■旅日誌
[2004/11] 箱根の山は天下の険
(記:2004/11/14 改:2005/11/26)
(記:2004/11/14 改:2005/11/26)
日本人は季節のうつろいに敏感な民族だと言われてますが、多分、自分もそうなのでしょう。そんな日本の四季の中でも春と秋は気候的にも過ごしやすく、旅日誌を読み返すと紅葉の時期には必ずどこかへお出掛けしています。どうも今年は無理そうでしたが、どうにか1日とって近場へ行くことを考えてみました。ということで、今回のターゲットは箱根です。天気はさほど悪くなかったのですが、全般的にやや霞がかった感じで、肝心の紅葉もやや早目といったところでした。
※下線部をクリックすると写真が表示されます
※下線部をクリックすると写真が表示されます
日帰り
乗りつぶしも終盤となったあたりから、なぜかケーブルカーという存在が気になり出して、前回の四国遠征もそのあらわれだったのかもしれない。ちょっと調べてみれば、近場にも未踏のケーブルカーがいくつもあり、何となく今回は箱根へ行ってみることにした。前日はいつもの土曜と違って張り切って早朝から出勤してしまったため、睡眠不足は解消していなかった。仕事とは理不尽なもので、早く始めたからといって早く帰れるものでもない。だが、一度心に決めたことなので、日曜の朝は思い切って行動を起こすことにした。そんな感じで久しぶりに車で遠出することにする。東名に乗ってすぐに小田原厚木道路へ入る。もう何度目になるか分からないが「このハイウェイカードは使えない」と窓口で突っ返されてしまった。1回目はホログラムがないカードは使えなくなったといって交換させられ、2回目は高額の残高を残した再発行券は使えないとのことで何枚かに分割することになった。今回は3回目でこの図柄の再発行券は機械が受け付けないことになった、といって別の図柄への交換が必要となった。偽造券対策だというのは建前かどうか分からないが、お役所仕事よろしく、ファミリー企業を含め一族ボロ儲けのクセしてユーザにはまったく理不尽なことばかり強いる。さすがにここまでくると、呆れて文句をつける気にもならない。
比較的順調にきた小田原厚木道路も箱根口の出口で渋滞にはまり、思いのほか時間をロスしてしまった。箱根といえば全国的にも有名なところだし都心からそう遠くもないので、土日ともなれば多くの人が集まってくる。また、険しい地形からも抜け道が少ないので、ある程度の渋滞は覚悟しなければならない。有料道路は利用せずにそのまま国道1号沿いに進む。そう、多分これは箱根駅伝のルートだと思う。宮ノ下で強羅方面と分岐し、元箱根方面に向かう車の数はぐっと減る。箱根新道を使えばストレートに芦ノ湖まで出られるのでこの道を走る車の数は当然少ない。この寂れた道からさらに脇に入ってしばらくいかなければ駒ケ岳ケーブルの登り口駅にたどりつくことができない。おまけに何年か前の土砂災害で道路が流出したところがあって、湯の花温泉を経由していく道は途絶えてしまっている。通行禁止のバリケードが何だか物々しい。
ケーブルの登り口駅は噂に聞くように寂しいところだった。みな正直なもので、「うわぁ何か寂しいね~」などいう声が聞こえてくる。実際、駒ケ岳山頂へはケーブルカーでなく、箱根園からロープウェーを利用して登るのがメインルートのようだ。ただ、ロープウェーがメンテに入った期間のバックアップだという人もいるが、これではいつ廃止になってもおかしくない?と心配になってくる。(後日談:残念なことに、このケーブルカーもついに廃止となってしまいました。)そんなこんなで、ケーブルカーでの往復ではなくロープウェーも利用して"駒ケ岳縦走"ができないか考えてみた。だがそうすると、当たり前だが麓の登り口はロープウェーとケーブルカーであっちとこっちの位置(?)になるので、その間の移動手段がなければどうにもならない。ところが、ケーブルカーの登り口駅はこんな辺鄙なところにあるし、バスも通行止めの影響で極端に本数が少なくなっていてなかなか難しそうだ。一応、事前に時刻を調べてみたところ、わずか2、3本ではあるが午前中の比較的早い時間に小田原・湯元→元箱根方面のバスがケーブルの登り口駅に寄ってくれるので、そいつを利用することにした。
箱根口の渋滞の影響が大きく響いて、ケーブルカーの登り口駅についたときはバスの通過予定時刻から5分ほど過ぎてしまっていた。ただ、バスもこのルートを通ってくるので、相当遅れて来るだろうことは容易に想像がつく。土日・祝日のバスは遅れます、とあちこちに張り紙がしてあったが、実際バスがやって来たのは定刻から20分以上経ってからのことだった。路線バスからはフリーパスを手にした人が何人か降りてきたが、もちろんこんなところから乗り込むへそ曲がりは自分の他には誰もいない。(笑) だらだら続く急な坂道をエンジンブレーキを強めに効かせてゆっくりとバスは下りてきた。最後、国道1号に戻る交差点のところで床下をこすったようで妙に嫌な音がした。バスは元箱根を経由して終点の箱根関所跡へと向かう。元箱根からは箱根神社を経由すれば箱根園まで歩いて行けそうな距離だったが、今日は関所跡から遊覧船に乗ってみることにした。関所跡にある資料館は改築中ということもあり何だかバタバタしていて、遠い記憶の中にあった印象とは随分と違っていた。人間の記憶なんていい加減なものである。ということで今日はパスにする。実は芦ノ湖の遊覧船に乗った記憶がなく(もしかしたらその記憶も怪しい?)海賊船とそうでないやつと2社で運行していることも初めて知った。船の後ろがバタバタ回る海賊船では箱根園へは行けない。双頭船の大型遊覧船は船室も広く、乗ってみた感じの安定性も抜群である。今日は天気もいいので、3Fデッキで外の空気を楽しんでる人も少なくない。見た感じ海賊船の方はというと、外に出ている人の方が多いようだ。湖上から眺める遠くの景色は何とも清々しく、箱根神社のすぐ横を通ってわずか20分ほどの船旅は終わることになった。
