009/3/14)
去年、八丈島へ寄ったあと、大島に立ち寄る予定が荒天のため上陸できず、あらためて今回訪問することにしました。行きは空路で帰りにはジェット船を利用してのリベンジです。
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日帰り
1月末に現実逃避を目的に沖縄へ渡り粟国島などまわってきたが、根本解決には至らず仕事の混迷は増すばかり、ヘルプで入っていたとはえ生活パターンもより厳しいものになっていた。十分な成果が出せないままこの状態を続けていくのもまずいだろうということになり、大きく舵が切られることとなった。失うものは相当大きかったが、それこそ人の命にでも関わるようなことがあってからでは遅いので、ギリギリやむなしとはいえ正しい判断だったと思う。そんなタイミングでもあったのでこの週末は1日中寝て過ごして体を休めることに専念しようと考えてみたものの、精神的リフレッシュも必要と判断し、どこでもいいからショートトリップすることにした。
前振りの通り、去年の12月に八丈島日帰りの後半で大島に立寄る予定だった。しかし、八丈島から大島へ移動する飛行機が強風のため大島空港でゴーアラウンドを2回繰り返し、結局着陸できずにそのまま羽田へダイバートと、それはそれで貴重な体験をすることになってしまった。ということで、今回はそのリベンジである。今回もまた急に思い立ったことなので予定を組む余裕などほとんどなかったが、時刻表をみると曜日によってダッシュエイト-300が就航しているようなので、そいつを狙ってみることにした。帰りもちょっと趣向を変えてジェット船を利用してみたい。早速インターネットで調べてみると、どちらもわずかながら残席があったので、まずは枠を確保しておく。滞在時間も前回予定していた時間より長くできそうだったのでレンタカーを手配して島をまわることを考えたい。
意外とすんなり準備ができてしまったが、あとは体がいうことを利くかどうかである。前にも同じような経験があったが、なぜか土曜ではなく日曜に日程を組んでいたことが結果的に幸いする。この辺は自分でもはっきりとは説明ができないのだが、急遽土曜日に別件で出勤の必要に駆られ、もし土曜で予約を入れていたらすべておじゃんになるところだった。そればかりではない。暖冬にしては珍しく一時的に冬型の気圧配置となり、発達して東へ抜けた低気圧の影響で季節風が強まり、土曜は海がしけてジェット船は欠航することになってしまった。日曜も強風は残るようだったが、何とか出帆してもらいたい。多少不安を残しながら早朝羽田へ向かうことにした。
前回同様、朝早くラウンジに寄ってひと息入れる。大島空港は天候調査中、今日も条件付きでの出発とのこと。不安はあるがあまり気にしても仕方ない。今回の大島行きの機材はエアーニッポンネットワークのダッシュエイト-300、恐らく羽田を発つ定期旅客路線としては唯一のプロペラ機だと思う。発着枠の関係から小型機の羽田乗り入れは抑制されているというが、Q300はギリギリOKということだろうか。(後日談:その後、三宅島空港が再開したときにQ300がそちらにもまわるようになりましたが、残念ながら大島便の運用からは外れてしまったようです。)バスで駐機場所へ向かい、小さな階段を登って搭乗する。風が強く機体が小刻みに揺れているのが分かる。直前の予約だったのでWebでの事前チェックインができず当日窓口で搭乗手続きを済ませると、前寄り窓側の席があてがわれた。定員50人ほどの小さな機体に乗り込み出発を待っていると、あたかも儀式のようにプロペラ機独特の起動手順で出発準備が行わていった。羽田でこの状況というのも少々不思議な気分だ。
ジェット機に混じってQ300は離陸のため滑走路へと進んでいく。長大な滑走路もこの小型機には不釣合いのようで、もてあそぶようにしてテイクオフする。風に流されながらも、プロペラ機独特のふわんふわんとした感覚で上昇していく。大島空港へは直線距離で約100キロほど、飛行予定時間も25分とショートフライトである。東京湾を抜け、相模湾へ出たかと思うとすぐに着陸態勢へと移行していく。どうしても前回のことを思い出してしまうが、今日は大島空港を左手にみてUターンして南側からのアプローチのようである。風にあおられ、かなりフラフラしながらも無事大島空港へ着陸することができた。