箱根園はいかにもといった観光地でちょっと俗っぽい感じがした。船の発着場所は一応"港"ということではあるが、遊覧船がスワンボートに囲まれている。無難そうなところで昼食をとり、早速ロープウェー乗り場へ向かうことにする。既にたくさんの人が列を作っていた。遊覧船の中にもいたが、こちらでも記念写真を撮って売りつける商売をやっていた。自分は他人が撮ってる写真の背景に写り込むのもイヤなくらい大の写真嫌いなので、ムッとしてその場を通り過ぎることにする。運良く定員オーバーになる直前で次の便に乗ることができた。ロープウェーは1度に50人程運べるらしい。ゴンドラは結構な勢いで登っていき、みるみる麓の建物が小さくなっていく。それもそのはず高低差600~700メートルをわずか7分で登ってしまうからだ。天気は悪くないが、霞がかかったような状態で遠くの景色はややぼんやりとして見えた。きれいに晴れ渡ればきっと富士山も望めただろうが、ちょっと残念である。
駒ケ岳山頂駅は不気味な"でかさ"を感じさせる建物だった。頂上の標高は1300メートルを優に越えてるので、そこらに生えてる植物も背が低く、高いところにいることが実感できる。あらためて下界に目をやると芦ノ湖までもが箱庭のように思えてくる。まさにこの場所でしか味わえない絶景である。ピクニック気分で大騒ぎしている迷惑な一団の横を通り過ぎ、箱根元宮をお参りしておく。ロープウェーもケーブルカーもカラーリングから分かるように、運営母体は西武系である。もっというと、箱根園も同様にプリンスホテルが全体を仕切っている。駒ケ岳頂上でひと際異彩を放った不気味な廃墟にはスノーランドと看板が出たままで、これまた西武が手を出したものだが、残念ながら経営に失敗した施設である。その先のケーブル駅も人がいなければ廃墟に見間違えそうなくらい不気味で老朽化していた。建物の周囲もほころびが激しく危険なため近寄れないようにロープが張られていた。やっぱり廃止にならないのが不思議なくらいだ。ロープウェーからケーブルカーへの通しの切符というのがあるので今日はそいつを利用したが、売り場の窓口でその先の足はどうするか質問されてしまった。同じようにケーブルカーの乗り場でも駅員から下りてからの足は大丈夫?と心配してもらう。ほんのわずかばかりの人を乗せケーブルカーは緩やかなカーブを通って徐々に高度を下げてきた。だんだん下の様子が分かってくると、自分の車がそこに停まっているのが判別できるようになった。ぐるっとめぐって麓の駅に戻ってきたが、閑散とした中の静けさは相変わらずだった。
とりあえずこれで箱根はあとにして、折角なのでここから十国峠へ向かうことにする。先程のバスルートをそのままたどって芦ノ湖の脇を通り抜ける。午前中よりも車の量が増えており、道の流れは滞っていた。箱根峠のちょっと先を左折したあとは九十九折の道路が続き、尾根伝いを這っていく景色はまるで高原道路のようだ。順調に30分程走って十国峠の登り口へ到着した。場所柄ライダー集団や団体客を乗せた大型観光バスが多く、結構な賑わいだ。ここ十国峠にもケーブルカーがあるので、今日の第二ラウンドとする。時刻表の上には「本日は10分おきに運行」という紙が張られていた。団体の呼び出しもあるので、それなりの人がケーブルを利用しているようだ。ぼやぼやしてると無駄に時間が過ぎてしまうので、早速頂上を往復することにする。ケーブルカーとしてはあまり距離はなく、3分程で頂上へたどりつくことができる。お決まりではあるが、十国峠というのは昔の呼び方でいう十の国が眺められるところから来ている。言い換えると、それだけ眺望が抜群ということだ。聞くところによると富士山はもちろん、駿河湾や房総半島まで遠く見渡せるというのだが、残念ながら今日は霞がかかり富士山の雄姿を望むことはできなかった。とはいうものの、全身で受ける開放感は何ともいえず、しばらく頂上付近を散策することにした。澄み切った感じでの遠景を満喫することはできなかったが、代わり山頂駅の2Fでやっていた風景写真のパネル展を鑑賞して戻ることにする。
観光地の宿命か箱根園での食事も値段のわりに満足感がなかったのは仕方ないとして、何となく新ソバという看板にひかれて、ざるの1枚でもいただいておくことにした。観光地モードなのでそんなに期待はしていなかったが、まぁまぁといった感じだろうか。夕暮れがやってくる時間は確実に早くなってきているので、今日はここらで切り上げることにした。本格的な紅葉の時期にはまだちょっと早いようだったが、日帰りとしては適当に楽しむことができたのではないだろうか。行きと同じ道だとちょっとつまらないので、もう少し南下して熱海方面へ下ってみることにする。ただこの時間だと、その先の真鶴道路や西湘バイパスはきっと渋滞に違いない。少々気が重いがまぁ諦めるしかない。