空港でレンタカーを受け取り、早速三原山に挑むことにしよう。三原山といえば、いまから十数年前、大噴火を起こして全島非難という出来事があったことはいまさらここで語るまでもないが、今ではそれもウソのように穏やかである。伊豆半島を背に見ながら登山道路を駆けあがり、山頂口に車を置いて火口付近へ向かってみることにした。閑散とした中、ぱぁっと開けた向こうに小高い丘が見えてきた。距離にして2~3キロはあるだろうか、ここからは歩いていくしかない。風が強いのが少々気になるが、折角なので行けるところまで行ってみようと思う。真冬のこの時期、こんな行動をする変わり者もそうはいないだろうと思ったが、意外と人の姿もある。溶岩の跡もむき出しのまま、荒涼とした風景というのも、今まで見たことのない部類に入る。後ろを振り返れば、伊豆半島とその向こうの富士山が視界に入ってくる。ここまでやって来たかいがあったなと、素直に思った。
いよいよ火口も近づいたところで、最後に急坂が待っていた。時間にして45分くらい歩いてきただろうか、時折吹き飛ばされそうなくらいの強風に見舞われながらもどうにか山頂へとやってくることができた。さらに火口近くまで行くことができるので、最後にもうひと踏ん張りして近づいてみる。風も強くなるばかりで、舞い上がった砂が顔にあたり痛い。火口に一番近いところまできたものの風はほとんど止むことがなく、おちおちと留まることもできないまますぐに引き返すことなってしまった。はっきり言って、大自然のすごさに対して自分の無力さを思い知らされるだけだった。お鉢めぐりと称して火口付近をぐるっと一周することもできるのだが、さすがに今日は遠慮しておくことにした。
いやぁ、景色といい、風の迫力といい、圧倒されるばかりであった。屋根のあるところでクールダウンして、あらためてここから島を一周してみようと思う。途中割れ目火口に寄って、ふともまで下りてきてみるとマラソンのための規制は解かれており、とりあえず元町港付近へ向かってみることにする。元町港は大島の表玄関といわれているが、冬のこの時期は季節風の影響を受けるので岡田港が主に使用される。柔軟に対応できる仕組みになっているようだ。今日も朝早かったので、少し早いがお昼にすることにした。何気なく入ったお店で地のもののお刺身と焼き魚をいただきながらのお昼となった。こういう食事で幸せを感じるというのも、人間単純なものである。
午後も大島一周道路に沿ってぐるっとまわってみることにした。途中で地層断面や遠く利島を見ながら波浮港へとやってきた。風光明媚な場所であるが、時期が時期だけに観光客の姿はみられずとてもひっそりとしていた。引続き残り時間を気にしながら筆島だけはみておきたかったので早速向かうことにした。外洋に面したその場所は強風が吹きつけ、荒々しく高波が絶えず叩きつけており、圧倒されるばかりであった。さらにそこから北上して大島公園の近くを経由していく。ちょうど椿が見ごろだということだったが、あまり興味はないのでここは素通りすることにした。その後岡田港を通過して空港近くでガソリンを満タンにする。日曜営業しているスタンドはここしかないと聞かされていたので、そこから引き返す感じで岡田港へと向かうことになった。今日も風と高波の影響で欠航しないか心配だったが、とりあえず予定通り出帆するとのことだった。
岡田港で車を返却し、ジェット船の出発を待つ。久里浜を経由する便の10分後の直行便を予約してあったので、一本見送ってから乗り込むことにした。ジェット船は、最近いろいろなところでみられる高速船と同じような構造で、浮上した状態で最高時速80キロをたたき出す。多少の波ならそれほど揺れも感じない、などといいとこ尽くめのように思われるが、クジラなどの海洋生物との衝突事故は避けきれずニュースになることもある。大島から竹芝桟橋までの所要時間は2時間を切っており、船=時間がかかるという構図は成り立たない。まったく便利なものである。